三角比7
余弦定理は三平方の定理の拡張!

三角比
三角比

三角形に関する三角比の定理として重要なものに前回の記事で説明した正弦定理があります.

この記事では正弦定理以上に重要といってもよい余弦定理を説明します.

三平方の定理は斜辺の長さが$a$で他の2辺の長さが$b$, $c$の直角三角形

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に対して

    \begin{align*}a^2=b^2+c^2\end{align*}

が成り立つという定理ですが,直角三角形でない場合にも成り立つように拡張された定理が余弦定理です.

この記事では

  • 余弦定理とは?
  • 余弦定理の具体例
  • 余弦定理の証明
  • もうひとつの余弦定理

を順に解説します.

余弦定理

余弦定理の説明のために,まずは三平方の定理を確認しておきましょう.

[三平方の定理] $\ang{A}=90^{\circ}$の$\tri{ABC}$について,$a=\mrm{BC}$, $b=\mrm{CA}$, $c=\mrm{AB}$とする.

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このとき,等式

    \begin{align*}a^{2}=b^{2}+c^{2}\end{align*}

が成り立つ.

この三平方の定理で$\ang{A}$が$90^\circ$でない場合にどうなるかを述べた定理が余弦定理で次のようになります.

[余弦定理] $\tri{ABC}$について,$a=\mrm{BC}$, $b=\mrm{CA}$, $c=\mrm{AB}$とし,$\theta=\ang{A}$とおく.

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このとき,等式

    \begin{align*}a^{2}=b^{2}+c^{2}-2bc\cos{\theta}\end{align*}

が成り立つ.

$\theta=90^\circ$のときは$\cos{\theta}=0$となって三平方の定理が導かれるので,確かに余弦定理が三平方の定理の拡張になっていることが分かりますね.

言い換えれば,$\ang{A}$が$90^\circ$から$\theta$に変わると,三平方の定理で成り立つ等式が$-2bc\cos{\theta}$分だけズレるということになっているわけですね.

ベクトルを学ぶと内積とも関連付けて考えることができて,更に覚えやすくなります.

余弦定理の具体例

余弦定理は3辺の長さと1つの内角の大きさが絡むときに使うことが多いです.

このことを具体例から考えてみましょう.

例1

$\mrm{AB}=2$, $\mrm{BC}=3$, $\ang{B}=120^\circ$の$\tri{ABC}$に対して,辺$\mrm{CA}$の長さを求めよ.

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余弦定理より,

    \begin{align*} &\mrm{CA}^2=\mrm{AB}^2+\mrm{BC}^2-2\mrm{AB}\times \mrm{BC}\times\cos{\ang{B}} \\\iff& \mrm{CA}^2=4+9-2\cdot2\cdot3\cdot\cos{120^\circ} \\\iff& \mrm{CA}^2=19 \iff \mrm{CA}=\sqrt{19} \end{align*}

である.ただし,最後の同値$\iff$では$\mrm{CA}>0$であることに注意.

例2

$\mrm{AB}=3$, $\mrm{BC}=\sqrt{7}$, $\mrm{CA}=2$の$\tri{ABC}$に対して,$\ang{A}$の大きさを求めよ.

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余弦定理より,

    \begin{align*} &\mrm{BC}^2=\mrm{AB}^2+\mrm{CA}^2-2\mrm{AB}\times \mrm{CA}\times\cos{\ang{A}} \\\iff& 7=9+4-2\cdot2\cdot3\cdot\cos{\ang{A}} \\\iff& 12\cos{\ang{A}}=6 \iff \cos{\ang{A}}=\frac{1}{2} \\\iff& \ang{A}=60^\circ \end{align*}

である.

余弦定理の証明

それでは余弦定理$a^{2}=b^{2}+c^{2}-2bc\cos{\theta}$は

  • $\ang{A}$と$\ang{B}$がともに直角または鋭角の場合
  • $\ang{A}$が鈍角の場合
  • $\ang{B}$が鈍角の場合

に分けて証明することができます.

[パターン1] $\ang{A}$と$\ang{B}$がともに直角または鋭角の場合.頂点$\mrm{C}$から辺$\mrm{AB}$に下ろした垂線の足を$\mrm{H}$とする.

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$\tri{HBC}$において,

  • $\mrm{AH}=b\cos{\theta}$
  • $\mrm{CH}=b\sin{\theta}$

である.よって,$\tri{ABC}$で三平方の定理より,

    \begin{align*} a^2 =&\mrm{BC}^2 =\mrm{CH}^2+\mrm{BH}^2 \\=&\mrm{CH}^2+(\mrm{AB}-\mrm{AH})^2 \\=&(b\sin{\theta})^2+(c-b\cos{\theta})^2 \\=&b^2\sin^2{\theta}+(c^2-2bc\cos{\theta}+b^2\cos^2{\theta}) \\=&b^2(\sin^2{\theta}+\cos^2{\theta})+c^2-2bc\cos{\theta} \\=&b^2+c^2-2bc\cos{\theta} \end{align*}

となって,余弦定理が従う.

[パターン2] $\ang{A}$が鈍角の場合.頂点$\mrm{C}$から直線$\mrm{AB}$に下ろした垂線の足を$\mrm{H}$とする.

