例えば
- 等差数列$3,5,7,9,\dots$
- 等比数列$2,6,18,54,\dots$
を併せてできる数列
を考えます.
このような[等差×等比]型の数列の初項から第$n$項までの和は,$n$を使って表すことができます.
この記事では,「[等差×等比]型の数列の和」の求め方を解説し,具体的に[等差×等比]型の数列の例を挙げて計算します.
一連の記事はこちら
【数列の基本1|数列の基礎は[等差数列]と[等比数列]から!】
【数列の基本2|[等差数列の和の公式]と[等比数列の和の公式]】
【数列の基本3|数列の和を表すシグマ記号Σの定義と性質】
【数列の基本4|超重要な和の公式[1乗和/2乗和/3乗和]】
【数列の基本5|階差数列の考え方は簡単!階差数列の公式】
【数列の基本6|部分分数分解を用いて計算する数列の和】
【数列の基本7|[等差×等比]型の数列の和は引き算がポイント】←今の記事
【漸化式の基本1|漸化式とは?漸化式の考え方を例から解説!】
【漸化式の基本2|漸化式の基本も[等差数列]と[等比数列]】
【漸化式の基本3|数学的帰納法はイメージは「ドミノ倒し」!】
[等差×等比]型の数列
一般に,数列の和を計算することは困難ですが,等差数列や等比数列のような分かりやすい数列の和は比較的簡単に求めることができます.
[等差×等比]型の数列も和が計算できる数列で,教科書でも扱われるため試験でも頻出です.
[等差×等比]型の数列とは
分かりやすく書けるとは限りませんが,[等差×等比]型の数列の和は冒頭でも書いたように,「[等差×等比]型の数列」とは,例えば次のような一般項をもつ数列の和を指しています.
- $a_1=1\times1,\quad a_2=2\times2,\quad a_3=3\times4,\quad a_4=4\times8,\dots$
- $a_1=2\times1,\quad a_2=5\times(-3),\quad a_3=8\times9,\quad a_4=11\times(-27),\dots$
- $a_1=7\times27,\quad a_2=5\times9,\quad a_3=3\times3,\quad a_4=1\times1,\dots$
一般的には,等差数列$\{b_n\}$と等比数列$\{c_n\}$があって,一般項が$a_n=b_nc_n$となっている数列$\{a_n\}$のことを「[等差×等比]型の数列」と呼んでいます.
なお,本来このような数列に名前がついていませんが,この記事では「[等差×等比]型の数列」という表現を用います.
[等差×等比]型の数列の和の求め方
等差数列$\{b_n\}$と等比数列$\{c_n\}$を用意し,一般項をそれぞれ
- $b_n=b+nd$
- $c_n=cr^n$
としましょう.
等差数列,等比数列は数列の中で最も基本的なものです.等差数列,等比数列の一般項がそれぞれどうなるか解説し,実際に具体例に当てはめてその考え方をみます.
このとき,数列$\{b_{n}c_{n}\}$の一般項は$cr^n(b+nd)$なので,この初項から第$n$項までの和を$S_n$とすると,
となり,私たちはこの$S_n$を求めたいわけですね.
さて,数列$\{c_n\}$の公比$r$を$S_n$にかけた$rS_n$は
となるので,$S_n-rS_n$は
となります.ここで,右辺の$cr^{2}d+\dots+cr^{n}d$の部分は初項$cr^2d$,公比$r$の等比数列になっているので,
と計算できます.
【数列の基本2|[等差数列の和の公式]と[等比数列の和の公式]】
数列の和は一般に簡単に求まるとは限りませんが,等差数列と等比数列の和は容易に求めることができます.等差数列と等比数列の和の公式は当たり前に使えてください.
よって,
となるので,両辺を$1-r$で割って,
と$S_n$が計算できますね.
とはいえ,文字でやっていてもなかなか分かりにくいですから,以下で具体例を考えましょう.
[等差×等比]型の数列の和の例
それでは具体的に[等差×等比]型の数列の和を求めましょう.
以下の数列の初項から第$n$項までの和を求めよ.
- $a_1=1\times1,\quad a_2=2\times2,\quad a_3=3\times4,\quad a_4=4\times8,\dots$
- $a_1=2\times1,\quad a_2=5\times(-3),\quad a_3=8\times9,\quad a_4=11\times(-27),\dots$
- $a_1=7\times27,\quad a_2=5\times9,\quad a_3=3\times3,\quad a_4=1\times1,\dots$
問1
初項から第$n$項までの和を$S_n$とおくと,
です.この等比数列の部分は$1,2,4,8,\dots$なので,公比2ですから,$S_n$に2をかけて,
となります.よって,$S_n-2S_n$を計算すると,
すなわち,
となります.この右辺の$1+2+4+8+\dots+2^{n-1}$は初項1,公比2の等比数列の和になっているので,等比数列の和の公式から,
です.よって,
が得られます.もともと,第$n$項までの和を$S_n$とおいていたので,
となります.
問2
初項から第$n$項までの和を$S_n$とおくと,
です.この等比数列の部分は$1,-3,9,-27,\dots$なので,公比は$-3$ですから,$S_n$に$-3$をかけて,
である.よって,$S_n-(-3)S_n$を計算すると,
すなわち,
となります.この右辺の第2項のカッコの中身は,初項$-3$,公比$-3$の等比数列の和になっているので,等比数列の和の公式から,
です.よって,
が得られます.もともと,第$n$項までの和を$S_n$とおいていたので,
となります.
問3
初項から第$n$項までの和を$S_n$とおくと,
です.この等比数列の部分は$27,9,3,1,\dots$なので,公比は$\dfrac{1}{3}$ですから,$S_n$に$\dfrac{1}{3}$をかけて,
である.よって,$S_n-\dfrac{S_n}{3}$を計算すると,
すなわち,
となります.この右辺の第2項のカッコの中身は,初項9,公比$\dfrac{1}{3}$の等比数列の和になっているので,等比数列の和の公式から,
です.よって,
が得られます.もともと,第$n$項までの和を$S_n$とおいていたので,
となります.
[等差×等比]型の数列の和は次の手順で求められる.
- 第$n$項までの和を$S_n$とおく.
- 等比数列の部分の公比$r$を$S_n$にかけて,$rS_n$をつくる.
- $S_n-rS_n$(または$rS_n-S_n$)を一つずつ項をずらして計算する.
- $(1-r)S_n$(または$(r-1)S_n$)の式の一部に等比数列の和が出てくるので,等比数列の和の公式を使ってまとめる.
- 両辺を$1-r$(または$r-1$)で割る.
例えば
のように,異なる項の間に成り立つ関係式のことを(2項間)漸化式といいます.
次の記事では,漸化式の考え方の基本を説明します.
一連の記事はこちら
【数列の基本1|数列の基礎は[等差数列]と[等比数列]から!】
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【数列の基本4|超重要な和の公式[1乗和/2乗和/3乗和]】
【数列の基本5|階差数列の考え方は簡単!階差数列の公式】
【数列の基本6|部分分数分解を用いて計算する数列の和】
【数列の基本7|[等差×等比]型数列の和は引き算がポイント】
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【漸化式の基本2|等差数列,等比数列の漸化式】
【漸化式の基本3|数学的帰納法はイメージは「ドミノ倒し」!】