$xy$平面上に$y=f(x)$のグラフを描くときの最も素朴な方法は,$y=f(x)$の$x$に具体的な値を代入していき通る点を実際にとっていく方法です.
このように,通る点を$xy$平面上に書き込むことをプロットといい,中学校で一次関数や二次関数のグラフを学ぶ際にも最初にプロットで概形を考えるように教わります.
しかし,どんなにプロットする点を細かくしても,「大体こんなグラフやなあ」と分かってはくるものの,プロットしていない部分でどうなっているかの数学的な保証にはなっていません.
このように考えたとき,関数$y=f(x)$が
- 増加しているのか
- 減少しているのか
が分かれば,少なくともグラフが右上がりか右下がりかが分かるので,ある程度概形をつかめたと言ってよいでしょう.
この記事では,$y=f(x)$のグラフの描き方を4ステップに分けて説明します.
一連の記事はこちら
【微分法1|グラフの接線はどう考える?[微分係数]を理解する】
【微分法2|微分係数から導関数へ!導関数の考え方をマスター】
【微分法3|多項式の導関数を求める公式と導関数の基本性質】
【微分法4|$y=f(x)$のグラフの描き方は4ステップでOK】←この記事
【微分法5|導関数から極大値,極小値を求める方法】
【微分法6|関数の最大値,最小値は微分を使うのが鉄板!】
【微分法7|グラフを使った[実数解の個数]と[不等式の証明]】
関数の増減
まずは関数の増減をどのように考えればよいかを説明します.
単調増加と単調減少
まずは
- 単調増加
- 単調減少
という用語を定義しましょう.
関数$f(x)$に対して,$a<b\Ra f(a)<f(b)$が成り立つとき$f(x)$は単調増加であるという.また,$a<b\Ra f(a)>f(b)$が成り立つとき$f(x)$は単調減少であるという.
単調増加と単調減少を併せて単調という.
言い換えると,
- 大きいものを代入するほど大きい値になる関数$f(x)$を単調増加
- 大きいものを代入するほど小さい値になる関数$f(x)$を単調減少
というわけですね.さらに別の言い方をすれば,
- $y=f(x)$のグラフが右上がりなら単調増加
- $y=f(x)$のグラフが右下がりなら単調減少
ということになりますね.
以下の関数$f(x)$の増減を調べよ.
- $f(x)=3x+2$
- $f(x)=-2x^3+3$
- $f(x)=x^2$
- $f(x)=3$
(1) $f(x)=3x+2$より,$a<b$なら
だから$f(a)<f(b)$となるので,$f(x)$は単調増加.
(2) $a<b$なら$a^3<b^3$だから,$-2a^3>-2b^3$である(負の数をかけると不等号が逆転する).よって,$f(x)=-2x^3+3$より
だから$f(a)>f(b)$となるので,$f(x)$は単調減少である.
(3) $a<b\leqq0$なら$a^2>b^2$なので,
だから$f(a)>f(b)$となるので,$f(x)$は$x\leqq0$で単調減少.
また,$0\leqq a<b$なら$a^2<b^2$なので,
だから$f(a)<f(b)$となるので,$f(x)$は$x\geqq0$で単調増加.
(4) $a<b$であっても,$f(a)=f(b)$だから単調増加でも単調減少でもない.
(3)のように部分的に単調増加,単調減少であるときにもこの言葉を用います.
また,(4)の定数関数のように,「平ら」な関数は単調増加でも単調減少でもありません.
微分係数と関数の増減
微分係数$f'(a)$は「$y=f(x)$の点$(a,f(a))$での接線の傾き」のことでしたから
- $f'(a)>0$とは「$y=f(x)$の点$(a,f(a))$での接線の傾きが正」
- $f'(a)<0$とは「$y=f(x)$の点$(a,f(a))$での接線の傾きが負」
ということになります.
関数がどこで単調増加で,どこで単調減少であるかが分かれば,$y=f(x)$グラフが右上がりなのか右下がりなのかが分かり,グラフの概形が分かります.
このことから以下のように関数の増減が分かりますね.
[関数の増減] 関数$f(x)$,実数$a$に対して,微分係数$f'(a)$が存在するとする.このとき,
- $f'(a)>0$なら$x=a$で関数$f(x)$は単調増加する
- $f'(a)<0$なら$x=a$で関数$f(x)$は単調減少する
この[関数の増減]を証明するためには数学IIIで学ぶ[平均値の定理]が必要なのでここでは証明しません.
関数$f(x)$の増減を調べるためには,導関数$f'(x)$の正負を調べればよい.
$y=f(x)$のグラフの描き方
さて,関数の増減が微分することで得られることが分かったので,$y=f(x)$のグラフの描き方を考えます.
ステップとしては
- 方程式$f'(x)=0$を解く
- $f'(x)=0$の解の値を$f(x)$に代入した値を計算する
- 増減表を書く
- 増減表をもとにグラフを描く
の4ステップです.なお,「増減表」については,以下の具体例の中で説明します.
次の関数$f(x)$に対して,$f'(x)$を求めて$f(x)$の増減を調べ,$y=f(x)$のグラフを描け.
- $f(x)=x^2-1$
- $f(x)=\dfrac{1}{4}(x^3+3x^2-9x-7)$
- $f(x)=-x^3+3x^2-3x+3$
例1
$f(x)=x^2-1$の導関数は$f'(x)=2x$なので,方程式$f'(x)=0$を解くと$x=0$です.また
です.ここで,
- $x<0$のときは$f'(x)<0$だから$f(x)$は増加
- $x>0$のときは$f'(x)>0$だから$f(x)$は減少
なので,$f(x)$の増減を表で表すと
となります.すなわち,$f(x)$は
- $x\leqq0$で単調減少
- $0\leqq x$で単調増加
ですね.確かに$y=f(x)$は原点を頂点とする下に凸な放物線ですから正しいですね.
さて,この解答の表のように「$f(x)$の増減を表した表」を増減表とよびます.
増減表が書けると,それに従ってグラフを描くことができますね.増減表の基本的な形式は上のように
- $x$
- $f'(x)$
- $f(x)$
の順に上から書いていくことが多いです.この増減表のフォーマットは自然に手が動くくらいに慣れておいてください.
例2
$f(x)=\dfrac{1}{4}(x^3+3x^2-9x-7)$の導関数は
なので,方程式$f'(x)=0$は$x=-3,1$と解けます.また,
だから,$f(x)$の増減表は
となります.すなわち,$f(x)$は
- $x\leqq-3$で単調増加
- $-3\leqq x\leqq1$で単調減少
- $1\leqq x$で単調増加
ですね.増減表から,$y=f(x)$のグラフは以下のようになります.
例3
$f(x)=-x^3+3x^2-3x+3$の導関数は
なので,方程式$f'(x)=0$は$x=1$と解けます.また,
だから,$f(x)$の増減表は
となります.すなわち,$f(x)$は単調減少ですね.
したがって,$y=f(x)$のグラフは以下のようになります.
例3のように導関数$f'(x)$が0にタッチして引き返すような場合には,$f'(x)=0$となる$x$で入れ替わりません.
このように,あくまで$f'(x)=0$となる$x$は「増加と減少が入れ替わりうる$x$」であって,必ずしも入れ替わるとは限らないことに注意してください.
次の記事では,関数の最大値・最小値の候補である極大値・極小値について説明します.
極大値は最大値の候補となるもの,極小値は最小値の候補となるもので,これらは導関数を考えることによって求めることができます.