まずは三角比に関する次の問題を考えましょう.
$\sin{155^{\circ}}-\sin{25^{\circ}}$の値を求めよ.
この問題では三角比$\sin{155^{\circ}}$, $\sin{25^{\circ}}$の角度が$155^\circ$と$25^\circ$で異なっているので,これらを揃えるところから始めたいですね.
実際,この問題で三角比の$(180^\circ-\theta)$型の変換公式を用いると,三角比の角度を揃えることができて値を求めることができます.
三角比の$(90^\circ-\theta)$型の変換公式を学んだときと考え方は似ていますね.
この記事では
- 三角比の$(180^\circ-\theta)$型の変換公式
- $180^\circ$までの有名角の三角比
- $\sin$を用いた三角形の面積公式
を順に説明します.
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三角比の$(180^\circ-\theta)$型の変換公式
冒頭の具体例を単位円を用いた三角比の定義に基づいてときましょう.
そののち$(180^{\circ}-\theta)$型の三角比の変換公式を紹介し,もう少し具体例を考えます.
具体例1($\sin$)
(再掲)$\sin{145^\circ}-\sin{35^\circ}$の値を求めよ.
この問題のように三角比の角度が統一されていない場合には,角度を揃えて計算できるようにしたいところです.
$145^\circ+35^\circ=180^\circ$なので,$xy$平面上の単位円を用いた三角比の定義から$\sin{145^\circ}=\sin{35^\circ}$である.
よって,$\sin{145^\circ}-\sin{35^\circ}=0$となる.
このように,図を見れば$\sin{145^\circ}=\sin{35^\circ}$は一瞬で分かりますね.
$(180^\circ-\theta)$型の変換公式とその証明
いまの例のように,図から三角比の$(180^\circ-\theta)$型の変換公式が簡単に得られます.
$0\leqq\theta\leqq180^\circ$なる実数$\theta$について,
の3つの関係式が成り立つ.
三角比$\sin{\theta}$, $\cos{\theta}$の定義から$xy$平面上の2点
は$y$軸対称である.
よって,2点$\mrm{P}$, $\mrm{Q}$の$x$座標は符号が逆で,$y$座標は等しいから
が成り立つ.また,$\tan{\theta}$は直線$\mrm{OP}$の傾きに等しく,$\tan{(180^\circ-\theta)}$は直線$\mrm{OQ}$の傾きに等しい.
これらの傾きの絶対値は等しく異符号だから,
が成り立つ.
$\tan$の証明は定義$\tan{\theta}=\dfrac{\sin{\theta}}{\cos{\theta}}$と併せて
としても証明できますね.
具体例2($\sin$と$\cos$)
$\sin^2{25^{\circ}}+\cos^2{155^{\circ}}$の値を求めよ.
この問題も$25^\circ+155^\circ=180^\circ$なので,$(180^\circ-\theta)$型の変換公式を使えば角度が揃えられますね.
一般に$\cos^2{\theta}=(\cos{\theta})^2$なので,途中の変形では
であることに注意してください.
具体例3($\sin$と$\cos$と$\tan$)
$\dfrac{1}{\tan^{2}{34^\circ}}-\dfrac{1}{\sin{146^\circ}\sin{34^\circ}}$の値を求めよ.
やはりこの問題も$34^\circ+146^\circ=180^\circ$なので,$(180^\circ-\theta)$型の変換公式を使えば角度が揃えられますね.
$(180^{\circ}-\theta)$型の変換公式より
なので,$\sin$と$\tan$の関係式$1+\dfrac{1}{\tan^{2}{\theta}}=\dfrac{1}{\sin^{2}{\theta}}$と併せて
を得る.
${180^\circ}$までの有名角の三角比
$0^\circ<\theta<90^\circ$の場合の有名角の三角比($\theta=30^\circ,45^\circ,60^\circ$の場合の$\sin{\theta}$, $\cos{\theta}$, $\tan{\theta}$)は以下のようになるのでした.
