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電池と電気分解3|ボルタ電池とダニエル電池

 
 

前の記事【電池と電気分解2|イオン化傾向と電池の仕組み】の続きです.

ボルタ電池は最も基本的な電池です.しかし,それゆえに「分極」が起こるという欠点も持ち合わせています.

一方,ダニエル電池は「分極」が起こらないように改良した電池で,ボルタ電池の改良版という位置付けになっています.

ボルタ電池もダニエル電池も非常に基本的で重要なので,確実に抑えてください.

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正極と負極

正極と負極の説明をしていなかったので,ここで説明しておきます.

電池は「酸化還元反応を利用して電子を取り出す装置」だと書きました.もう少し具体的に書くと,溶液Xに金属Aと金属Bをボチャンと浸け,導線でつなげば良いのでした.

さて,このとき電子が金属Aから導線を伝わって,金属Bへ移動しているとします.これにより,導線の中を電子が移動しているわけですから,電池が形成されたということになります.

「電流の向き」は「電子の移動方向と逆向き」でしたから,電流は金属Bから金属Aに流れていることになります.

このとき,金属Aと金属Bを「電極」といい,金属Bを「正極」,金属Aを「負極」といいます.

この電池は,溶液Xに金属A,金属Bを浸けただけで完成したので,次のように「電池式」で表します.

\textcircled{-} \ \mathrm{A\ |\ X\ |\ B}\ \textcircled{+}

このことを具体的な電池を挙げて話をします.

ボルタ電池

前の記事でも少し扱いましたが,ここでさらに詳しく説明します.

ボルタ電池の仕組み

電池2

ボルタ電池は亜鉛\mathrm{Zn}と銅\mathrm{Cu}をボチャッと希硫酸\mathrm{H_2SO_4}aqに浸けて,導線で亜鉛\mathrm{Zn}と銅\mathrm{Cu}を結んでやれば完成します.

図では導線の途中にオレンジ色の〇がありますが,これはたとえば豆電球だと思ってください.

\mathrm{Cu}と亜鉛\mathrm{Zn}をイオン化列での順を見てみると,\mathrm{Zn>Cu}となっていますね.つまり,亜鉛\mathrm{Zn}の方が陽イオンになりやすいので,ボルタ電池では亜鉛\mathrm{Zn}が陽イオンとなって溶液中へ溶け出します.

つまり,亜鉛\mathrm{Zn}側での反応は

\mathrm{Zn \to Zn^{2+} + 2e^-}

となっています.そして,そこで残った電子\mathrm{e^-}が導線通って銅\mathrm{Cu}側へやって行き,銅\mathrm{Cu}の表面で水素イオン\mathrm{H^+}と反応して水素\mathrm{H_2}が発生します.

つまり,銅\mathrm{Cu}側での反応は

\mathrm{2H^+ + 2e^- \to H_2}

となっています.このとき,\mathrm{Cu}は全く変化していないということに注意してください.

電子\mathrm{e^-}\mathrm{Zn}電極から\mathrm{Cu}電極へ流れているので,\mathrm{Cu}電極が正極\mathrm{Zn}電極が負極となっています.ですから,ボルタ電池を電池式で書けば,

\textcircled{-} \ \mathrm{Zn}\ |\ \mathrm{H_SO_4}aq\ |\ \mathrm{Cu}\ \textcircled{+}

となります.

ボルタ電池の問題点

当然,電池は使用すればするほど電圧は下がり弱くなっていきますが,ボルタ電池は理論的に考えられる以上に速く弱くなっていきます.

これはどういうことでしょうか?

この電池の電圧が急激に小さくなる現象を「電池の分極」といいますが,「電池の分極」の原因としては次の3つが考えられます.

  1. \mathrm{Cu}の表面に発生した水素\mathrm{H_2}が電子\mathrm{e^-}と水素イオン\mathrm{H^+}の反応を阻害する
  2. 水素\mathrm{H_2}が発生しすぎて逆反応\mathrm{H_2 \to 2H^+ +2 e^-}が起こってしまい,電子\mathrm{e^-}が逆流する
  3. 亜鉛\mathrm{Zn}付近に発生した亜鉛イオン\mathrm{Zn^{2+}}が濃くなりすぎて,亜鉛\mathrm{Zn}のイオン化が阻害される

適当な酸化剤を混ぜることで,発生した水素\mathrm{H_2}を酸化させて水\mathrm{H_2O}に変えてやることで,ボルタ電池の「電池の分極」はある程度防ぐことができるのですが詳しくは割愛します.

なお,「電池の分極」は物理の電磁気学の「分極」とはまったく別のものです.

ダニエル電池

ダニエル電池について説明します.

ダニエル電池の仕組み

電池3

ダニエル電池はボルタ電池の進化版ということができます.というのは,ダニエル電池はボルタ電池で問題だった分極が起こらないからです.

ダニエル電池は,素焼き版などの一部のイオンを透過させる板を中央に設置した容器を用意します.

片側に亜鉛\mathrm{Zn}を硫酸亜鉛水溶液\mathrm{ZnSO_4}aqに,他方に銅\mathrm{Cu}を硫酸銅水溶液\mathrm{CuSO_4}aqに浸けて,導線で亜鉛\mathrm{Zn}と銅\mathrm{Cu}を結べば完成します.

