数学Iで学ぶ三角比
- $\sin{\theta}$
- $\cos{\theta}$
- $\tan{\theta}$
は使いこなせると非常に便利なもので,数学IIになると三角関数としても登場します(さらに数学IIIでも重要な関数として登場します).
一方で,この便利さを実感するためには変換公式などの基本事項をさっと使えるようになっておく必要があり,この段階でつまずいてしまう学習者は少なくありません.
(定義はルールですからしっかり覚える必要はありますが,)公式についてはある程度は覚えやすい考え方やコツがあります.
例えば,この記事を書いている私は三角比(三角関数)の公式は考え方からすぐに導けるので,公式もあまり覚えていませんが全く問題なく三角比(三角関数)の公式を使えます.
この一連の記事では,できるだけ覚えることが少なく済むように三角比(三角関数)を説明します.
この最初の記事では
- 三角比の定義
- 三角比が便利な理由
- 有名角の三角比の値
を説明します.
一連の記事はこちら
【三角比1|三角比を考え方から理解する!有名角の三角比も!】←今の記事
【三角比2|sinθ, cosθ, tanθの超重要な4つの関係式】
【三角比3|実は当たり前!?3つの(90°-θ)型の変換公式】
【三角比4|角度が90°以上の三角比はこう考える!】
【三角比5|(180°-θ)型の変換公式はめっちゃ簡単!】
【三角比6|【正弦定理】の使い方を具体例から考えよう】
【三角比7|【余弦定理】は「三平方の定理」の進化版!】
目次
三角比の定義
$\ang{B}=90^{\circ}$の直角三角形$\tri{ABC}$と,$\ang{B’}=90^{\circ}$の直角三角形$\tri{A’B’C’}$を考えます.
このとき,もし$\ang{A}=\ang{A’}$であれば,この2つの直角三角形は二角相等(2つの角がそれぞれ等しい)により相似であることが分かります.
よって,相似$\tri{ABC}\sim\tri{A’B’C’}$により,$\mrm{AB}:\mrm{BC}:\mrm{CA}=\mrm{A’B’}:\mrm{B’C’}:\mrm{C’A’}$が成り立つので,
が成り立ちます.
すなわち,$\ang{B}=\ang{90^{\circ}}$の直角三角形で$\ang{A}$の大きささえ決めてしまえば,$\dfrac{\mrm{AB}}{\mrm{AC}}$, $\dfrac{\mrm{BC}}{\mrm{AC}}$, $\dfrac{\mrm{CB}}{\mrm{AB}}$の値は辺の長さがどうであろうと同じということになります.
そこで,「$\ang{A}$を決めればこれら3つの辺の比が決まるから,この3つの辺の比に名前をつけよう」ということで,以下の三角比の定義になります.
$\ang{B}=90^{\circ}$の直角三角形$\tri{ABC}$に対して,$\theta=\ang{A}$とする.
このとき,$\cos{\theta}$, $\sin{\theta}$, $\tan{\theta}$を
と定める.また,$\cos$を余弦,$\sin$を正弦,$\tan$を正接という.
どの辺の比がどの三角比比になるのか,筆記体の書き順で覚える方法をよく見かけますね.
どんな方法にせよ,定義はしっかり覚えてください.
相似な三角形の辺の比は一定なので,直角三角形で1つの鋭角の角度を決めると辺の比が決まる.この辺の比に名前をつけたものが三角比である.
三角比が便利な理由
ここで,三角比がなぜ便利なのかを説明しておきます.
例えば,以下のように
- 1つの内角が$35^\circ$
- 斜辺の長さが2
の直角三角形を考えます.
このとき,中学数学までの知識では辺ABや辺BCの長さを表そうとしても,どうにも難しいです.
しかし,三角比を使えば,
ですから
- $\mrm{BC}=2\sin{35^\circ}$
- $\mrm{AB}=2\cos{35^\circ}$
と表すことができます.
$\sin{35^\circ}$や$\cos{35^\circ}$の値が分からなければよく分からないものではあるかもしれませんが,「長さをとりあえず表現できるようになった」ということだけでもかなりの前進です.
