三角比を学ぶことで【正弦定理】と【余弦定理】という三角形に関する非常に便利な定理を証明することができます.
sinのことを「正弦」,cosのことを「余弦」というのでしたから
- 【正弦定理】がsinを使う定理
- 【余弦定理】がcosを使う定理
だということは容易に想像が付きますね(余弦定理は次の記事で扱います).
この記事で扱う【正弦定理】は三角形の
- 向かい合う「辺」と「角」
- 外接円の半径
がポイントとなる定理で,三角形を考えるときには基本的な定理です.
一連の記事はこちら
【三角比1|三角比を考え方から理解する!有名角の三角比も!】
【三角比2|sinθ, cosθ, tanθの超重要な4つの関係式】
【三角比3|実は当たり前!?3つの(90°-θ)型の変換公式】
【三角比4|角度が90°以上の三角比はこう考える!】
【三角比5|(180°-θ)型の変換公式はめっちゃ簡単!】
【三角比6|【正弦定理】の使い方を具体例から考えよう】←今の記事
【三角比7|【余弦定理】は「三平方の定理」の進化版!】
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正弦定理
早速,正弦定理の説明に入ります.
正弦定理
正弦定理の内容は以下の通りです.
[正弦定理] 半径$R$の外接円をもつ$\tri{ABC}$について,$a=\mrm{BC}$, $b=\mrm{CA}$, $c=\mrm{AB}$とする.
このとき,
が成り立つ.
正弦定理は
- 向かい合う角と辺が絡むとき
- 外接円の半径が絡むとき
に使うことが多いです.
特に,「外接円の半径」というワードを見たときには,正弦定理は真っ先に考えたいところです.
正弦定理の証明は最後に回し,先に応用例を考えましょう.
三角形の面積の公式
外接円の半径$R$と,3辺の長さ$a$, $b$, $c$について,三角形の面積は以下のように求めることもできます.
外接円の半径が$R$の$\tri{ABC}$について,$a=\mrm{BC}$, $b=\mrm{CA}$, $c=\mrm{AB}$とすると,$\tri{ABC}$の面積は
で求まる.
正弦定理より$\sin{\ang{A}}=\dfrac{a}{2R}$だから,
が成り立ちます.
正弦定理の例
以下の例では,$a=\mrm{BC}$, $b=\mrm{CA}$, $c=\mrm{AB}$とし,$\tri{ABC}$の外接円の半径を$R$とします.
例1
$a=2$, $\sin{\ang{A}}=\dfrac{2}{3}$, $\sin{\ang{B}}=\dfrac{3}{4}$の$\tri{ABC}$に対して,$R$, $b$を求めよ.
正弦定理より
なので,$R=\dfrac{3}{2}$である.再び正弦定理より
である.
例2
$a=2$, $\ang{B}=45^\circ$, $R=2$の$\tri{ABC}$に対して,$\ang{A}$, $b$を求めよ.
正弦定理より
なので,$\ang{A}=30^\circ, 150^\circ$である.
もし$\ang{A}=150^\circ$なら$\ang{B}=45^\circ$と併せて$\tri{ABC}$の内角の和が$180^\circ$を超えるから不適.
よって,$\ang{A}=30^\circ$である.
再び正弦定理より
である.
例3
$c=4$, $\ang{C}=45^\circ$, $\ang{B}=15^\circ$の$\tri{ABC}$に対して,$\ang{A}$, $b$を求めよ.ただし
が成り立つことは使ってよいとする.
$\ang{A}=180^\circ-\ang{B}-\ang{C}=120^\circ$だから,正弦定理より
だから,$R=2\sqrt{2}$である.また,正弦定理より
である.よって,
となる.
面積は上でみた面積の公式を用いて
としても同じことですね.
正弦定理の証明
正弦定理を説明するために,まず円周角の定理について復習しておきましょう.
円周角の定理
まずは言葉の確認です.
