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電池と電気分解5|電池と電気分解の3つの違い

  
   

前の記事【電池と電気分解4|鉛蓄電池の仕組みと反応】の続きです.

前回の記事までで電池については大体説明しました.この記事では電気分解について書きます.

電気分解と電池の違いが曖昧な人は少なくないので,そういう人はしっかり区別して考えられるようになってください.

なお,「電気分解」を略して「電解」ということも多いので注意して下さい.

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そもそも電気分解とは

たとえば,炭酸水素ナトリウム\mathrm{NaHCO_3}を加熱すると,次の反応が起こります.

2\mathrm{NaHCO_3} \to \mathrm{Na_2CO_3} + \mathrm{H_2O} + \mathrm{CO_2}

これは加熱したことによるエネルギーで2\mathrm{NaHCO_3}\mathrm{Na_2CO_3}\mathrm{H_2O}\mathrm{CO_2}に分解されています.

つまり,熱分解ですね.

これは熱エネルギーによる分解ですが,ビリビリと電気を与えることで分解するものもあります.その反応を「電気分解」といいます.

電池と電気分解4

電気分解の反応では,たとえば塩化銅(II)水溶液\mathrm{CuCl_2}aqの電気分解がよく取り上げられます.

これは2本の炭素棒\mathrm{C}を塩化銅(II)水溶液\mathrm{CuCl_2}aqにボチャンと浸け,電気を流すことで起こります.

反応は右図の左の炭素棒で

2\mathrm{Cl^-} \to \mathrm{Cl_2} + 2\mathrm{e^-}

右の炭素棒で

\mathrm{Cu} + 2\mathrm{e^-} \to 2\mathrm{Cu}

の反応が起こります.この半反応式から分かるように,2\mathrm{Cl^-}は酸化され,\mathrm{Cu}は還元されています.

電気分解の仕組み

電池と電気分解5

電気分解は溶液に2本の炭素棒をボチャンと浸け,炭素棒を導線で繋いで電流を流すことで起こります.なお,この炭素棒は鉛筆の芯ような「黒鉛」です.

炭素棒ではない電極を用いることもありますが,いきなり書いてしまうとややこしくなるので,基本は炭素棒\mathrm{C}だと思ってください.炭素棒ではない電極については次の記事で書きます.

ここで言葉の定義ですが,電池の正極とつながっている方の炭素棒を「陽極」電池の負極とつながっている方の炭素棒を「陰極」といいます.

さて,そもそも電流とは電子\mathrm{e^-}の流れのことでした.

【参考記事:電池と電気分解1|電池の仕組みと電流の正体

さらに,「電流の向き」は「電子\mathrm{e^-}の流れの逆向き」で,正極は電子\mathrm{e^-}を受け取り,負極は電子\mathrm{e^-}を放出します.

ですから,「陽極」では電子を放出しますから酸化反応が起こり,「陰極」では電子を受け取りますから還元反応が起こります.

確かに上で挙げた塩化銅(II)水溶液\mathrm{CuCl_2}aqの電気分解も陽極で酸化反応,陰極で還元反応が起こっています.

なお,「何を分解したの?」という質問がたまにあるので答えておくと,硫酸銅(II)水溶液\mathrm{CuCl_2}aqを銅\mathrm{Cu}と塩素\mathrm{Cl}に分解しています.

電池と電気分解の3つの違い

さて,電気分解の説明が終わったので,本題に移ります.電池と電気分解には,大まかに次の3つの違いがあります.

  1. 「正極/負極」と「陽極/陰極」の違い
  2. 「自動的反応」と「受動的反応」の違い
  3. 「酸化」と「還元」の違い

1と3はリンクしているのですが,重要なので分けて書きました.

「正極/負極」と「陽極/陰極」の違い

塾生に「正極と陽極の違いは?」と聞くと,多くの生徒が答えられません.ですが,この「電池と電気分解」の一連の記事を読んでくださった人は分かることでしょう.

答えは,

正極は電池の電子を受け取る側で,陽極は電気分解で電子を放出する側

です.もう少し原理的に詳しく述べるなら,

正極は電池の電極の金属でイオン化傾向の小さい方で,陽極は電気分解の電極で電池の正極とつながっている方

です.分かりますね.「正極は電池で,陽極は電気分解」なのです.

もちろん,負極と陰極の違いも同様で

負極は電池の電極の金属でイオン化傾向の大きい方で,陰極は電気分解の電極で電池の負極とつながっている方

です.「負極は電池で,陰極は電気分解」なのです.

「自動的反応」と「受動的反応」の違い

電池はボチャンと溶液に浸けるものは異なる金属で,それらの金属のイオン化傾向の差を利用して酸化還元反応を引き起こして,電子を取り出す装置でした.

つまり,電池組み立てれば自然と電流が流れるのです.ですから,電池は「自動的反応」ということができます.

一方,電気分解は電極が炭素棒ですから,イオン化傾向の差なるものはありません.ですから,それ単体で反応は起こらないのです.

「自動的反応」の電池につなぐことで,反応が引き起こされるのです.ですから,電気分解は「受動的反応」ということができます.

電池が反応を起こす→電気分解の反応が引き起こされる

という順なのです.そもそも,「陽極/陰極」の定義が「正極/負極と繋がっている方」なのですから,先に正極/負極が定義されていることも分かりますね.

「酸化」と「還元」の違い

「正極は還元反応,陽極は酸化反応」です.正極と陽極で酸化還元が逆になっています.

「どっちがどっちか覚えられねえよ!」

という人は酸化還元反応の基本に立ち戻って考えれば簡単に分かります.

念のため復習すると,

  1. 電子\mathrm{e^-}を受け取る→還元反応,電子\mathrm{e^-}を放出する→酸化反応
  2. 電子\mathrm{e^-}は負極から放出され,正極で受け取る

でした.1については,簡単に言えば,「酸化」=「+になる」,「還元」=「-になる」だったことを思い出してください.

この2つのことから,「正極は還元反応,陽極は還元反応」と分かります.

「正極が還元で……」というのは覚えても良いですが,基本を理解していれば自分ですぐに分かることですから,繋げて理解するようにしてください.

また,同様に「負極は酸化反応,陰極は還元反応」であることにも注意してください.

表にすると次のようになりますね.

電池/電気分解 酸化/還元
正極 電池 還元
陽極 電気分解 酸化
負極 電池 酸化
陰極 電気分解 還元

次の記事【電池と電気分解6|陽極と陰極の反応4パターンを理解する】に続きます

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