このように,三角比を用いることで新たに辺の長さを表現できるようになることが,三角比が便利な大きな理由です.
具体的な三角比の値
具体的に,三角比の値がどうなるか計算してみましょう.
$30^\circ$の三角比
$\cos{30^\circ}$, $\sin{30^\circ}$, $\tan{30^\circ}$を以下の図で考えましょう.
この直角三角形$\tri{ABC}$は正三角形ACC’で,辺CC’の中点をBとしてできます.
よって,$\mrm{BC}:\mrm{CA}=1:2$ですから,三平方の定理より$\mrm{AB}:\mrm{BC}:\mrm{CA}=\sqrt{3}:1:2$となり,
が分かります.
$45^\circ$の三角比
$\cos{45^\circ}$, $\sin{45^\circ}$, $\tan{45^\circ}$を以下の図で考えましょう.
この直角三角形$\tri{ABC}$は$\mrm{AB}=\mrm{BC}$, $\ang{B}=90^{\circ}$の直角二等辺三角形なので,三平方の定理と併せて$\mrm{AB}:\mrm{BC}:\mrm{CA}=1:1:\sqrt{2}$となり,
が分かります.
$60^\circ$の三角比
$\cos{60^\circ}$, $\sin{60^\circ}$, $\tan{60^\circ}$を以下の図で考えましょう.
これは30度のときと同様に正三角形を真っ二つにし,三平方の定理と併せて$\mrm{AB}:\mrm{BC}:\mrm{CA}=1:\sqrt{3}:2$となり,
が分かります.
有名角の三角比の覚え方
以上のように
- $30^\circ$
- $45^\circ$
- $60^\circ$
の三角比は簡単に求まるので,この3つの角を有名角ということがあります.
まとめると有名角の三角比は
$\theta$ | $30^\circ$ | $45^\circ$ | $60^\circ$ |
---|---|---|---|
$\cos{\theta}$ | $\dfrac{\sqrt{3}}{2}$ | $\dfrac{1}{\sqrt{2}}\bra{=\dfrac{\sqrt{2}}{2}}$ | $\dfrac{1}{2}$ |
$\sin{\theta}$ | $\dfrac{1}{2}$ | $\dfrac{1}{\sqrt{2}}\bra{=\dfrac{\sqrt{2}}{2}}$ | $\dfrac{\sqrt{3}}{2}$ |
$\tan{\theta}$ | $\dfrac{1}{\sqrt{3}}$ | $1$ | $\sqrt{3}$ |
となりますね.この有名角の三角比は当たり前にさっと使えるようにしてください.
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邪道な覚え方としては,$\sin{\theta}$は$\theta$が$30^{\circ}$→$45^{\circ}$→$60^{\circ}$となるとき
とたまたま$\dfrac{\sqrt{\quad}}{2}$の$\sqrt{\quad}$の中身が$1$→$2$→$3$と増えていきます.これを知っていれば覚えやすいかと思います.
$\cos{\theta}$はこの逆で
となりますね.
また,$\theta=45^\circ$の場合の$\sin{\theta}$, $\cos{\theta}$においては,$\dfrac{1}{\sqrt{2}}$と$\dfrac{\sqrt{2}}{2}$のどちらで表されることも多いの,どちらの表し方でも同じだという感覚は持っていて欲しいところです.
有名角の三角比は「直角二等辺三角形」または「正三角形を真っ二つにした直角三角形」を考えることで得られる.
三角比の関係
この記事では,三角比$\sin{\theta}$, $\cos{\theta}$, $\tan{\theta}$の定義を説明しました.
三角比のどれか1つの値を決めると直角三角形の2辺の長さの比を決めることになり,直角三角形は2辺の長さが決まると残り1つの辺の長さが求まるので,残りの三角比も求まることになります.
つまり,三角比$\sin{\theta}$, $\cos{\theta}$, $\tan{\theta}$は互いに関係し合っていることになります.
次の記事では$\sin{\theta}$, $\cos{\theta}$, $\tan{\theta}$の関係式について説明します.