$\theta$ | $\sin{\theta}$ | $\cos{\theta}$ | $\tan{\theta}$ |
---|---|---|---|
$30^\circ$ | $\dfrac{1}{2}$ | $\dfrac{\sqrt{3}}{2}$ | $\dfrac{1}{\sqrt{3}}$ |
$45^\circ$ | $\dfrac{\sqrt{2}}{2}$ | $\dfrac{\sqrt{2}}{2}$ | $1$ |
$60^\circ$ | $\dfrac{\sqrt{3}}{2}$ | $\dfrac{1}{2}$ | $\sqrt{3}$ |
三角比$\sin{\theta}$, $\cos{\theta}$, $\tan{\theta}$を$0^\circ\leqq\theta\leqq180^\circ$で考えるようになったことから,加えて
の場合も有名角として整理しておきましょう.
$\theta=0^\circ,90^\circ$のとき
また,$\sin{\theta}$, $\cos{\theta}$, $\tan{\theta}$の定義から$\theta=0^\circ,90^\circ$の場合は下表のようになりますね.
$\theta$ | $\sin{\theta}$ | $\cos{\theta}$ | $\tan{\theta}$ |
---|---|---|---|
$0^\circ$ | $0$ | $1$ | $0$ |
$90^\circ$ | $1$ | $0$ | 定義されない |
この表を覚えるのは良い方法ではありません.というのは,そもそも覚えるのが大変ですし,忘れたときに手も足も出なくなります.
自分でこの表を書けるように,図から理解するようにしてください.
$\theta=120^\circ,135^\circ,150^\circ,180^\circ$のとき
$90^\circ<\theta\leqq180^\circ$の場合は,$0^\circ\leqq\theta<90^\circ$の場合の三角比をもとにして$(180^\circ-\theta)$型の公式から得られますね.
$\theta$ | $\sin{\theta}$ | $\cos{\theta}$ | $\tan{\theta}$ |
---|---|---|---|
$120^\circ$ | $\dfrac{\sqrt{3}}{2}$ | $-\dfrac{1}{2}$ | $-\sqrt{3}$ |
$135^\circ$ | $\dfrac{\sqrt{2}}{2}$ | $-\dfrac{\sqrt{2}}{2}$ | $-1$ |
$150^\circ$ | $\dfrac{1}{2}$ | $-\dfrac{\sqrt{3}}{2}$ | $\dfrac{1}{\sqrt{3}}$ |
$180^\circ$ | $0$ | $-1$ | $0$ |
この表も覚えるのではなく,例えば
のように図と$0^\circ<\theta<90^\circ$の場合の三角比から導けることが大切です.
$\theta=150^\circ$の図から直接$\sin{150^\circ}=\dfrac{1}{2}$, $\sin{150^\circ}=-\dfrac{\sqrt{3}}{2}$が見えるくらい慣れたいところです.
$\sin$を用いた三角形の面積公式
最後に三角形の面積を$\sin$を使って表す公式を紹介します.
$\tri{ABC}$について$\theta=\ang{A}$, $b=\mrm{CA}$, $c=\mrm{AB}$とすると,$\tri{ABC}$の面積は
である.
つまり,三角形の面積は
- 2辺の長さ
- その間の角の大きさ
が分かっていれば求められるわけですね.
頂点$\mrm{C}$から直線$\mrm{AB}$に下ろした垂線の足を$\mrm{H}$とする.
$\tri{ABC}$の底面を辺$\mrm{AB}$とすると,
なので,$\mrm{CH}=b\sin{\theta}$であることを示せばよい.
${0^\circ<\theta<90^\circ}$のときの証明
点$\mrm{H}$は半直線$\mrm{AB}$上にあるから,
が成り立つ.
$\theta=90^\circ$のときの証明
$\mrm{A}=\mrm{H}$だから,
が成り立つ.
${90^\circ<\theta<180^\circ}$のときの証明
点$\mrm{H}$は直線$\mrm{AB}$上の点$\mrm{A}$に関して$\mrm{B}$側と反対側にあるから,
が成り立つ.
さらに$(180^\circ-\theta)$型の変換公式と併せて
が成り立つ.
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