電極はボルタ電池と同じですから,ボルタ電池と同じく銅\mathrm{Cu}と亜鉛\mathrm{Zn}をイオン化列での順を見てみると,\mathrm{Zn>Cu}となっていますから,ダニエル電池では亜鉛\mathrm{Zn}が陽イオンとなって溶液中へ溶け出します.

つまり,亜鉛\mathrm{Zn}側での反応は

\mathrm{Zn \to Zn^{2+} + 2e^-}

となっています.そして,そこで残った電子\mathrm{e^-}が導線通って銅\mathrm{Cu}側へやって行き,銅\mathrm{Cu}側での反応は次のようになります.

\mathrm{Cu^{2+} + 2e^- \to Cu}

となっています.\mathrm{Cu}電極で銅\mathrm{Cu}が析出しているので,\mathrm{Cu}電極はどんどん太っていきます.

電子\mathrm{e^-}\mathrm{Zn}電極から\mathrm{Cu}電極へ流れているので,\mathrm{Cu}電極が正極\mathrm{Zn}電極が負極となっています.ですから,ダニエル電池を電池式で書けば,

\textcircled{-} \ \mathrm{Zn}\ |\ \mathrm{ZnSO_4}aq\ |\ \mathrm{CuSO_4}aq\ |\ \mathrm{Cu}\ \textcircled{+}

です.溶液が2種類あることに注意してください.

ボルタ電池からの改善点

ボルタ電池では「電池の分極」が起こるために,電池としてはあまり優秀ではないのでした.もう一度,ボルタ電池での「電池の分極」の原因を挙げると,

  1. \mathrm{Cu}の表面に発生した水素\mathrm{H_2}が電子\mathrm{e^-}と水素イオン\mathrm{H^+}の反応を阻害する
  2. 水素\mathrm{H_2}が発生しすぎて逆反応\mathrm{H_2 \to 2H^+ +2e^-}が起こってしまい,電子\mathrm{e^-}が逆流する
  3. 亜鉛\mathrm{Zn}付近に発生した亜鉛イオン\mathrm{Zn^{2+}}が濃くなりすぎて,亜鉛\mathrm{Zn}のイオン化が阻害される

と言うことでした.

水素が発生しない

ボルタ電池の正極\mathrm{Cu}で発生していた水素\mathrm{H_2}が,ダニエル電池では発生しなくなっています.

なぜ水素が発生しないのかというと,そもそも水素イオン\mathrm{H^+}が溶液中にほとんど存在しないからです.

ボルタ電池の溶液は希硫酸\mathrm{H_2SO_4}aqでしたから,溶液はバリバリの酸性です.つまり,溶液中にたくさん水素イオン\mathrm{H^+}が存在しているのです.

ですが,ダニエル電池の溶液中にはほとんど水素イオン\mathrm{H^+}が存在しないので,水素が発生せず分極も起こりにくくなっているのです.

これでボルタ電池の分極が起こる原因の1,2は改善されています.

溶液中は電気的に中性

溶液の基本として,「溶液は必ず電気的に中性である」というものがあります.つまり,一つの溶液の中にプラスイオンだけが多くあったり,マイナスイオンだけが多くあったりはしないのです.

ダニエル電池は,硫酸亜鉛水溶液\mathrm{ZnSO_4}aqと硫酸銅水溶液\mathrm{CuSO_4}aqが素焼き板によって分けられているのでした.

さて,反応が起こると,硫酸亜鉛水溶液\mathrm{ZnSO_4}aq中に\mathrm{Zn^{2+}}が生じるので,電気的に+に偏ってしまい,このままではマズイいわけです.

一方,硫酸銅水溶液\mathrm{CuSO_4}aq中から\mathrm{Cu^{2+}}がなくなるので,電気的に-に偏ってしまい,このままではマズいわけです.

ここで,素焼き版はイオンは通すという性質がポイントになります.

電池3

もう一度上と同じ図を載せます.

硫酸亜鉛水溶液\mathrm{ZnSO_4}aq+に偏りそうになると,素焼き版を通して亜鉛イオン\mathrm{Zn^{2+}}が硫酸銅水溶液\mathrm{CuSO_4}aqに流れ込みます.

一方,硫酸銅水溶液\mathrm{CuSO_4}aq-に偏りそうになると,素焼き版を通して硫酸イオン\mathrm{SO_4^{2-}}が硫酸亜鉛水溶液\mathrm{ZnSO_4}aqに流れ込みます.

このように,反応が進んでもイオンが移動することにより,各溶液は電気的に中性が保たれています.

このとき,\mathrm{Zn}電極から亜鉛イオン\mathrm{Zn^{2+}}が硫酸銅水溶液\mathrm{CuSO_4}aqへ流れていくので,ボルタ電池で分極が起こる原因の3が解消されているのです.

以上から,ボルタ電池の分極が起こる原因が解消され,ダニエル電池では分極がほとんど起こらなくなります.

次の記事【電池と電気分解4|鉛蓄電池の仕組みと反応】に続きます.

最後まで読んでいただきありがとうございました!

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