中心Oの円周上の異なる2点A, B, Cに対して,$\ang{AOC}$, $\ang{ABC}$をそれぞれ弧ACに対する中心角 (central angle),円周角 (inscribed angle)という.ただし,ここでの弧ACはBを含まない方の弧である.
さて,円周角の定理 (inscribed angle theorem)は以下の通りです.
[円周角の定理] 中心Oの円周上の2点A, Cを考える.このとき,次が成り立つ.
- 直線ACに関してOと同じ側の円周上の任意の点Bに対して,$2\ang{ABC}=\ang{AOC}$が成り立つ.
- 直線ACに関して同じ側にある円周上の任意の2点B, B’に対して,$\ang{ABC}=\ang{AB’C}$が成り立つ.
【円周角の定理】の詳しい証明はしませんが,
- $2\ang{ABC}=\ang{AOC}$を示す.
- これにより$\ang{ABC}=\dfrac{1}{2}\ang{AOC}=\ang{AB’C}$が示される
という流れで証明することができます.
正弦定理の証明
それでは,正弦定理を証明します.
[正弦定理(再掲)] 半径$R$の外接円をもつ$\tri{ABC}$について,$a=\mrm{BC}$, $b=\mrm{CA}$, $c=\mrm{AB}$とする.
このとき,
が成り立つ.
$2R=\dfrac{a}{\sin{\ang{A}}}$の分母を払って,$2R\sin{\ang{A}}=a$を示せばよいですね.これを
- $0^\circ<\ang{A}<90^\circ$の場合
- $\ang{A}=90^\circ$の場合
- $90^\circ<\ang{A}<180^\circ$の場合
に分けて証明しましょう.
[1] $0^\circ<\ang{A}<90^\circ$の場合
線分BDが外接円の直径となるように点Dをとる.
このとき,$\ang{BCD}=90^\circ$なので
だから$2R\sin{\ang{D}}=a$であり,弧BCに関する円周角の定理より$\ang{A}=\ang{D}$だから,$2R\sin{\ang{A}}=a$が従う.
[2] $\ang{A}=90^\circ$の場合
線分BCが外接円の直径となる.
よって,$2R=a$が成り立ちつ.
$\ang{A}=90^\circ$なので,$\sin{\ang{A}}=1$だから$2R\sin{\ang{A}}=a$が成り立つ.
[3] $90^\circ<\ang{A}<180^\circ$の場合
外接円の中心を点Oとし,線分BDが外接円の直径となるように点Dをとる.
このとき,$\ang{BCD}=90^\circ$なので,
だから$2R\sin{\ang{D}}=a$である.
また,弧BCに関する円周角の定理より$2\ang{A}=\ang{BOC}(>180^\circ)$, $2\ang{D}=\ang{BOC}(<180^\circ)$だから,$2\ang{A}+2\ang{D}=360^\circ$が従う.
よって,$\ang{D}=180^\circ-\ang{A}$が成り立つ.
$(180^\circ-\theta)$型の変換公式より,$\sin{\ang{D}}=\sin{180^\circ-\ang{A}}=\sin{\ang{A}}$なので,$2R\sin{\ang{A}}=a$を得る.
以上より,いつでも$2R=\dfrac{a}{\sin{\ang{A}}}$が成り立つ.
同様に$2R=\dfrac{b}{\sin{\ang{B}}}$, $2R=\dfrac{c}{\sin{\ang{C}}}$も証明できるので
が得られる.
余弦定理
この記事で扱った正弦定理は三角形の$\sin$に関する定理でしたが,三角形の$\cos$に関する定理もあり余弦定理と呼ばれています.
[余弦定理] $a=\mrm{BC}$, $b=\mrm{CA}$, $c=\mrm{AB}$の$\tri{ABC}$に対して,以下が成り立つ.
$\ang{A}=90^\circ$のときは$\cos{\ang{A}}=0$なので,余弦定理は$a^2=b^2+c^2$となってこれは三平方の定理ですね.
このことから[余弦定理]は直角三角形でない三角形では,三平方の定理がどのように変わるかという定理であることが分かりますね.
次の記事では,余弦定理について説明します.