2点A, Bで交わる円$C_1$の方程式と円$C_2$の方程式が与えられたときに,2共有点A, Bを通る円や直線の方程式はどのように求められるでしょうか?
素朴に考えるなら,円$C_1$の方程式と円$C_2$の方程式を連立させて解くことでA, Bの座標が得られ,直線ABはここから求めることができます.
しかし,円の方程式は2次なので,計算は煩雑になるのでこの直接的なアプローチはあまり上手くありませんし,円の方程式を求めるのはさらに面倒そうです.
実は2点A, Bを通る直線や円までもが,一瞬で求められてしまう公式があります.
この公式は非常に汎用性が高いものなので,是非とも成り立つ理由から理解して身に付けてください.
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2つの円の共有点を通る円または直線
イメージを掴んでから,公式の説明に移ります.
イメージ
2つの共有点A, Bをもつ円$C_1$,円$C_2$を考えます.
このとき,2交点A, Bを通る直線は1本に決まりますね.
一方で,2交点A, Bを通る円は無数にありますね.
このような2円の2交点を通る直線と円の方程式を求めたいというのが,この記事のテーマです.
公式
2円の2交点を通る円または直線の方程式を求める公式は以下の通りです.
2つの共有点A, Bをもつ円$C_1$,円$C_2$の方程式をそれぞれ$f(x,y)=0$, $g(x,y)=0$とする.このとき,$x$と$y$の方程式
のグラフは2共有点A, Bを通る円または直線である.ただし,$k$, $\ell$は定数である.
この公式をパッと読んでもいまいちピンとこない人も多いと思いますので,具体例を考えましょう.
たとえば,共有点を2つもつ2円
- $C_1:x^2+y^2=1$
- $C_2:(x-3)^2+(y+4)^2=25$
の場合,$f(x,y)$と$g(x,y)$は
- $f(x,y)=x^2+y^2-1$
- $g(x,y)=(x-3)^2+(y+4)^2-25$
であり,これら2円$C_1$, $C_2$の2交点を通る円または直線の方程式はまとめて
と表せるという公式ですね.
この$k$と$\ell$に値を入れるごとに,円または直線が決まるという式になっています.
公式の考え方
それでは,この公式の考え方を説明します.
公式が成り立つ理由
この公式が成り立つ理由を考えてみましょう.
2交点の座標を$\mrm{A}(a_1,a_2)$, $\mrm{B}(b_1,b_2)$とすると,2点A, Bが共に円$C_1$, $C_2$上にあるので,
が成り立ちます.よって,
を満たすので,方程式$k f(x,y)+\ell g(x,y)=0$のグラフは2点$\mrm{A}(a_1,a_2)$, $\mrm{B}(b_1,b_2)$を通ることになります.
また,$f(x,y)$も$g(x,y)$も$x^2$の係数と$y^2$の係数が等しい2次式なので,$kf(x,y)+\ell g(x,y)$も$x^2$の係数と$y^2$の係数が等しい2次式となります.
このとき,$k f(x,y)+\ell g(x,y)$について
- $x^2$の係数と$y^2$の係数が0になれば,$kf(x,y)+\ell g(x,y)=0$は直線を描き
- $x^2$の係数と$y^2$の係数が0にならなければ,$kf(x,y)+\ell g(x,y)=0$は円を描く
ということになります.
fとgの係数
2円を
- $C_1:x^2+y^2=1$
- $C_2:(x-3)^2+(y+4)^2=25$
とします.このとき,
- $f(x,y)=x^2+y^2-1$
- $g(x,y)=(x-3)^2+(y+4)^2-25$
とすると,方程式$k f(x,y)+\ell g(x,y)=0$は$k$と$\ell$に値を入れることで,2共有点を通る様々な円や直線を表すことができます.
例えば,方程式$kf(x,y)+\ell g(x,y)=0$は
- $k=1$, $\ell=1$のとき,
なので円を表す
- $k=2$, $\ell=1$のとき,
なので円を表す
- $k=-1$, $\ell=1$のとき,
なので直線を表す
となります.
3つ目の例だけが直線ですが,これは$k$と$\ell$が$k=-\ell$の関係になっているので,$f(x,y)$と$g(x,y)$の$x^2$と$y^2$が打ち消しあって,1次式になっているからですね.
このように,$k=-\ell$の場合のみ方程式$kf(x,y)+\ell g(x,y)=0$のグラフは直線となり,それ以外では円となります.