等比数列の和の公式|例題から2パターンの使い分けを理解する

数列
数列

最も基本的な数列として,等差数列等比数列があるのでした.

これらの数列はさまざまな分かりやすい性質を持っており,初項から第$n$項までの和を求める公式もよく知られています.

等差数列の和の公式は前回の記事で説明したので,この記事では

  • 等比数列の和の公式と具体例
  • 等比数列の和の公式の導出
  • 等比数列の和の公式の補足

を順に説明します.

等比数列の和の公式と具体例

等比数列の和の公式は

  • 公比$r$が$r=1$の場合
  • 公比$r$が$r\neq1$の場合

の2種類ありますが,$r=1$の場合は簡単なので重要なのは$r\neq1$の場合です.

初項$a$,公比$r$の等比数列の初項から第$n$項までの和は

    \begin{align*}a+ar+ar^2+\dots+ar^{n-1} =\begin{cases} \dfrac{a(r^n-1)}{r-1}&(r\neq1)\\ an&(r=1) \end{cases}\end{align*}

である.

具体例から使い方を見てみましょう.

具体例1(公比$r$が$r=1$の場合)

初項3,公比1の等比数列$3,\ 3,\ 3,\ 3,\dots$の初項から第$n$項までの和を$n$で表せ.

上の公式の$a=3$, $r=1$の場合なので,

    \begin{align*}3+3+3+\dots+3=3n\end{align*}

である.

このように,公比が$1$のときは同じものを$n$個足し合わせるだけなので当たり前ですね.

具体例2(公比$r$が$r\neq1$の場合)

等比数列$3,\ 6,\ 12,\ 24,\ 38,\dots$の初項から第50項までの和を求めよ.

等差数列$3,\ 6,\ 12,\ 24,\ 38,\dots$は初項3,公比2の等差数列だから上の公式の$a=3$, $r=2$の場合である.

よって,この数列の初項から第50項までの和は

    \begin{align*}&\frac{3(2^{10}-1)}{2-1}=3(1024-1)=3069\end{align*}

である.

等比数列の和の公式の導出

それでは公式を導出しましょう.

公比$r$が$r=1$の場合

$r=1$のとき,数列は

    \begin{align*}a,\ a,\ a,\ a,\ \dots\end{align*}

です.よって,初項から第$n$項までの和は$a$を$n$個足すわけですから

    \begin{align*}a+a+a+\dots+a=na\end{align*}

となりますね.

公比$r$が$r\neq1$の場合

まず,和を$S_n$とおきます.つまり,

    \begin{align*}S_n=a+ar+ar^2+\dots+ar^{n-1}\end{align*}

です.両辺に$r-1$をかければ,

    \begin{align*}(r-1)S_n=(r-1)\bra{a+ar+ar^2+\dots+ar^{n-1}}\end{align*}

となります.この右辺は

    \begin{align*}&(r-1)\bra{a+ar+ar^2+\dots+ar^{n-1}} \\=&a(r-1)\bra{1+r+r^2+\dots+r^{n-1}} \\=&a\brb{(r-1)+(r^2-r)+(r^3-r^2)+\dots+(r^n-r^{n-1})} \\=&a(r^n-1)\end{align*}

と変形できるので,

    \begin{align*}(r-1)S_n=a(r^n-1)\end{align*}

が成り立ちます.両辺を$r-1$で割って,求める公式

    \begin{align*}S_n=\frac{a(r^n-1)}{r-1}\end{align*}

が得られます.

等比数列の和の公式の補足

基本が押さえられれば,以下のことにも注意できるようになると一層良いでしょう.

因数分解から$r\neq1$の場合の公式を求める

$x^2-y^2$や$x^3-y^3$が因数分解できるように,($n$乗)-($n$乗)も因数分解することができます.

実際,実数$x$, $y$と任意の自然数$n$に対し,$x^n-y^n$は

    \begin{align*}x^n-y^n=(x-y)(x^{n-1}+x^{n-2}y+x^{n-3}y^2+\dots+y^{n-1})\end{align*}

と因数分解できます.これを知っていれば,$x=r$, $y=1$を代入して

    \begin{align*}r^n-1=(r-1)(r^{n-1}+r^{n-2}+r^{n-3}+\dots+1)\end{align*}

となり,両辺に$\dfrac{a}{1-r}$をかけることで,すぐに等比数列の和の公式

    \begin{align*}\frac{r^n-1}{r-1}=a+ar+ar^2+\dots+ar^{n-1}\end{align*}

が得られます.

先ほどの導出と本質的には同じです.

公比$r$が1より大きいか小さいかで対応する

公比が$r\neq1$の場合の和は

    \begin{align*}a+ar+ar^2+\dots+ar^{n-1}=\frac{a(r^n-1)}{r-1}\end{align*}

ですが,右辺の分母と分子に$-1$をかけて

    \begin{align*}a+ar+ar^2+\dots+ar^{n-1}=\frac{a(1-r^n)}{1-r}\end{align*}

とも表せます.これらを

  • $r>1$の場合には$\dfrac{a(r^n-1)}{r-1}$
  • $r<1$の場合には$\dfrac{a(1-r^n)}{1-r}$

で使い分けると,いずれも分母は正の数となりますね.

このように,公比が1より大きいか小さいかで公式の形を使い分ければ,計算が少し見通しよくなります.

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