論理と集合3
必要条件・十分条件を判断する1つのポイント

論理と集合
論理と集合

数学において(数学でなくとも)仮定結論を意識することはとても大切です.

さて,数学では「$p$ならば$q$である」という形の主張がよく登場します.

この記事では,論理の基本として

  • 命題と条件
  • 必要条件と十分条件

を順に説明します.

命題と条件

まずは条件命題を説明します.

命題

例えば,

  1. $2$は偶数である
  2. $5$は$4$で割り切れる

と言っている人がいたとしましょう.

これらの主張のうち,(1)は正しいものの,(2)は誤りですね.

これについて,次のように命題というものを定義しましょう.

正しいか否かが明確に決まる主張を命題という.また,命題が正しいとき命題はであるといい,命題が正しくないとき命題はであるという.

命題でないものとしては,

  • 彼女は頭が良い
  • 彼は背が高い

などは,正しいか否かが明確には決まりませんから命題ではありません.

しかし,これらを

  • 彼女の直近の試験の成績は学年1位である
  • 彼の身長は180cm以上である

という主張に変えれば,正しいか正しくないかが明確に決まるのでこれらは命題です.

また,上の例について

  1. 「$2$は偶数である」は
  2. 「$5$は$4$で割り切れる」は

というわけですね.

条件

数学では「$p$ならば$q$である」という形の命題がよく登場します.例えば,

  1. 整数$x$に対して,$x$が$4$の倍数ならば,$x$は偶数である
  2. 三角形$\mrm{X}$に対して,$\mrm{X}$が二等辺三角形ならば,$\mrm{X}$は正三角形である

などですね.なお,(1)は真ですが,(2)は偽ですね.

命題「$p$ならば$q$である」が真と言えるのは「$p$となるとき必ず$q$となるとき」であり,$p$が成り立っているのに$q$が成り立っていない場合が1つでもあれば「$p$ならば$q$である」は偽です.

さて,この命題「$p$ならば$q$である」において$p$や$q$のことを条件といいます.

対象$x$を含んだ文や式を$x$の条件という.

例えば,上の例(1)では

  • $x$は$4$の倍数
  • $x$は偶数

は整数$x$の条件で,また上の例(2)では

  • $\mrm{X}$は二等辺三角形
  • $\mrm{X}$は正三角形

は三角形$\mrm{X}$の条件です.

必要条件と十分条件

「$p$ならば,$q$である」型の命題については必要条件十分条件という概念が重要です.

条件$p$, $q$に対して,命題「$p$ならば$q$である」を$p\Rightarrow q$と表す.命題$p\Rightarrow q$が真であるとき,

  • $p$は$q$の十分条件である
  • $q$は$p$の必要条件である

という.また,命題$p\Rightarrow q$と命題$q\Rightarrow p$がともに真であるとき,$p$は$q$の必要十分条件である,または$p$と$q$は同値であるという.

この定義から

  • $p$は$q$の十分条件である
  • $q$は$p$の必要条件である

は全く同じ意味であり,

  • $p$は$q$の必要条件である
  • $q$は$p$の十分条件である

全く同じ意味であることに注意してください.

$p$が$q$の必要条件・十分条件であるかを調べるときのポイントは,

  1. $p\Rightarrow q$の真偽($p$が成り立つとき,必ず$q$が成り立つか?)
  2. $q\Rightarrow p$の真偽($q$が成り立つとき,必ず$p$が成り立つか?)

を考えるということです.

いくつか具体的に考えてみましょう.

具体例1

次の条件$p$, $q$はそれぞれ他方の必要条件か,十分条件か.

  • $p$;A君はX高校の生徒である
  • $q$:A君は高校生である

$p$が$q$の十分条件($q$が$p$の必要条件)であるかどうかは,命題$p\Rightarrow q$の真偽を考えればよいですね.

また,$q$が$p$の必要条件($p$が$q$の十分条件)であるかどうかは,命題$q\Rightarrow p$の真偽を考えればよいですね.