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$\tri{HCA}$において,

  • $\mrm{AH}=\mrm{AC}\cos{(180^\circ-\theta)}=-b\cos{\theta}$
  • $\mrm{CH}=\mrm{AC}\sin{(180^\circ-\theta)}=b\sin{\theta}$

である.よって,$\tri{AHC}$で三平方の定理より,

    \begin{align*} a^2 =&\mrm{BH}^2+\mrm{CH}^2 =(\mrm{AB}+\mrm{AH})^2+\mrm{CH}^2 \\=&(c-b\cos{\theta})^2+(b\sin{\theta})^2 \\=&(c^2-2bc\cos{\theta}+b^2\cos^2{\theta})+b^2\sin^2{\theta} \\=&b^2(\sin^2{\theta}+\cos^2{\theta})+c^2-2bc\cos{\theta} \\=&b^2+c^2-2bc\cos{\theta} \end{align*}

となって,余弦定理が従う.

[パターン3] $\ang{B}$が鈍角の場合.頂点$\mrm{C}$から直線$\mrm{AB}$に下ろした垂線の足を$\mrm{H}$とする.

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$\tri{HCA}$において,

  • $\mrm{AH}=\mrm{AC}\cos{\theta}=b\cos{\theta}$
  • $\mrm{CH}=\mrm{AC}\sin{\theta}=b\sin{\theta}$

である.よって,$\tri{BHC}$で三平方の定理より,

    \begin{align*} a^2 =&\mrm{BH}^2+\mrm{CH}^2 =(\mrm{AH}-\mrm{AB})^2+\mrm{CH}^2 \\=&(b\cos{\theta}-c)^2+(b\sin{\theta})^2 \\=&(b^2\cos^2{\theta}-2bc\cos{\theta}+c^2)+b^2\sin^2{\theta} \\=&b^2(\cos^2{\theta}+\sin^2{\theta})+c^2-2bc\cos{\theta} \\=&b^2+c^2-2bc\cos{\theta} \end{align*}

となって,余弦定理が従う.

パターン2の途中で用いた$(180^\circ-\theta)$型の変換公式については以下の記事を参照してください.

三角比5
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(180°-θ)型のsin(180°-θ), cos(180°-θ), tan(180°-θ)はいずれもsinθ, cosθ, tanθで表すことができます.この記事では,これらの公式が図から一瞬で導けることを説明し,応用として三角形の面積公式も紹介します.

もうひとつの余弦定理

実は「余弦定理」と呼ばれる定理は2つあり,以上で扱ってきた余弦定理は第2余弦定理と言います.単に「余弦定理」といった場合には以上で扱った第2余弦定理を指すことがほとんどです.

一方の余弦定理は第1余弦定理と呼ばれます.

[第1余弦定理] $\tri{ABC}$について,$a=\mrm{BC}$, $b=\mrm{CA}$, $c=\mrm{AB}$とする.

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このとき,等式

    \begin{align*}c=b\cos{\ang{A}}+a\cos{\ang{B}}\end{align*}

が成り立つ.

$\ang{A}$と$\ang{B}$がともに鋭角の場合には,頂点$\mrm{C}$から辺$\mrm{AB}$に下ろした垂線を$\mrm{H}$とすれば,

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$\mrm{AB}=\mrm{AH}+\mrm{BH}$と

  • $\mrm{AH}=b\cos{\ang{A}}$
  • $\mrm{BH}=a\cos{\ang{B}}$

から,すぐに第1余弦定理$c=b\cos{\ang{A}}+a\cos{\ang{B}}$が成り立つことが分かりますね.

また,$\ang{A}$が直角または鈍角の場合には,頂点$\mrm{C}$から辺$\mrm{AB}$に下ろした垂線を$\mrm{H}$とすれば,

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$\mrm{AB}=\mrm{BH}-\mrm{AH}$と

  • $\mrm{AH}=b\cos{(180^\circ-\ang{A})}=-b\cos{\ang{A}}$
  • $\mrm{BH}=a\cos{\ang{B}}$

から,この場合もすぐに第1余弦定理$c=b\cos{\ang{A}}+a\cos{\ang{B}}$が成り立つことが分かりますね.

また,$\mrm{A}$と$\mrm{B}$は対称なので,$\ang{B}$が鈍角の場合にも同様に成り立ちます.

三角関数

以上で数学Iの「三角比」の分野の基本事項は説明し終えました.

数学IIになると,三角比は「三角関数」と呼ばれて非常に重要な道具となります.

次の記事から三角関数の説明に移ります.

管理人

プロフィール

山本やまもと拓人たくと

元予備校講師.講師として駆け出しの頃から予備校の生徒アンケートで抜群の成績を残し,通常の8倍の報酬アップを提示されるなど頭角を表す.

現在は社会人向け数学教室で講師を務める.飛び級の首席合格で大学院に入学しそのまま首席修了するなど数学の深い知識をもち,本質をふまえた分かりやすい授業に定評がある.専門は非線形偏微分方程式論.大学数学系YouTuberとしても活動中.

趣味は数学,ピアノ,甘いもの食べ歩き.

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