2次式については,4つの展開・因数分解の基本公式と,たすきがけ因数分解の公式がありました.
3次以上の多項式でも重要な展開・因数分解のための公式がいくつかあります.
この記事では
- 3次式の因数分解の4公式
- 4次以上の因数分解の公式
をまとめます.
「多項式」の一連の記事
3次式の展開・因数分解の基本の4公式
3次式の展開・因数分解について,次の4つの基本公式は確実に身につけてください.
実数$x$, $a$に対して,次の等式が成り立つ.
いずれも右辺を展開することで等しいことはすぐに分かりますね.
具体例1($x^3+1$)
$x$の3次式$x^3+1$を因数分解せよ.
公式$x^3-a^3=(x+a)(x^2+ax+a^2)$の$a=1$の場合を用いて,
と因数分解できる.
具体例2($x^3-8$)
$x$の3次式$x^3-8$を因数分解せよ.
公式$x^3-a^3=(x-a)(x^2+ax+a^2)$の$a=2$の場合を用いて,
と因数分解できる.
$x^3-8=x^3+(-2)^3$とみて,公式$x^3+a^3=(x+a)(x^2-ax+a^2)$を用いることでも因数分解できますね.
具体例3($x^3+6x+12x+8$)
$x$の3次式$x^3+6x+12x+8$を因数分解せよ.
公式$x^3+3ax^2+3a^2x+a^3=(x+a)^3$の$a=2$の場合を用いて,
と因数分解できる.
具体例4($x^3-9x+27x-27$)
$x$の3次式$x^3-9x+27x-27$を因数分解せよ.
公式$x^3-3ax^2+3a^2x-a^3=(x-a)^3$の$a=3$の場合を用いて,
と因数分解できる.
$x^3-9x+27x-27=x^3+3\cdot(-3)\cdot x+3\cdot(-3)^2\cdot x+(-3)^3$とみて,公式$x^3-3ax^2+3a^2x-a^3=(x-a)^3$を用いることでも因数分解できますね.
$x^3+y^3+z^3-3xyz$の因数分解
次の3文字の因数分解公式もよく問われるので知っておきたい公式です.
実数$x$, $y$, $z$に対して,次の等式が成り立つ.
この公式も右辺を展開することで等しいことはすぐに分かりますね.
具体例5($x^3+y^3+z^3-3xyz$の正負)
$x+y+z\ge0$を満たす実数$x$, $y$, $z$に対して,$x^3+y^3+z^3-3xyz\ge 0$であることを示せ.
公式より$x^3+y^3+z^3-3xyz=(x+y+z)(x^2+y^2+z^2-xy-yz-zx)$だから,$x+y+z\ge0$を併せて,$x^2+y^2+z^2-xy-yz-zx>0$を示せばよい.
だから,$x^3+y^3+z^3-3xyz>0$である.
偶数次のみの多項式の因数分解
偶数次の項のみもつ多項式は,$x^2=t$などと2乗をひとつとみることで因数分解できることがあります.
最終的には$x^2=t$とおかなくても因数分解できるくらいに慣れたいところです.
具体例6($x^4-10x^2+9$)
$x$の4次式$x^4-10x^2+9$を因数分解せよ.
$t=x^2$とおくと,
と因数分解できる.
具体例7($x^6-3x^4+3x^2-1$)
$x$の6次式$x^6-3x^4+3x^2-1$を因数分解せよ.
$t=x^2$とおくと,
と因数分解できる.
複2次式特有の因数分解
偶数次の項のみの4次式を複2次式といいます.
複2次式はうまく2次の項を分けることで$X^2-Y^2$の形に持ち込んで因数分解できることがあります.
具体例8($x^4+x^2+1$)
$x$の4次式$x^4+x^2+1$を因数分解せよ.
$t=x^2$とおき,$t^^2+2t+1=(t+1)^2$に注目すると,
と因数分解できる.
具体例9($x^4-3x^2+1$)
$x$の4次式$x^4-3x^2+1$を因数分解せよ.
$x^4-2x^2+1=(x^2-1)^2$に注目すると,
と因数分解できる.
具体例10($x^4-5x^2+4$)
$x$の4次式$x^4-5x^4+4$を因数分解せよ.
$x^4-4x^2+4=(x^2-2)^2$に注目すると,
と因数分解できる.
$x^n-y^n$の因数分解
$x^n-y^n$は
と因数分解できます.
右辺を実際に展開すれば,ほとんどの項が足し引きで消えて$x^n$と$y^n$だけが残って左辺に等しいことが分かります.
さて,この公式は$n=2$, $n=3$の場合である
- $x^2-y^2=(x-y)(x+y)$
- $x^3-y^3=(x-y)(x^2+xy+y^2)$
から連想すれば納得しやすいですね.
例えば,$n=4$の場合には
であり,$n=5$の場合には
となります.
このように$n$が$1$増えるに従って,$x^{n-1}+x^{n-2}y+\dots+y^{n-1}$の部分が増えているのが見てとれますね.
$x^n+y^n$の因数分解($n$は奇数)
$n$が奇数のとき,$x^n+y^n$は
と因数分解できます.
$x^n-y^n$の場合と同じく,右辺を実際に展開すれば,ほとんどの項が足し引きで消えて$x^n$と$y^n$だけが残って左辺に等しいことが分かります.
一方,$x^n-y^n$の場合と違うのは,実数の範囲では$n$が奇数の場合にしか因数分解ができないことです.
これは,$x^2+y^2$は実数の範囲では因数分解できませんが,$x^3+y^3$は
と因数分解できることから連想できますね.
$n=5$の場合には
となります.
$x^{n-1}-x^{n-2}y+\dots-xy^{n-2}+y^{n-1}$の部分で$+$と$-$が交互に出てくるので,最後が$+$になるためには$n$が奇数でないといけないわけですね.
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