この記事では次の問題を考えます.
$\tri{ABC}$において,辺$\mrm{AB}$の中点を$\mrm{D}$,辺$\mrm{AC}$を$2:1$に内分する点を$\mrm{E}$とし,線分$\mrm{BE}$,$\mrm{CD}$の交点を$\mrm{F}$とする.
このとき,$\Ve{AF}$を$\Ve{AB}$と$\Ve{AC}$を用いて表せ.
この問題は$\Ve{AB}$と$\Ve{AC}$が一次独立であることを用いて解くベクトルの基本問題としてよく知られています.
この一次独立性を用いた基本の解法を知っておくことは大切で,この一次独立性を用いた解法については以下の記事で説明しています.
しかし,この問題はベクトルを用いないで解く便利な考え方も知られており,ぜひ使えるようになっておきたいところです.
この記事では,この問題の別解として
- メネラウスの定理を用いた解法
- 面積比を用いた解法
を紹介します.
メネラウスの定理を用いた解法
メネラウスの定理を用いた解法です.
メネラウスの定理
次の定理をメネラウスの定理といいますね.
[メネラウスの定理] $\tri{ABC}$と直線$\ell$について,$\ell$は$\tri{ABC}$の頂点を通らず,どの辺とも平行でないとする.また,直線$\mrm{AB}$, $\mrm{BC}$, $\mrm{CA}$と直線$\ell$の交点をそれぞれ$\mrm{R}$, $\mrm{P}$, $\mrm{Q}$とする.
このとき,等式
が成り立つ.
このメネラウスの定理で最初の用意するものは
- 三角形$\tri{ABC}$
- 直線$\ell$
の2つですね.
そのため,答案でメネラウスの定理を用いる場合は,どの三角形とどの直線についてメネラウスの定理を適用するのかを明記しておくことが大切です.
解答
以下がメネラウスの定理を用いた解法です.
$\tri{ABE}$と直線$\mrm{CD}$に関してメネラウスの定理を用いる.
$\dfrac{\mrm{DB}}{\mrm{AD}}=\dfrac{1}{1}$と$\dfrac{\mrm{CA}}{\mrm{EC}}=\dfrac{3}{1}=3$より,
だから,点$\mrm{F}$は線分$\mrm{BE}$を$3:1$に内分する.
$\Ve{AE}=\dfrac{2}{3}\Ve{AC}$だから,内分公式から
となる.
比$\mrm{FE}:\mrm{BF}$が分かれば,内分の公式から$\Ve{AF}$が得られるというアイデアですね.
面積比を用いた解法
中学受験ではベクトルもチェバの定理,メネラウスの定理も使えないので,中学受験組は以下の面積比を用いた解法を知っていることも多いようです.
辺の比と面積比
以下は基本的ですが,辺の比と面積比を結びつける強力な定理ですね.
$\tri{ABC}$と,$\tri{ABC}$内部の点$\mrm{P}$を考え,直線$\mrm{AP}$と辺$\mrm{BC}$の交点を$\mrm{Q}$とする.
このとき,等式
が成り立つ.
この定理はチェバの定理から簡単に導かれます.
解答
以下が面積比を用いた解法です.
直線$\mrm{AF}$と直線$\mrm{BC}$の交点を$\mrm{G}$とする.
$\mrm{AE}:\mrm{EC}=2:1$と$\mrm{AD}:\mrm{DB}=1:1$から,それぞれ面積比$\tri{BFA}:\tri{BFC}=2:1$と$\tri{CFA}:\tri{CFB}=1:1$を得る.
よって,$\tri{BFA}:\tri{BFC}:\tri{CFA}=2:1:1$である.
これより,$\tri{ABC}:\tri{FBC}=4:1$なので,$\mrm{AG}:\mrm{FG}=4:1$である.
また,$\tri{BFA}:\tri{CFA}=2:1$なので,$\mrm{BG}:\mrm{GC}=2:1$だから内分公式から$\Ve{AG}=\dfrac{\Ve{AB}+2\Ve{AC}}{3}$である.
よって,
となる.
$\Ve{AF}=\dfrac{\mrm{AF}}{\mrm{AG}}\Ve{AG}$なので,$\dfrac{\mrm{AF}}{\mrm{AG}}$を求め,$\Ve{AG}$を$\Ve{AB}$と$\Ve{AC}$で表すことができれば,$\Ve{AF}$が得られるというアイデアですね.
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