(1)$p\Rightarrow q$の真偽:A君はX高校の生徒(条件$p$)であるとき,必ずA君は高校生(条件$q$)でしょうか?

X高校に生徒として通っているということは,必ず高校生ということになりますね.

つまり,命題「$p\Rightarrow q$」は真ですから,$p$は$q$の十分条件($q$は$p$の必要条件)ですね.

(2)$q\Rightarrow p$の真偽:A君は高校生(条件$q$)とするとき,必ずA君はX高校の生徒(条件$p$)でしょうか?

たとえば,A君はY高校の生徒かもしれませんし,Z高校の生徒かもしれませんから,必ずしもA君がX高校の生徒であるとは言えません.

つまり,命題「$q\Rightarrow p$」は偽ですから,$p$は$q$の必要条件ではない($q$は$p$の十分条件ではない)ですね.

(1), (2)より$p$は$q$の十分条件だが必要条件でない($q$は$p$の必要条件だが十分条件でない)と分かりました.

具体例2

次の条件$p$, $q$はそれぞれ他方の必要条件か,十分条件か.

  • $p$:$x$は偶数である
  • $q$:$x$は4の倍数である

(1)$p\Rightarrow q$の真偽:$x$は偶数(条件$p$)とするとき,必ず$x$は$4$の倍数(条件$q$)でしょうか?

たとえば,$x=6$は$p$をみたしますが,$q$は満たしていません.

つまり,命題「$p\Rightarrow q$」は偽ですから,$p$は$q$の十分条件ではない($q$は$p$の必要条件ではない)ですね.

(2)$q\Rightarrow p$の真偽:$x$は$4$の倍数(条件$q$)とするとき,必ず$x$は偶数(条件$p$)でしょうか?

$x$が4の倍数であるとき,$x$は整数$m$によって$x=4m$と表せますね.このとき,$x=2\times2m$であり,$2m$は整数ですから$x$は偶数ですね.

つまり,命題「$q\Rightarrow p$」は真ですから,$p$は$q$の必要条件($q$は$p$の十分条件)ですね.

(1), (2)より$p$は$q$の必要条件だが十分条件でない($q$は$p$の十分条件だが必要条件でない)と分かりました.

具体例3

次の条件$p$, $q$はそれぞれ他方の必要条件か,十分条件か.

  • $p$:$x$は$6$の倍数である
  • $q$:$x$は$2$の倍数かつ$3$の倍数である

(1)$p\Rightarrow q$の真偽:$x$は$6$の倍数(条件$p$)とするとき,必ず$x$は$2$の倍数かつ$3$の倍数である(条件$q$)でしょうか?

$x$が$6$の倍数であるとき,$x$は整数$m$によって$x=6m$と表せますね.このとき,

    \begin{align*}x=3\times2m=2\times3m\end{align*}

であり,$2m$と$3m$はともに整数ですから$x$は$3$の倍数かつ$2$の倍数ですね.

つまり,命題「$p\Rightarrow q$」は真ですから,$p$は$q$の十分条件($q$は$p$の必要条件)ですね.

(2)$q\Rightarrow p$の真偽:$x$は$2$の倍数かつ$3$の倍数である(条件$q$)とするとき,必ず$x$は$6$の倍数(条件$p$)でしょうか?

$x$が$2$の倍数であるとき,$x$は整数$m$によって$x=2m$と表せます.さらに,$x=2m$が$3$の倍数であれば,$m$が$3$の倍数でなければなりませんから,$m$は整数$n$によって$m=3n$と表せます.

よって,$x=6n$となり$x$は$6$の倍数です.

つまり,命題「$q\Rightarrow p$」は真ですから,$p$は$q$の必要条件($q$は$p$の十分条件)ですね.

(1), (2)より$p$は$q$の必要十分条件($q$は$p$の必要十分条件)と分かりました.

以上のように,

  • 真の場合は証明
  • 偽の場合は反例

を考えればよいというわけですね.

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