微分法1
微分係数とは?$y=f(x)$のグラフの接線を求めよう!

微分法
微分法

例えば「放物線$y=x^2$と直線$y=2x-1$は接するか?」という問題は,2次方程式$x^2=2x-1$の判別式$D$が$0$となるかどうかを調べるのがよくある解法です.

しかし,判別式$D$は2次式に対してしか使えないので,例えば対象が3次式になっただけで判別式による方法は使えないことになります.

微分法を用いると2次式でない多項式に対しても,$xy$平面上の曲線の接線の方程式を考えることができます.

微分法は非常に汎用性が高く,単に接線の方程式を求めるだけに留まらず,関数のグラフを描くことにも応用できます.

この記事では

  • 直感的(図形的)な接線の考え方
  • 微分係数の定義
  • 微分係数の具体例(接線の方程式の求め方)

を順に説明します.

微分係数の定義と図形的意味

$xy$平面上の$y=f(x)$のグラフ上に点$\mrm{A}(a,f(a))$を考えます.このとき,点$\mrm{A}$での$y=f(x)$のグラフの接線$\ell$の方程式はどのように求めれば良いでしょうか?

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直線の方程式の復習

次は当たり前にしておきましょう.

$xy$平面上の点$(a,b)$を通り,傾き$m$の直線$\ell$の方程式は

   \begin{align*}y=m(x-a)+b\end{align*}

である.

つまり,直線の方程式を求めるためには,通る点と傾きさえ分かれば良いというわけですね.

$y=f(x)$の点$\mrm{A}(a,f(a))$での接線$\ell$は,当然のことながら点$\mrm{A}(a,f(a))$を通ります.

したがって,あとは直線$\ell$の傾きが分かれば,直線$\ell$の方程式が求まりますね.

図形と方程式3
直線の「傾き」の考え方と平行条件・垂直条件
1次関数$y=ax+b$のグラフはxy平面上の傾きをもつ直線になります.2つの直線y=ax+b,y=a'x+b'があるとき,これらの傾きに注目すると,これら2直線が平行か垂直かを判定することができます.

接線の傾きの考え方

それでは$y=f(x)$の点$\mrm{A}(a,f(a))$での接線$\ell$の傾きの求め方を考えましょう.

まず,点$\mrm{A}(a,f(a))$と異なる$y=f(x)$上の点$\mrm{B}(b,f(b))$をとり,直線$\mrm{AB}$を考えます.

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このとき,直線$\mrm{AB}$の傾きは

   \begin{align*}\frac{f(b)-f(a)}{b-a}\end{align*}

ですね.これを$a$から$b$までの$f$の平均変化率といいます.

この平均変化率で$b$を$a$に近づければ,直線$\mrm{AB}$の傾きは直線$\ell$の点$\mrm{A}$での接線の傾きに近付いていきますね.

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微分係数の定義

いまの「$b$を$a$に近付ける」というのは数学の言葉では$b\to a$の極限といい,いまの場合

   \begin{align*}\lim_{b\to a}\frac{f(b)-f(a)}{b-a}\end{align*}

と表します.

なお,この関数の極限について詳しくは以下の記事を参照してください.

極限の基本1
lim(リミット)の意味は?極限の考え方
高校数学では「関数の極限」は微分を定義するために導入することになります.しかし,そこではあまり深く踏み込まないので,曖昧なままなってしまう人が多く見受けられます.この記事では関数の極限の考え方を基礎から説明します.

以上の考察を踏まえ,以下の定義を見てみましょう.

[平均変化率,微分係数] 関数$f$と実数$a$, $b$に対して,$a$から$b$までの$f$の平均変化率$\frac{f(b)-f(a)}{b-a}$の$b\to a$の極限

   \begin{align*}\lim_{b\to a}\frac{f(b)-f(a)}{b-a}\end{align*}

が存在するとき,$f$は$a$で微分可能であるという.

また,この極限を関数$f$の$a$における微分係数といい$f'(a)$と表す.

また,$b-a=h$とおくと$b\to a$のとき$h\to0$となるので,

   \begin{align*}f'(a)=\lim_{h\to0}\frac{f(a+h)-f(a)}{h}\end{align*}

となります.こちらの書き方で微分係数を定義することもあるので注意してください.

なお,この2つ定義式については以下の記事で詳しく説明しています.

ワンポイント数学5|2つの微分の定義式を図から理解しよう
関数fのaでの微分係数f'(a)はy=f(x)のグラフの接線の傾きをもとに定義されます.f'(a)の定義式は2通りで書かれることが多いのですが,どちらも本質的に同じでもちろん計算結果も等しくなります.

微分係数の存在

定義の中に「極限$\lim\limits_{b\to a}\dfrac{f(b)-f(a)}{b-a}$が存在するとき,」とあるように,極限$\lim\limits_{b\to a}\dfrac{f(b)-f(a)}{b-a}$が存在しないこともあります.

