剛体の運動1|物体の回転を考えるときは「力のモーメント」

剛体

物理では,対象の物体を

  • 「大きさがない物体(質点)」として考える場合
  • 「大きさがある物体(剛体)」として考える場合

の2つがあります.

例えば,小球が坂を転がったり,落下したりする場合には小球の大きさはないものとして「質点」として扱います.

一方,棒を壁に立てかけた場合などには,物体を「質点」として考えずに,物体は大きさをもつ「剛体」であるとして考える必要があります.

この記事では,「質点と剛体」を説明し,剛体の回転を表す「力のモーメント」を説明します.

質点と剛体

たとえば,実際にボールを投げ上げるとき,空気抵抗など様々な要因が絡まり合って運動をしますが,それらを全て加味して考えると複雑になりすぎるため,「空気抵抗は考えないものとする」などと状況を簡単にして考えます.

このように,物理(に限らず科学全般)では,状況を簡略化して考えやすくすることをよく行います.

物体の運動を考える際には,物体を考えるときに物体の大きさを考えずに「物体には大きさがない」とすることがよくあります.

このように,「質量があり,大きさがない物体」として考えられた物体を質点といいます.

質点はその名の通り「質量のある点」ですから,大きさを考えていないことは名前からも分かりますね.

一方,たとえば壁に立てかけた棒が倒れる時などは棒が回転します.この場合,物体を点とみなすと物体の回転を表現することができないため,物体を質点と考えるのは不適当です.

すなわち,回転を表すためには物体の大きさは無視できず,物体の大きさを無視することはできません.

このように,「質量があり,大きさもある物体」として考えられた物体を剛体といいます.

回転を考える際には,物体の大きさを無視できないので,剛体として考えることになる.

力のモーメント

物体の回転を考える際には力のモーメントを用います.

小学生風に言えば,「てこの原理」というのがありますが,あれはまさに「力のモーメント」を用いています.

力の作用線

力のモーメントの説明をするためには,力の作用線を理解しておきましょう.

[力の作用線] 力$\ve{F}$の「力の作用線」とは,$\ve{F}$の作用点を通り,$\ve{F}$に平行な直線のことをいう.

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すなわち,力$\ve{F}$の作用点を通り,$\ve{F}$に平行な直線を「力$\ve{F}$の作用線」というわけですね.

力のモーメント

それでは,力のモーメントの

  • 大きさ
  • 向き

を定義しましょう.

力のモーメントの大きさ

[力のモーメントの大きさ] 力$\ve{F}$と点Aを考える.点Aと力$\ve{F}$の作用線の距離を$\ell[\mrm{m}]$,力$\ve{F}$の大きさを$F[\mrm{N}]$とする.

このとき,点Aの周りの$\ve{F}$の力のモーメントの大きさを$F\ell[\mrm{Nm}]$と定める.

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力のモーメントの大きさ$F\ell[\mrm{Nm}]$について少し考えましょう.

力の大きさ$F$が大きいほど,物体を回転させる能力が大きいことは容易に想像できますが,$\ell[\mrm{m}]$がかけられていることについては,以下のように理解できます.

例えば,レバー式のドアノブを回すとき,回転軸の近くを持ってドアノブを回すよりも,回転軸から遠くを持ってドアノブを回す方が,軽くドアノブを回すことができますね.

これは,回転軸よりも遠いところに力を加えた方が,力のモーメントが大きいということに他なりません.

こう考えると,力のモーメントの大きさ$F\ell[\mrm{Nm}]$が,力$\ve{F}$の作用線と点Aの距離$\ell$は大きいほど力のモーメントが大きくなる,ということで直感に合いますね.

力のモーメントの向き

さて,回転には時計回りと反時計回りがありますから,これについて以下のように定義します.

[力のモーメントの向き] 力$\ve{F}$と点Aを考える.力$\ve{F}$が点Aに関して,

  • 物体を反時計回りに回転させるとき,力のモーメントの向きを
  • 物体を時計回りに回転させるとき,力のモーメントの向きを

と定める.

単に

  • 「反時計回り」の回転の向きを正
  • 「時計回り」の回転の向きを負

と名付けただけです.

以上から,「力のモーメント」は

  • 力の大きさと向き
  • 力の作用点
  • 任意の点

を指定して初めて考えることができますね.

重力加速度を$g[\mrm{m/s^2}]$とします.天秤の左側に$m[\mrm{kg}]$の物体を軸から$x[\mrm{m}]$の位置に吊るします.

このとき,物体にはたらく力は鉛直下向き,大きさ$mg[\mrm{N}]$の重力のみです.

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このときの,回転軸を中心とする重にはたらく重力による力のモーメントは

  • 重りによる重力の大きさは$mg[\mrm{N}]$で,作用線は鉛直方向なので回転軸との距離は$x[\mrm{m}]$です.よって,力のモーメントの大きさは$mgx[\mrm{Nm}]$となります.
  • 天秤は左が下がりますから,回転軸に関して反時計回りすることになります.よって,力のモーメントの向きは正です.

このように,力のモーメントを考えるときには,必ず「大きさ」と「向き」を考えるようにしてください.

管理人

プロフィール

山本やまもと 拓人たくと

元予備校講師.講師として駆け出しの頃から予備校の生徒アンケートで抜群の成績を残し,通常の8倍の報酬アップを提示されるなど頭角を表す.

飛び級・首席合格で大学院に入学しそのまま首席修了するなど数学の深い知識をもち,本質をふまえた分かりやすい授業に定評がある.

現在はオンライン家庭教師,社会人向け数学教室での講師としての教育活動とともに,京都大学で数学の研究も行っている.専門は非線形偏微分方程式論.大学数学系YouTuberとしても活動中.

趣味は数学,ピアノ,甘いもの食べ歩き.

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