例えば「放物線$y=x^2$と直線$y=2x-1$は接するか?」という問題は,判別式$D$を用いて$D=0$となるのかどうかを調べるのがよくある方法です.
しかし,判別式$D$は2次式に対してしか使えないので,例えば3次式になっただけで判別式による方法は使えないことになります.
そこで,この記事から説明していく微分法を用いると,2次式でない場合にも$xy$平面上の曲線の「接線の方程式」を考えることができます.
「微分法」は非常に汎用性が高く,単に接線の方程式を求めるだけに留まらず,関数のグラフを描くことにも応用できます.
この記事では
- 直感的(図形的)な接線の考え方
- 微分係数の定義
- 微分係数の具体例(接線の方程式の求め方)
を説明します.
一連の記事はこちら
【微分法1|グラフの接線はどう考える?[微分係数]を理解する】←この記事
【微分法2|微分係数から導関数へ!導関数の考え方をマスター】
【微分法3|多項式の導関数を求める公式と導関数の基本性質】
【微分法4|y=f(x)のグラフの描き方は4ステップでOK】
【微分法5|導関数から極大値,極小値を求める方法】
【微分法6|関数の最大値,最小値は微分を使うのが鉄板!】
【微分法7|グラフを使った[実数解の個数]と[不等式の証明]】
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微分係数の定義と図形的意味
$xy$平面上の$y=f(x)$のグラフ上に点$\mrm{A}(a,f(a))$を考えます.
このとき,点Aでの$y=f(x)$のグラフの接線を求めましょう.
直線の方程式の復習
次は当たり前にしておきたい公式ですね.
$xy$平面上において,点$(a,b)$を通り,傾きが$m$の直線の方程式は,
と表せる.
この公式から,直線の方程式を求めるためには
- 通る点
- 傾き
が分かれば良いということが分かります.
さて,$y=f(x)$の点$\mrm{A}(a,f(a))$での接線$\ell$は,当然のことながら点$\mrm{A}(a,f(a))$を通ります.
したがって,あとは直線$\ell$の傾きが分かれば,直線$\ell$の方程式が求まりますね.
中学校以来,$xy$平面上の直線としては「傾きをもつ直線」を考えるのが基本的でした.この記事では,「直線の傾き」の考え方を説明し,直線の方程式は「傾き」と「通る点」により求められることを説明します.
接線の傾きの考え方
まず,点$\mrm{A}(a,f(a))$と異なる$y=f(x)$上の点$\mrm{B}(b,f(b))$をとり,直線ABを考えます.
このとき,直線ABの傾きは
ですね.ここで$b$を$a$に近づければ,直線ABの傾きは直線$\ell$の点Aでの接線の傾きに近付いていきますね.
よって,$b$を$a$に近づけると直線ABの傾き$\dfrac{f(b)-f(a)}{b-a}$は接線$\ell$の傾きに近付くことがみてとれますね.
さて,この「$b$を$a$に近付ける」というのは数学の言葉では$b\to a$の極限といい,いまの場合
と表します.
この計算についてはあとで説明しますので,いまの段階では接線の傾きの考え方をフォローしておいてください.
なお,関数の極限については以下の記事で丁寧に説明しています.
極限は代入ではなく「近付ける」というところに良さがあります.たとえば,$\dfrac{f(b)-f(a)}{b-a}$について,分母が0になってしまうので$b=a$とすることはできませんが,$b\to a$と近付けることは問題がありません.この記事では,極限の考え方を説明します.
微分係数の定義
以上の考察を踏まえ,以下の定義を見てみましょう.
[平均変化率,微分係数] 関数$f(x)$と実数$a$, $b$に対して,
を$x$が$a$から$b$まで変化するときの関数$f(x)$の平均変化率という.また,極限
が存在するとき,$f(x)$は$x=a$で微分可能であるという.また,この極限を関数$f(x)$の$x=a$における微分係数といい,$f'(a)$と表す.
$x$が$a$から$b$まで変化したとき,$f(x)$は$f(a)$から$f(b)$まで変化しますね.
「平均変化率」は,直線の「変化の割合」と同じ定義式ですが,一般に関数$f(x)$は「曲がって」いるので,「平均変化率」が一定であるとは限りません.
ただし,定義の中に「極限$\lim\limits_{b\to a}\dfrac{f(b)-f(a)}{b-a}$が存在するとき,」とあるように,極限$\lim\limits_{b\to a}\dfrac{f(b)-f(a)}{b-a}$が存在しないこともあります.
微分可能でない例については主に数学IIIの範囲ですが,気になる方は以下の記事を参照してください.
大雑把にいえば,$y=f(x)$の接線を考えることができないようなとき,$f(x)$は微分不可能であるといいます.たとえば,$y=|x|$のグラフは原点で尖るため,原点での接線を考えることができず,微分不可能となります.この記事では,微分不可能な例を扱います.
「微分係数」は「平均変化率」の極限で定義される.「傾きの極限」という図形的なイメージがあれば,定義式は自分で導くことができる.
接線の方程式
微分係数を用いて,接線の方程式を導出します.
接線の定義と接線の方程式
前後しますが,ここで「接線」について定義しておきます.
今まで何度も「接線」という言葉を使ってきましたが,「接線」とは一体なんなのでしょうか?
実はこれまでに,放物線では判別式で「接する」ということは定義してきましたが,放物線以外で「接線」についての定義はされてきませんでした.
「微分係数」を定義したことによって,次のように「接線」を定義することができます.
関数$f(x)$と実数$a$に対して,$f(x)$は$x=a$で微分可能であるとする.このとき,傾き$f'(a)$で点$\mrm{A}(a,f(a))$を通る直線$\ell$を曲線$y=f(x)$の点Aにおける接線という.また,点Aを接線$\ell$の接点という.
もともと「接線」が何なのかを定義していないため,「接線」を定義するために「微分係数」を用いたというわけですね.
さて,$y=f(x)$の点$(a,f(a))$での接線$\ell$は
- 点$(a,f(a))$を通り
- 傾き$f'(a)$
なので,先ほどの直線の方程式の公式から次のようになりますね.
$a$を実数とし,関数$f(x)$は$x=a$で微分可能であるとする.このとき,$xy$平面上において,$y=f(x)$の$x=a$での接線は
である.
関数$f(x)$の$x=a$での微分係数$f'(a)$は,点$(a,f(a))$における$y=f(x)$の接線$\ell$の傾きを表す.よって,接線$\ell$の方程式は$y=f'(a)(x-a)+f(a)$と表せる.
接線の具体例
次の例を考えます.
次の関数$f(x)$と実数$a$に対して,$x=a$での$y=f(x)$の接線の方程式を求めよ.
- $f(x)=x^{2}$, $a=1$
- $f(x)=2x^{3}$, $a=-1$
(1) $f(x)=x^{2}$より
なので,$f'(1)=2$となります.いま,$y=f(x)$の$x=1$での接線は点$(1,f(1))$,すなわち$(1,1)$を通るので,
となります.
(2) $f(x)=2x^{3}$より
なので,$f'(-1)=6$となります.いま,$y=f(x)$の$x=-1$での接線は点$(-1,f(-1))$,すなわち$(-1,-2)$を通るので,
となります.
直線の方程式が傾きと通る点から分かることに注意すれば,簡単に方程式が得られますね.
次の記事では,微分係数をより広く扱いやすくした導関数について説明します.