前回の記事では,どのようなときに
- 直線と円がちょうど2つ共有点をもつ
- 直線と円がちょうど1つ共有点をもつ(接する)
- 直線と円が共有点をもたない
となるのかについて説明しました.
2つめのパターンの「直線と円がちょうど1つの共有点をもつ(接する)場合」について,実は$xy$平面において
- 円$C$の方程式
- 円周上の点Pの座標
が分かれば,円$C$の点Pでの接線の方程式が求められます.
この記事では,この接線の方程式の求め方を説明します.
一連の記事はこちら
【図形と方程式1|座標の超基本「内分点」と「外分点」の計算】
【図形と方程式2|「方程式が表すグラフ」ってそもそも何?】
【図形と方程式3|直線の「傾き」の考え方を理解しよう!】
【図形と方程式4|一般の直線の方程式と[平行・垂直条件]】
【図形と方程式5|[2点間の距離]と[点と直線の距離]】
【図形と方程式6|2種類の[円の方程式]をマスターしよう】
【図形と方程式7|[円と直線の共有点]の2つの考え方とコツ】
【図形と方程式8|円の接線の方程式は一発で求めよう!】←今の記事
【図形と方程式9|2円の共有点を通る円と直線はどう求める?】
原点中心の円に接する直線
まずは原点中心,半径$r$の円$x^2+y^2=r^2$に接する直線の方程式は次で求められます.
[原点中心の円の接線] 原点O中心,半径$r$の円$C:x^2+y^2=r^2$ $(r>0)$に点$\mrm{P}(\alpha,\beta)$で接する直線$\ell$の方程式は
である.
形としては,円の方程式$x^2+y^2=r^2$の
- $x$を1つだけ$\alpha$に変えて
- $y$を1つだけ$\beta$に変えたもの
になっていますね.
具体例
公式の導出の前に,具体例を見てみましょう.
次の円$C$と円$C$上の点Pについて,点Pでの円$C$の接線の方程式を求めよ.
- $C:x^2+y^2=4$,$\mrm{P}(1,\sqrt{3})$
- $C:x^2+y^2=9$,$\mrm{P}(0,3)$
- $C:x^2+y^2=2$,$\mrm{P}(-\sqrt{2},0)$
(1) 求める接線の方程式は
である.
(2) 求める接線の方程式は
である.
(3) 求める接線の方程式は
である.
$xy$平面上の円$C$の方程式と円$C$上の点Pの座標が与えられたとき,点Pでの円$C$の方程式は公式より直ちに求まる.
公式の導出
それでは公式を証明しましょう.
まずは直線OPの方程式を求めます.
[1] $\alpha=0$のとき
直線OPは
- 原点$\mrm{O}(0,0)$を通り
- 傾きは$\dfrac{\beta}{\alpha}$なので
直線OPの方程式$y=\dfrac{\beta}{\alpha}x$ですから,分母を払って整理すると,
となります.
[2] $\alpha=0$のとき
点Pは$y$軸上に存在するので,直線OPの方程式は$x=0$と表せます.
また,点Aが円$C$上にあることから$\alpha$と$\beta$は同時に0にはならないから$\beta\neq0$なので,
となります.よって,[1]と同じく直線OPの方程式は$\beta x-\alpha y=0$となることが分かりました.
さて,
- 直線$\ell$は点$\mrm{P}(\alpha,\beta)$を通り,
- 直線$\ell$は点Pで円$C$に接しているので,直線$\ell$と直線OPは垂直
となるので,直線OPの方程式から直線$\ell$の方程式も得られますね.
直線$\ell$の方程式は点$\mrm{P}(\alpha,\beta)$を通り,直線$\mrm{OP}:\beta x-\alpha y=0$に垂直でしたから,直線$\ell$の方程式は
となります.点$\mrm{A}(\alpha,\beta)$が円$C:x^2+y^2=r^2$上の点であることから$\alpha^2+\beta^2=r^2$であることに注意すると,この直線$\ell$の方程式は
となり,公式が導出できましたね.
なお,「平行/垂直な直線」と「通る点」から直線の方程式を求める方法については,以下の記事を参照してください.
例えば,「直線$3x+5y=2$に平行で点$(1,2)$を通る直線の方程式」や「直線$-3x+6y=5$に垂直で点$(3,4)$を通る直線の方程式」をすぐに求められますか?「ある直線に平行/垂直で,ある点を通る直線の方程式」は$y=$の形に変形しなくても,数秒で求められる方法があります.
一般の中心の円に接する直線
次に,原点中心とは限らない円の場合の接線の方程式を考えます.
[一般の円の接線] 点$(p,q)$中心,半径$r$の円$C:(x-p)^2+(y-q)^2=r^2$に点$\mrm{P}(\alpha,\beta)$で接する直線$\ell$の方程式は次で得られる.
先ほどの原点中心の円の場合と同じく,この場合にも円の方程式$(x-x_1)^2+(y-y_1)^2=r^2$の
- $x$を1つだけ$\alpha$に変えて
- $y$を1つだけ$\beta$に変えたもの
になっています.
導出は先ほどの原点中心の場合の結果で,$xy$平面上の平行移動を考えれば以下のように得られます.
円$(x-p)^2+(y-q)^2=r^2$は点$(p,q)$中心なので,
- $x$軸方向に$-p$
- $y$軸方向に$-q$
平行移動させると,原点中心の円$C’:x^2+y^2=r^2$となります.
同じ平行移動で点Pは$\mrm{P}'(\alpha-p,\beta-q)$に移動し,円$C’$の点P’での接線$\ell’$の方程式は[原点中心の円の接線]の公式より
となります.この接線$\ell’$を先ほどの平行移動と逆に動かせば,求めたかった接線$\ell$になるので,接線$\ell$の方程式は
となり,公式が導出できました.
【次の記事:図形と方程式9|2円の共有点を通る円と直線はどう求める?】
2点A, Bで交わる2つの円について,この2交点A, Bを通る円や直線がすぐに求められることは実は教科書レベルです.次の記事では,2円の交点を通る円や直線の求め方を説明します.