このときは$f$は$a$で微分不可能であるといいますが,多項式は任意の実数$a$においても微分可能なので,多項式の微分のみを扱う数学IIの範囲では微分可能性を気にする必要はありません.

そのため微分可能でない例については主に数学IIIの範囲ですが,気になる方は以下の記事を参照してください.

ワンステップ数学5
微分不可能な例と直感的な理解
微分可能な関数fの導関数f'を考えることによりグラフy=f(x)の接線の傾きを考えることができるのでしたが,関数fはいつでも微分可能とは限りません.この記事では微分不可能な関数の直感的な理解と具体例を解説しています

接線の方程式

以上から,$xy$平面上の$y=f(x)$のグラフの接線の方程式は次で得られますね.

実数$a$と関数$f$に対して,$f$は$a$で微分可能であるとする.このとき,$xy$平面上の$y=f(x)$のグラフの$a$での接線は

   \begin{align*}y=f'(a)(x-a)+f(a)\end{align*}

である.

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大切なことは$xy$平面上の$y=f(x)$のグラフの$x=a$での接線の傾きが微分係数$f'(a)$であるということですね.

具体例1

$xy$平面上の$y=x^2$のグラフの$x=1$での接線の方程式を求めよ.

$f(x)=x^{2}$とする.$y=f(x)$の$x=1$での接線は点$(1,f(1))$すなわち$(1,1)$を通る.

また,$f$の$1$での微分係数$f'(1)$は

   \begin{align*}f'(1) =&\lim_{b\to1}\frac{f(b)-f(1)}{b-1} =\lim_{b\to1}\frac{b^{2}-1}{b-1} \\=&\lim_{b\to1}\frac{(b-1)(b+1)}{b-1} =\lim_{b\to1}(b+1) =2\end{align*}

だから,接線の傾きは$2$である.よって,求める接線の方程式は

   \begin{align*}&y=2(x-1)+1 \\\iff& y=2x-1\end{align*}

となる.

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直線の方程式は「通る点」と「傾き」が分かれば求められるということを意識してください.

具体例2

$xy$平面上の$y=2x^{3}$のグラフの$x=-1$での接線の方程式を求めよ.

$f(x)=2x^{3}$とする.$y=f(x)$の$x=-1$での接線は点$(-1,f(-1))$すなわち$(-1,-2)$を通る.

また,$f$の$-1$での微分係数$f'(-1)$は

   \begin{align*}f'(-1) =&\lim_{b\to-1}\frac{f(b)-f(-1)}{b-(-1)} =\lim_{b\to-1}\frac{2b^{3}-(-2)}{b+1} \\=&\lim_{b\to-1}\frac{2(b+1)(b^2-b+1)}{b+1} =\lim_{b\to-1}2(b^2-b+1) =6\end{align*}

だから,接線の傾きは$6$である.よって,求める接線の方程式は

   \begin{align*}&y=6(x-(-1))-2 \\\iff& y=6x+4\end{align*}

となる.

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やっていることは具体例1と同じですね.

「接線」の少し厳密な話(おまけ)

最後に接線について少し厳密な話をしますが,高校数学ではここまで知っている必要はないので,以上で納得した人は読まなくても構いません.

ここで考えたいことは「$xy$平面上の$y=f(x)$のグラフの「接線」はどのように定義されるのか?」です.

関数$f$が2次関数の場合は「$y=g(x)$と$y=ax+b$から$y$を消去してできる方程式について,判別式が$0$となるとき$y=ax+b$を$y=f(x)$の接線という」と定義することはできますが,$f$が2次関数でない場合はどうでしょうか?

$f$が2次関数でなければいまのように判別式は考えられませんから,同様に定義することはできません.

実は厳密には$xy$平面上の$y=f(x)$のグラフの$x=a$での接線は次のように定義されます.

実数$a$と関数$f$に対して,$f$は$a$で微分可能であるとする.このとき,$xy$平面上の点$\mrm{A}(a,f(a))$を通り,傾き$f'(a)$の直線$\ell$を$y=f(x)$のグラフの$x=a$における接線という.また,点$\mrm{A}$を接線$\ell$の接点という.

つまり,高校範囲では接線がどういうものか直感的に扱われているので,先ほど説明したように「点$(a,f(a))$を通り,傾き$f'(a)$の直線が接線だから,接線の方程式は$y=f'(a)(x-a)+f(a)$である」という説明になるのですが,厳密には逆でこれが定義となっているわけですね.

管理人

プロフィール

山本やまもと 拓人たくと

元予備校講師.講師として駆け出しの頃から予備校の生徒アンケートで抜群の成績を残し,通常の8倍の報酬アップを提示されるなど頭角を表す.

飛び級・首席合格で大学院に入学しそのまま首席修了するなど数学の深い知識をもち,本質をふまえた分かりやすい授業に定評がある.

現在はオンライン家庭教師,社会人向け数学教室での講師としての教育活動とともに,京都大学で数学の研究も行っている.専門は非線形偏微分方程式論.大学数学系YouTuberとしても活動中.

趣味は数学,ピアノ,甘いもの食べ歩き.

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