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論理と集合の基本3|必要条件と十分条件

  
   

論理と集合の基本2|ド・モルガンの法則】の続きです.

数学では「仮定」が何で,「結論」が何かということを意識するのは非常に重要です.これを間違えるとまったく意味のない議論になってしまい,すべてが破綻することもあります.

たとえば,「pであるとき,qを証明せよ.」という問いで,証明の中でqを使ってしまうという誤りがよくあります.これは「まだqが成り立つか分かっていないのに,qが成り立つ前提で話を進めてしまっている」というのが間違いです.

この記事では,論理関係の基本として,必要条件,十分条件について詳しく説明します.

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命題と条件

必要条件,十分条件について説明する前に,「命題」と「条件」の概念について整理しておきます.

しかし,この節はあまり深く考えるとよく分からなくなる恐れがあるので,ある程度読み飛ばして次の「必要条件と十分条件」の節に進んでしまっても構いません.

命題

「命題」という概念について説明しますが,私の持っている教科書には次のように書かれています.

文や式で表された事柄で,正しいか正しくないかが明確に決まるものを命題という.

少し曖昧な感じがする人はその感覚は正しいです.厳密に命題というものを定義するには「数理論理学」という数学を学ぶ必要があるので,詳しくはここでは触れません.

要は「彼女は人間である.」や「彼の身長は180cm以上ある.」などの,正しいか正しくないかが客観的に判断される事柄を「命題」といいます.

一方,「彼女は頭が良い.」や「彼は背が高い.」などの,判断する人の主観に依存する事柄は命題とは言いません.

また,命題が正しいときは「命題は『真』である.」といい,正しくないときは「命題は『偽』である.」といいます.「真」と「偽」を併せて「真偽」という言葉もよく使います.

たとえば,「1は整数である.」は真で,「2.5は整数である.」は偽です.また,「平行四辺形は四角形である.」は真で,「四角形は平行四辺形である.」は偽です.

このあたりの命題についても,あとで詳しく書きます.

条件

「条件」も命題と同様に厳密に定義することは難しいので,教科書に載っている説明を書きます.

文字xを含んだ文や式において,文字のとる値を変えると,真偽が変わるものがある.(中略)このような文字xを含んだ文や式を,xに関する条件という.

たとえば,「xは整数である.」や「xは3以上の奇数である.」は条件です.また,当然,文字はxに限る必要もなく,「Aは要素を2つ以上もつ集合である.」なども条件です.

「命題」はそれ自身が正しいか正しくないかが決まるものですが,たとえば「xは整数である.」という「条件」は,ただxが整数だといっているだけで,本質的に真偽を考えることはしません.

ですから,簡単には「命題」は真偽が決まるもの「条件」は真偽が決まるわけではないものといえます.高校数学のうちでは,このように考えておいても問題は起きないでしょう.

命題と条件

命題は条件pqを用いてpならば,qである」の形で書かれることが多くあります.

たとえば,条件pq

pxは4の倍数である」,
qxは偶数である」

と定めると,「pならば,qである」は

xが4の倍数ならば,xは2の倍数である」

ということになり,これは「真」の命題です.

また,条件pq

p「三角形Xは二等辺三角形である」,
q「三角形Xは正三角形である」

と定めると,「pならば,qである」は

「三角形Xが二等辺三角形ならば,Xは正三角形である」

ということになり,これは「偽」の命題です.

必要条件と十分条件

それではこの記事の本題の「必要条件」と「十分条件」について説明します.

[必要条件,十分条件] 条件pqに対し,命題「pならば,qである」を,

p\Rightarrow q

と書く.命題「p\Rightarrow q」が真であるとき,このときpは(qの)十分条件である」といい,qは(pの)必要条件である」という.

また,命題「p\Rightarrow q」と命題「q\Rightarrow p」がともに真であるとき,pは(qの)必要条件かつ十分条件であるが,このことをpは(qの)必要十分条件である」という.

また,pが(qの)必要十分条件であるとき,pqは同値である」という.

なお,pが(qの)必要十分条件なときは,qは(pの)必要十分条件でもあります.なので,「pqが同値である」というのと「qpが同値である」というのは同じことになります.

さて,すでに「命題の真偽」については少し説明しましたが,ここでもう一度触れておきます.

「命題『p\Rightarrow q』が真である」ということを丁寧に書けば次のようになります.

pが成り立っているとき,必ずqが成り立つ.

この「必ず」という部分が非常に重要です.

pが成り立っているとき,「必ず」qが成り立っていて初めて,「命題『p\Rightarrow q』は真である」と言えるのです.

