ワンポイント数学5|2つの微分の定義式を図から理解しよう

ワンポイント数学
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関数$f(x)$の$x=a$での微分係数$f'(a)$は$y=f(x)$のグラフの接線の傾きをもとにして定義されます.

この微分係数$f'(a)$の定義式は

  • $\lim\limits_{b\to a}\dfrac{f(b)-f(a)}{b-a}$
  • $\lim\limits_{h\to0}\dfrac{f(a+h)-f(a)}{h}$

のどちらかで書かれることが多いのですが,どちらも本質的には全く同じでもちろん計算結果も等しくなります.

この記事では

  • 2つの微分係数の定義の関係
  • 2つの定義の具体例

を順に説明します.

y=f(x)のグラフの接線の傾き(微分係数)を求める方法を解説
「微分法」を用いることで,例えばxy平面上のy=2x³のグラフのx=-1での接線の方程式を求めることができます.この記事では接線の方程式の求め方をテーマに,微分係数の定義と使い方を説明します.

2つの微分係数の定義

冒頭の2つの微分係数の定義を比較しましょう.

微分係数の定義1

[定義1] 関数$f(x)$と実数$a$に対して,極限

    \begin{align*}\lim_{b\to a}\dfrac{f(b)-f(a)}{b-a}\end{align*}

が存在するとき,$f(x)$は$x=a$で微分可能であるという.また,この極限を「関数$f(x)$の$x=a$における微分係数」といい,$f'(a)$と表す.

この[定義1]の図形的イメージは以下の通りです.

$xy$平面上に点$\mrm{A}(a,f(a))$と異なる$y=f(x)$上の点$\mrm{B}(b,f(b))$を考えます.

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このとき,$b\to a$とすれば直線$\mrm{AB}$は曲線$y=f(x)$上の点$\mrm{A}$での接線に近付きます.

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そのため,直線$\mrm{AB}$の傾き

    \begin{align*}\frac{f(b)-f(a)}{b-a}\end{align*}

は極限$b\to a$をとれば曲線$y=f(x)$上の点$\mrm{A}$での接線の傾きに近付くので,極限$\lim\limits_{b\to a}\dfrac{f(b)-f(a)}{b-a}$が曲線$y=f(x)$上の点$\mrm{A}$での接線の傾きとなるわけですね.

微分係数の定義2

[定義2] 関数$f(x)$と実数$a$に対して,極限

    \begin{align*}\lim_{h\to 0}\dfrac{f(a+h)-f(a)}{h}\end{align*}

が存在するとき,$f(x)$は$x=a$で微分可能であるという.また,この極限を「関数$f(x)$の$x=a$における微分係数」といい,$f'(a)$と表す.

この[定義2]の図形的イメージは以下の通りです.

$h$を実数とすると,$xy$平面上に点$\mrm{A}(a,f(a))$と異なる$y=f(x)$上の点$\mrm{B}(a+h,f(a+h))$をとることができます.

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このとき,$h\to0$とすれば直線$\mrm{AB}$は曲線$y=f(x)$上の点$\mrm{A}$での接線に近付きます.

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そのため,直線$\mrm{AB}$の傾き

    \begin{align*}\frac{f(a+h)-f(a)}{h}\bra{=\frac{f(a+h)-f(a)}{(a+h)-a}}\end{align*}

は極限$h\to0$をとれば曲線$y=f(x)$上の点$\mrm{A}$での接線の傾きに近付くので,極限$\lim\limits_{h\to 0}\dfrac{f(a+h)-f(a)}{h}$が曲線$y=f(x)$上の点$\mrm{A}$での接線の傾きとなるわけですね.

2つの定義式が等しいこと

以上の考え方から[定義1]と[定義2]では文字は違うものの,同じ図を考えていることが分かります.

[定義1]では2点$(a,f(a)),(b,f(b))$を通る直線の傾きをもとに考えて,[定義2]では2点$(a,f(a)),(a+h,f(a+h))$を通る直線の傾きをもとに考えています.

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このことから,[定義1]と[定義2]は$b=a+h$という関係で移り合うことが分かりますね.

実際,[定義1]の

    \begin{align*}\lim_{b\to a}\dfrac{f(b)-f(a)}{b-a}\end{align*}

で$b=a+h$とおくと

  • 極限$b\to a$は

        \begin{align*}b\to a\iff& a+h\to a\\\iff& h\to 0\end{align*}

  • 平均変化率$\dfrac{f(b)-f(a)}{b-a}$は

        \begin{align*}\frac{f(b)-f(a)}{b-a}=\frac{f(a+h)-f(a)}{h}\end{align*}

となるので,

    \begin{align*}&\lim_{b\to a}\frac{f(b)-f(a)}{b-a} =\lim_{h\to 0}\frac{f(a+h)-f(a)}{h}\end{align*}

と確かに[定義2]に等しくなることがわかりますね.

2つの定義で計算する

いまみたように[定義1]の定義式と[定義2]の定義式が同じであることから,どちらの定義でも同じ結果になるはずです.

このことを具体的にみてみましょう.

$f(x)=x^3$の$x=2$での微分係数を[定義1]と[定義2]の両方で求めよ.

[定義1]によると

    \begin{align*}\lim_{b\to 2}\frac{f(b)-f(2)}{b-2} =&\lim_{b\to 2}\frac{b^3-2^3}{b-2} \\=&\lim_{b\to 2}\frac{(b-2)(b^2+2b+2^2)}{b-2} \\=&\lim_{b\to 2}(b^2+2b+2^2) \\=&2^2+2\times2+2^2=3\times 2^2=12\end{align*}

である.また,[定義2]によると

    \begin{align*}\lim_{h\to0}\frac{f(2+h)-f(2)}{h} =&\lim_{h\to0}\frac{(2+h)^3-2^3}{h} \\=&\lim_{h\to0}\frac{(2^3+3\times2^2h+3\times2h^2)-h^3}{h} \\=&\lim_{h\to0}\frac{3\times2^2h+3\times2h^2}{h} \\=&\lim_{h\to0}(3\times2^2+3\times2h)=3\times 2^2=12\end{align*}

である.

確かに同じ結果になりましたね.

なお,[定義1]では極限をとる前に$b-a$で約分する必要があり,途中で分子を因数分解して$(b-a)$をつくりました.

一方,[定義2]では$h$で約分すれば良いので,分子を$h$でくくれば約分ができます.

このため因数分解をしなくても自然に$h$が約分できる[定義2]の$\lim\limits_{h\to0}\dfrac{f(a+h)-f(a)}{h}$で計算する方がラクなことが多いです.

管理人

プロフィール

山本やまもと 拓人たくと

元予備校講師.講師として駆け出しの頃から予備校の生徒アンケートで抜群の成績を残し,通常の8倍の報酬アップを提示されるなど頭角を表す.

飛び級・首席合格で大学院に入学しそのまま首席修了するなど数学の深い知識をもち,本質をふまえた分かりやすい授業に定評がある.

現在はオンライン家庭教師,社会人向け数学教室での講師としての教育活動とともに,京都大学で数学の研究も行っている.専門は非線形偏微分方程式論.大学数学系YouTuberとしても活動中.

趣味は数学,ピアノ,甘いもの食べ歩き.

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