前回の記事では,関数$f(x)$の導関数$f'(x)$を求めることによって,$y=f(x)$のグラフが描けることを説明しました.
2次関数を学んだときもそうでしたが,関数$f(x)$の値の範囲を求めるためには,$f(x)$のグラフを描くことが大切なのでした.
さて,3次以上の多項式$f(x)$について,
- 極大値
- 極小値
が$f(x)$の最大値・最小値の候補となります.
この記事では,関数$f(x)$の極大値・極小値(併せて極値という)について説明します.
一連の記事はこちら
【微分法1|グラフの接線はどう考える?[微分係数]を理解する】
【微分法2|微分係数から導関数へ!導関数の考え方をマスター】
【微分法3|多項式の導関数を求める公式と導関数の基本性質】
【微分法4|$y=f(x)$のグラフの描き方は4ステップでOK】
【微分法5|導関数から極大値,極小値を求める方法】←この記事
【微分法6|関数の最大値,最小値は微分を使うのが鉄板!】
【微分法7|グラフを使った[実数解の個数]と[不等式の証明]】
極大値と極小値
冒頭でも書いたように,関数$f(x)$の最大値・最小値を考えるときに,その候補となるものに極値とよばれるものがあります.
関数$f(x)$と実数$a$, $b$に対して,2点$\mrm{A}(a,f(a))$, $\mrm{B}(b,f(b))$をとる.
$x=a$の近くにおいて,$f(x)$が$x=a$で最大値をとるとき,$f(a)$を$f(x)$の極大値という.また$x=b$の近くにおいて,$f(x)$が$x=b$で最小値をとるとき,$f(b)$を$f(x)$の極小値という.極大値と極小値を併せて極値という.
また,このとき$x=a$を極大点,$x=b$を極小点という.
要するに
- それぞれの「山の頂上」の高さを極大値
- それぞれの「谷の底」の低さを極小値
というわけですね.
それぞれの山に頂上があるように極大値も複数存在することもあります.同様に,それぞれの谷に底があるように極小値も複数存在することもあります.
周囲より大きい$f(x)$を極大値,周囲より小さい$f(x)$を極小値という.
導関数と極値
微分可能な$f(x)$に対して,導関数$f'(x)$から$f(x)$の極値の候補を見つけることができます.
上の例を見ても分かるように,微分可能な$f(x)$が$x=a$で極値をとるとき,点$(a,f(a))$の接線は「平ら」になっています.つまり,接線の傾きが0になっています.
さらに,
- 極大値となるところでは関数が増加↗︎から減少↘︎に移り,
- 極小値となるところでは関数が減少↘︎から減少↗︎に移ります.
このことから,次の定理が成り立ちます.
微分可能な関数$f(x)$が$x=a$で極値をもつなら,$f'(a)=0$を満たす.このとき,さらに$x=a$の前後で
- $f'(x)>0$から$f'(x)<0$となるとき,$f(a)$は極大値である
- $f'(x)<0$から$f'(x)>0$となるとき,$f(a)$は極小値である
定理の注意点
先ほどの定理は
$f(x)$が$x=a$で極値をもつ → $f'(a)=0$をみたす
という主張であり,この逆の
$f'(a)=0$をみたす → $f(x)$が$x=a$で極値をもつ
は正しくないことがあります.
関数$f(x)$と実数$a$に対して,$f'(a)=0$であっても$f(x)$が$x=a$に極値をもつとは限らない.
ですから,方程式$f'(x)=0$を解いて解が$x=a$となっても,すぐに「$f(a)$は極値だ!」とはいえないわけですね.
例えば,$f(x)=x^3$を考えると,$f'(x)=3x^2$なので,$f'(0)=0$です.しかし,$y=f(x)$のグラフは下図のようになっており,$x=0$で極値をもちませんね.
$f'(x)=3x^2$は常に0以上となるため,減少に転ずることがありません.
このように,$f'(x)$が0になってもその前後で正負が変化しない場合には極値とならないわけですね.
具体例
それでは具体例を考えましょう.
次の関数$f(x)$の極値を求めよ.
- $f(x)=\dfrac{1}{4}\bra{x^3+3x^2-9x-7}$
- $f(x)=|x+1|-3$
例1
$f(x)=\dfrac{1}{4}(x^3+3x^2-9x-7)$の導関数は
なので,方程式$f'(x)=0$は$x=-3,1$と解けます.また,計算して$f(-3)=5$, $f(1)=-3$だから,$f(x)$の増減表は
となります.よって,増減表から$f(x)$は
- $x=-3$で極大値5 (増加から減少に転ずるところ)
- $x=1$で極小値$-3$ (減少から増加に転ずるところ)
をとることが分かります.
この増減表から以下のように$y=f(x)$のグラフが描けるので,視覚的にも分かりますね.
これらの極値は実数全体で見れば,どちらも最大値・最小値ではありませんね.
例2
$f(x)=|x+1|-3$に対して,$y=f(x)$のグラフは$y=|x|$のグラフを
- $x$軸方向にちょうど$-1$
- $y$軸方向にちょうど$-3$
平行移動したグラフなので,下図のようになります.
よって,$x=0$で極小値$-3$をとります.また,極大値は存在しませんね.
$x=0$での極小値$-3$は最小値でもありますね.
このように尖っている場合でも
- 周囲より高くなっていれば極大値
- 周囲より低くなっていれば極小値
といいます.
さて,この記事で説明した極値は最大値・最小値の候補ですが,極値以外にも最大値・最小値の候補があります.
次の記事では,関数$f(x)$の最大値・最小値の求め方を説明します.