前回の記事では,
- 等差数列の和
- 等比数列の和
を考えました.このように,数列の和を考えることはよくあります.
そこで,数列の和を表すシグマ記号$\sum$があります.
シグマ記号に慣れるまでは少し時間がかかるかも知れませんが,一度慣れてしまえば長い式もスッキリと表すことができるので便利な記号です.
一連の記事はこちら
【数列の基本1|数列の基礎は[等差数列]と[等比数列]から!】
【数列の基本2|[等差数列の和の公式]と[等比数列の和の公式]】
【数列の基本3|数列の和を表すシグマ記号$\sum$の定義と性質】←今の記事
【数列の基本4|超重要な和の公式[1乗和/2乗和/3乗和]】
【数列の基本5|階差数列の考え方は簡単!階差数列の公式】
【数列の基本6|部分分数分解を用いて計算する数列の和】
【数列の基本7|[等差×等比]型数列の和は引き算がポイント】
目次
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シグマ記号の定義と例
まずは
- シグマ記号の定義
- シグマ記号の具体例
をみてみましょう.
シグマ記号の定義
早速,シグマ記号の定義を確認しましょう.
自然数$k$, $\ell$は$k\leqq \ell$を満たすとする.数列$\{a_n\}$の第$k$項から第$\ell$項までの和$a_k+a_{k+1}+\dots+a_\ell$を$\sum\limits_{n=k}^{\ell}a_n$と表す:
「和」は英語で”sum”であり,$\Sigma$(シグマ)は”sum”の頭文字”S”に相当するギリシャ文字です.(なお,小文字は$\sigma$で,統計で分散を$\sigma^2$で表すことも多いですね.)
さて,定義からも分かるように,$\sum\limits_{n=k}^{\ell}$は
「$n$に$k$から$\ell$までの整数を代入したものを足せ」
という記号なわけですね.
そもそもシグマ記号はまだ紙が貴重だった時代に,長い式の省スペースのために考案されたのが起源です.
このように,シグマ記号を使うことによって,式がスッキリ書けるというメリットがあります.
一方で,慣れないと読み取るのが難しいというデメリットが生じてしまいました.
ですから,シグマ記号に慣れるまではきちんと書き並べて考える癖をつけるようにするのがよいでしょう.
慣れれば書き並べて考えなくても分かるようになり,この便利さからは離れられなくなりますよ.笑
シグマ記号の具体例
具体的に考えてみましょう.
次の和を書き並べて表せ.
- $\sum\limits_{n=1}^{5}a_{n}$
- $\sum\limits_{n=3}^{5}\bra{a_{n}+b_{n}}$
- $\sum\limits_{k=1}^{n}a_{k}$
- $\sum\limits_{n=7}^{10}3n$
- $\sum\limits_{k=1}^{n}2$
(1) $n$に1から5までの整数を代入して足し合わせるから,
(2) $n$に3から5までの整数を代入して足し合わせるから,
(3) $k$に1から$n$までの整数を代入して足し合わせるから,
(4) $n$に7から10までの整数を代入して足し合わせるから,
(5) $k$に1から$n$までの整数を代入して足し合わせるから,
最後の例で2には$k$が含まれていませんが,「$k$を代入してもいつでも2」と考えて2を$n$回足し合わせることになります.
このことは最初は間違えやすいので注意してください.
等差数列の和と等比数列の和
前回の記事で説明した
- 等差数列
- 等比数列
の和をシグマ記号を用いて表してみましょう.
【前回の記事:数列の基本2|等差数列の和の公式と等比数列の和の公式】
[等差数列の和]と[等比数列の和]は数列の和の中で基本的で,他の多くの数列の和もこれらに帰着させて考えることがよくあります.この前回の記事では,[等差数列の和]と[等比数列の和]の公式をイメージから導出しています.
等差数列の場合
初項$a$,公差$d$の等差数列$\{a_n\}$の初項から第$n$項までの和は
なのでした.
左辺は「$a+kd$の$k$に0以上$n-1$以下の整数を代入して足し合わせたもの」になっているので,この左辺の和をシグマ記号で表すと
となります.
等比数列の場合
初項$a$,公比$r$の等比数列$\{b_n\}$の初項から第$n$項までの和は
なのでした.
左辺は「$ar^k$の$k$に0以上$n-1$以下の整数を代入して足し合わせたもの」になっているので,この左辺の和をシグマ記号で表すと
となります.
シグマ記号$\sum$は単に和をスッキリ表すために導入している記号なので,どのような和を表しているのか頭の中で自動変換できるようにしたい.
シグマ記号の公式
それでは,シグマ記号の公式の説明に移ります.
シグマ記号の公式
シグマ記号について,以下が成り立ちます.
自然数$k$, $\ell$は$k\leqq \ell$を満たすとする.数列$\{a_n\}$, $\{b_n\}$と実数$p$, $q$に対して,
が成り立つ.
実際に書き並べて変形することで
となることが分かりました.
この公式は
- $q=0$の場合
- $p=q=1$の場合
として得られる以下の形でもよく用います.
自然数$k$, $\ell$は$k\leqq \ell$を満たすとする.数列$\{a_n\}$, $\{b_n\}$と実数$p$, $q$に対して,
が成り立つ.
つまり,
- 定数倍は$\sum$の外に出せる
- 和はバラバラにできる
というわけですね.
シグマ記号の公式の具体例
最後に以下の問題を考えましょう.
次の和を$n$を用いて表せ.
まずはバラバラにしましょう.
なので,
- $\sum\limits_{k=1}^{n}k$
- $\sum\limits_{k=1}^{n}2^k$
を求めれば良いですね.
- 前者は初項1,公差1の等差数列の和
- 後者は初項2,公比2の等比数列の和
ですから,
です.よって,
となります.
丁寧に解きましたが,慣れれば一本の式変形で計算できるようになります.
シグマ記号をバラバラにしない方が良いこともありますが,多くの場合でバラバラにしてそれぞれの和を求めることでうまくいくことが多いです.
定数倍はシグマ記号の外に,和はシグマ記号をバラバラにすることができる.
次の記事では,数列の和として頻繁に現れる
- 1乗和$1+2+\dots+n$
- 2乗和$1^2+2^2+\dots+n^2$
- 3乗和$1^3+2^3+\dots+n^3$
について説明します.
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[…] 【数列の基本3|数列の和を表すシグマ記号Σの定義と性質】 […]