逆に言えば,pが成り立っているのに,qが成り立たない場合が1つでもあれば,「命題『p\Rightarrow q』は偽である」ということになります.

また,p\rightarrow qのどちらが必要条件で,十分条件かということですが,これを高校生の時の私は次のように覚えました.

「矢」は先端の矢じりの部分がないと「矢」とは呼べない.よって「矢」は先端が必要.だから,「矢印\Rightarrow」の先が「必要条件」だ!

覚え方にはさまざまあると思いますが,自分の分かりやすいように覚えれば良いと思います.

本当は「必要条件」,「十分条件」の概念からこの名前に納得できるのが一番良いのですが,そこまで説明する余裕はこの記事にはないので,これについては省略します.

例1

次の命題pqはそれぞれ他方の必要条件か,十分条件か.

p;A君はX高校の生徒である,
q:A君は高校生である

[1] まず,命題「p\Rightarrow q」の真偽をみます.p「A君はX高校の生徒である」とするとき,q「A君は高校生である」は「必ず」正しいと言えるでしょうか?

X高校の生徒であるということはそもそも高校生ですから,命題「p\Rightarrow q」は真です.

したがって,「pは(qの)十分条件」となります.

[2] 次に,命題「q\Rightarrow p」の真偽をみます.q「A君は高校生である」とするとき,p「A君はX高校の生徒である」は「必ず」正しいと言えるでしょうか?

たとえば,A君はY高校の生徒かもしれませんし,Z高校の生徒かもしれませんから,pが必ず成り立つとは言えません.

したがって,「pは(qの)必要条件でない」となります.

以上をまとめて,

pは(qの)十分条件だが必要条件でない

となります.

また,「pqの十分条件である」ことと「qpの必要条件である」ことは同じであり,「pqの必要条件でない」ことと「qpの十分条件でない」ことは同じですから,

qは(pの)必要条件だが十分条件でない.

となります.

例2

次の命題pqは他方の必要条件か,十分条件か.

pxは偶数である,
qxは4の倍数である

[1] まず,命題「p\Rightarrow q」の真偽をみます.pxは偶数である」とするとき,qxは4の倍数である」は「必ず」正しいと言えるでしょうか?

たとえば,x=2は偶数なのでpは満たしています.しかし,x=6は4の倍数ではないのでqはみたしていません.

したがって,「pは十分条件でなく,qは必要条件でない」となります.

[2] 次に,命題「q\Rightarrow p」の真偽をみます.qは「xは4の倍数である」とするとき,pxは偶数である」は「必ず」正しいと言えるでしょうか?

xが4の倍数であるとき,xは整数mによってx=4mと表せます.このとき,2mは整数で,x=2\cdot(2m)と表せますからxは偶数です.

したがって,「pは必要条件,qは十分条件」となります.

以上をまとめて,

pは(qの)必要条件だが十分条件でない.
qは(pの)十分条件だが必要条件でない.

となります.

例3

次の命題pqは他方の必要条件か,十分条件か.

pxは6の倍数である」,
qxは2の倍数かつ3の倍数である」

[1] まず,命題「p\Rightarrow q」の真偽をみます.pxは6の倍数である」とするとき,qxは2の倍数かつ3の倍数である」は「必ず」正しいと言えるでしょうか?

xが6の倍数であるとき,xは整数mによってx=6mと表せます.このとき,2mは整数で,x=3\cdot(2m)と表せますから,xは3の倍数です.また,3mは整数で,x=2\cdot(3m)と表せますから,xは2の倍数です.

したがって,「pは十分条件,qは必要条件」となります.

[2] 次に,命題「q\Rightarrow p」の真偽をみます.qは「xは2の倍数かつ3の倍数である」とするとき,pxは6の倍数である」は「必ず」正しいと言えるでしょうか?

xが2の倍数であるとき,xは整数mによってx=2mと表せます.さらに,x=2mが3の倍数であれば,mが3の倍数でなければなりませんから,mは整数nによって3nと表せます.よって,x=6nと表せますからxは偶数です.

したがって,「pは必要条件,qは十分条件」となります.

以上をまとめて,

pは(qの)必要十分条件である.
qは(pの)必要十分条件である.

となります.

まとめ

問題集ではさらっと解答が書かれていることが多いのですが,必要条件,十分条件を調べるときは,いつでも上の各例の[1],[2]のようにp\Rightarrow qq\Rightarrow pの真偽をみなければなりません.

このとき,真だと思った場合は「証明」ができれば,偽だと思った場合「反例」を見つければ,それらの判断が正しいことが分かります.

自分で必要条件,十分条件を調べるときには上の例のように基本に立ち戻って考えることが重要です.

論理と集合の基本4|命題と集合の関係】に続きます.

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