前回の記事で扱った
- 等差数列の和
- 等比数列の和
は数列の和の中でも簡単に求まるものですが,あまり変な数列を考えると数列の和が簡単に計算できないことも多いですが,
- 1乗和$1+2+3+\dots+n$
- 2乗和$1^2+2^2+3^2+\dots+n^2$
- 3乗和$1^3+2^3+3^3+\dots+n^3$
は頻繁に現れる和で,計算することができます.
一連の記事はこちら
【数列の基本1|数列の基礎は[等差数列]と[等比数列]から!】
【数列の基本2|[等差数列の和の公式]と[等比数列の和の公式]】
【数列の基本3|数列の和を表すシグマ記号Σの定義と性質】
【数列の基本4|超重要な和の公式[1乗和/2乗和/3乗和]】←今の記事
【数列の基本5|階差数列の考え方は簡単!階差数列の公式】
【数列の基本6|部分分数分解を用いて計算する数列の和】
【数列の基本7|[等差×等比]型数列の和は引き算がポイント】
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1乗和,2乗和,3乗和の公式
以下が1乗和,2乗和,3乗和の公式です.
[公式] 次の和の公式が成り立つ.
なお,「1乗和」という表現は少し気持ち悪いですが,「2乗和」,「3乗和」との対応で「1乗和」という表現を使うことにします.
同じことですが,和の$\sum$を用いると
とも書けますね.
さて,後に述べるように1乗和はすぐに導けますが,2乗和,3乗和の公式は覚えてしまうことを推奨しています.
2乗和,3乗和の導出を知っておくことは大切ですが,2乗和と3乗和の導出は時間がかかってしまうため,公式を覚えておかないと時間のロスになってしまうのです.
とはいえ,3乗和は1乗和の2乗になっているので覚えやすいですね.
ですから,結局覚えるのはほとんど2乗和だけで良いことになりますね.
1乗和はすぐに導出できるが,2乗和と3乗和はすぐには導出できないので覚えておく.ただし,3乗和は「1乗和の2乗」で覚えやすいので,ほとんど2乗和を覚えれば十分である.
公式の導出
1乗和は「等差数列の和の公式」もしくは,「直感的な方法」からすぐに分かります.
また,2乗和,3乗和は同じ方法で導出します.
この2乗和の公式,3乗和の導出法は「階差数列」の公式を求めるのと似た方法なので,この導出法は知っておいてください.
1乗和の公式の導出
1乗和の公式は「等差数列の和の公式からの導出法」と,「直感的な導出法」の2つが簡単です.
等差数列の和の公式からの導出法
初項$a$,公差$d$の等差数列の初項から第$n$項までの和は
となることを思い出しましょう.
【数列の基本2|[等差数列の和の公式]と[等比数列の和の公式]】
数列の和は簡単に求まるわけではありませんが,「等差数列の和」と「等比数列の和」はとても簡単に求めることができます.等差数列の和は平均を考えることで求まり,等比数列の和は$x^n-y^n$の因数分解を用いることで求まります.
等差数列の和の中でも,初項1,公差1のときの和が1乗和なので,この等比数列の和の公式に$(a,d)=(1,1)$を代入して
と1乗和の公式が得られます.
視覚的な導出法
視覚的に導出することもできます.
1個のブロック,2個のブロック,3個のブロック,4個のブロック,……を以下のように並べていきましょう.
これを$n$まで続けると,$1+2+\dots+n$のブロックが下図のように並びます.
このブロックと同じものを逆さまにして連結させると,数のように$n\times(n+1)$の長方形になります.
この長方形は$n(n+1)$個のブロックで構成されており,元の$1+2+3+\dots+n$はその半分なので,
が得られました.
2乗和の公式の導出
[2乗和の公式]の導出には,次の等式を用います.
これは左辺を展開すればすぐに成り立つことが分かります.
この等式の$k$に$k=1,2,\dots,n$を代入したものをすべてを足し合わせると,
となります.左辺はマイナスとプラスで打ち消し合って$n^3$と0だけが残っていますね.こうして等式
が得られました.この右辺の第2項の$\sum\limits_{k=1}^{n}k$は1乗和$\dfrac{n(n+1)}{2}$なので,
となります.これを整理すると,
となるので,両辺を3で割って,[2乗和の公式]
が得られます.
3乗和の公式の導出
[3乗和の公式]の導出は[2乗和の公式]の導出と同じ方法でできます.まず,
であることも左辺を展開すればすぐに成り立つことが分かりますね.
この$k$に$k=1,2,\dots,n$を代入して足し合わせると,
となります.左辺はマイナスとプラスで打ち消し合って$n^4$と0だけが残っています.こうして等式
が得られました.右辺の第2項の$\sum\limits_{k=1}^{n}k^2$は2乗和$\dfrac{n(n+1)(2n+1)}{6}$,第3項の$\sum\limits_{k=1}^{n}k^2$は1乗和$\dfrac{n(n+1)}{2}$なので,
となります.約分して,
となります.これを整理すると,
となるので,両辺を4で割って,[3乗和の公式]
が得られます.なお,これは
とも表せますね.
$m$乗和の公式の導出
さて,上で書いたことが理解できていれば,$m>3$の場合でも,2乗和,3乗和と同様に和の公式が導けることが分かりますね.
$k^{m+1}-(k-1)^{m+1}$は$m$次式ですから,上の方法と同様にして4乗和,5乗和と順に求めることができます.
計算は非常に多くなりますが,興味のある人は計算してみるとよい計算練習にもなります.
3乗和は「1乗和の2乗」に等しいので覚えやすい.また,4乗和,5乗和も同様にも求めることができる.
中学入試などでは「$1, 2, 4, 7, 11, 16, \square$の$\square$に入る数字を求めよ」といった問題が出題されることがありますが,この問題はまさに「階差数列」を使う問題です.
「階差数列の公式」というと身構えてしまうかもしれませんが,考え方は小学生でも理解できるようなものです.
次の記事では,階差数列をシンプルに理解できるように説明します.