前回の記事までで,導関数$f'(x)$を用いて$y=f(x)$のグラフを描けるようになり,さらに関数$f(x)$の最大値・最小値の求め方を考えました.
$y=f(x)$の増減表やグラフを描くことにより,方程式$f(x)=0$の実数解の個数を求めることができます.
このときの考え方を利用すると
- 実数$k$に対して方程式$f(x)=k$の実数解の個数を求めたり,
- 不等式の証明をすることができます.
この記事では,これらの問題を解くための考え方を説明します.
一連の記事はこちら
【微分法1|グラフの接線はどう考える?[微分係数]を理解する】
【微分法2|微分係数から導関数へ!導関数の考え方をマスター】
【微分法3|多項式の導関数を求める公式と導関数の基本性質】
【微分法4|y=f(x)のグラフの描き方は4ステップでOK】
【微分法5|導関数から極大値,極小値を求める方法】
【微分法6|関数の最大値,最小値は微分を使うのが鉄板!】
【微分法7|グラフを使った[実数解の個数]と[不等式の証明]】←この記事
方程式の実数解の個数
次の公式は当たり前にしておきましょう.
関数$f(x)$, $g(x)$に対して,
- $xy$平面上のグラフ$y=f(x)$, $y=g(x)$の共有点の個数
- 方程式$f(x)=g(x)$の実数解の個数
は等しい.
$x$を決めれば$f(x)$, $g(x)$は共に1つに決まるので,
- $\alpha$がグラフ$y=f(x)$, $y=g(x)$の共有点の$x$座標
- $\alpha$が方程式$f(x)=g(x)$の実数解
が同値であることを示せばよいですね.
[1] $\alpha$がグラフ$y=f(x)$, $y=g(x)$の共有点の$x$座標のとき,$f(\alpha)=g(\alpha)$をみたす.
すなわち,方程式$f(x)=g(x)$は$x=\alpha$を代入して成り立つから,$\alpha$は方程式$f(x)=g(x)$の実数解である.
[2] $\alpha$が方程式$f(x)=g(x)$の実数解のとき,$f(\alpha)=g(\alpha)$が成り立つ.
すなわち,$y=f(x)$のグラフと$y=g(x)$のグラフにおいて$x=\alpha$のときの$y$座標が等しいから,$\alpha$は$y=f(x)$, $y=g(x)$の共有点の$x$座標である.
この定理から$y=f(x)$のグラフと$y=g(x)$のグラフの共有点と,方程式$f(x)=g(x)$の実数解は1つ1つ対応していることが分かりますね.
この定理を用いると,方程式の解の個数が求められます.
例1
方程式$x^3-3x^2-2=0$の実数解の個数を求めよ.
$f(x)=x^3-3x^2-2$とします.$f(x)$の導関数$f'(x)$は
なので,方程式$f'(x)=0$を解くと$x=0,2$です.また,
なので,$f(x)$の増減表は
$\begin{array}{c||c|c|c|c|c}
x & \dots & 0 & \dots & 2 & \dots \\ \hline
f'(x) & + & 0 & – & 0 & + \\ \hline
f(x) & \nearrow & -2 & \searrow& -6 & \nearrow
\end{array}$
となるので,$y=f(x)$のグラフは下図のようになります.
これより,$y=f(x)$のグラフと$y=0$ ($x$軸)のグラフの共有点の個数は1個なので,方程式$x^3-3x^2-2=0$の実数解は1個ですね.
先ほどの定理から
- $y=x^3-3x^2-2$と$y=0$の共有点の個数
- 方程式$x^3-3x^2-2=0$の解の個数
が等しいことを使ったわけですね.
なお,慣れてくれば$y=f(x)$のグラフを書かなくても,増減表から方程式$f(x)=0$の実数解の個数を求められるようになります.
例2
実数$k$に対して,方程式$x^3-3x^2-2=k$の実数解の個数を求めよ.
例1と異なる点は右辺が0でなく$k$となっているので,このときは
- $y=x^3-3x^2-2$と$y=k$の共有点の個数
- 方程式$x^3-3x^2-2=k$の解の個数
が等しいことを使えば良いですね.
$f(x)=x^3-3x^2-2$とすると,$y=f(x)$のグラフは例1と同じものになります.
よって,$xy$平面上の$y=f(x)$のグラフと$y=k$のグラフの共有点の個数を考えて,方程式$x^3-3x^2-2=k$をみたす解は
- $a<-6$, $-2<a$のとき,1個
- $a=-6,-2$のとき,2個
- $-6<a<-2$のとき,3個
となります.
このように,$k$の値によって交点の個数は変わるので,場合分けをすることになりますね.
不等式の証明
不等式の証明は,増減表(グラフ)を描くことで解決することは多いです.
不等式$3x^4-2x^3-3x^2+2\geqq0$が成り立つことを示せ.
$f(x)=3x^4-2x^3-3x^2+2$とします.$f(x)$の導関数$f'(x)$は
なので,方程式$f'(x)=0$を解くと$x=-\dfrac{1}{2},0,1$となります.また,
なので,増減表は
$\begin{array}{c||c|c|c|c|c|c|c}
x & \dots &-\frac{1}{2} & \dots & 0 & \dots & 1 & \dots \\ \hline
f'(x) & – & 0 & + & 0 & – & 0 & + \\ \hline
f(x) & \searrow &\frac{27}{16} & \nearrow & 2 & \searrow & 0 & \nearrow
\end{array}$
となります.よって,任意の実数$x$に対して不等式$3x^4-2x^3-3x^2+2\geqq0$が成り立ちますね.
増減表からグラフを描くと,下図のようになります.
確かに,グラフを描いても常に$y=f(x)$は0以上となることが見てとれますね.