ベクトルの三角形の面積公式|ベクトルの内積の便利な使い方

ベクトル
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三角形$\mrm{OAB}$の面積$S$は,$\theta=\ang{O}$とすると

    \begin{align*}S=\frac{1}{2}\mrm{OA}\cdot\mrm{OB}\sin{\theta}\end{align*}

と求められることを三角比の分野で学びました.

また,$\theta$は2つのベクトル$\Ve{OA}$, $\Ve{OB}$のなす角なので,内積の定義より

    \begin{align*}\Ve{OA}\cdot\Ve{OB}=|\Ve{OA}||\Ve{OB}|\cos{\theta}\end{align*}

ですね.

よって,これらの式から$\cos{\theta}$と$\sin{\theta}$を消去すれば,三角形$\mrm{OAB}$の面積$S$を内積$\Ve{OA}\cdot\Ve{OA}$を用いて表すことができますね.

この記事では,

  • 内積を用いた三角形の面積公式
  • $xy$平面上での公式

を順に説明します.

内積を用いた三角形の面積公式

まずは内積を用いた三角形の面積公式を紹介し,簡単な具体例を考えましょう.

公式と証明

三角形$\mrm{OAB}$おいて,$\ve{a}=\Ve{OA}$, $\ve{b}=\Ve{OB}$とする.

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このとき,三角形$\mrm{OAB}$の面積$S$は

    \begin{align*}S=\frac{1}{2}\sqrt{|\ve{a}|^2|\ve{b}|^2-(\ve{a}\cdot\ve{b})^2}\end{align*}

である.

三角形$\mrm{OAB}$の面積$S$は

    \begin{align*}S&=\frac{1}{2}\mrm{OA}\cdot\mrm{OB}\sin{\ang{O}} \\&=|\ve{a}||\ve{b}|\sin{\theta}\end{align*}

と表せる.$0^\circ<\theta<180^\circ$だから$\sin{\theta}=\sqrt{1-\cos^2{\theta}}$なので,さらに

    \begin{align*}S=\frac{1}{2}|\ve{a}||\ve{b}|\sqrt{1-\cos^2{\theta}} =\frac{1}{2}\sqrt{|\ve{a}|^2|\ve{b}|^2-(|\ve{a}||\ve{b}|\cos{\theta})^2}\end{align*}

と変形できる.よって,内積の定義

    \begin{align*}\ve{a}\cdot\ve{b}=|\ve{a}||\ve{b}|\cos{\theta}\end{align*}

と併せて

    \begin{align*}S=\frac{1}{2}\sqrt{|\ve{a}|^2|\ve{b}|^2-(\ve{a}\cdot\ve{b})^2}\end{align*}

が成り立つ.

この公式から三角形$\mrm{OAB}$の面積は2辺のベクトル$\Ve{OA}$, $\Ve{OB}$の長さ内積が分かれば求まるということは意識しておきましょう.

具体例(辺の長さと内積が分かっている場合)

簡単な具体例を考えましょう.

$\mrm{AB}=2$, $\mrm{AC}=3$, $\Ve{AB}\cdot\Ve{AC}=-2$の三角形$\mrm{ABC}$の面積を求めよ.

$\Ve{AB}$, $\Ve{AC}$の長さと内積が分かっているので,内積を用いた三角形の面積公式が使えますね.

ベクトルの三角形の面積公式より,

    \begin{align*}\tri{ABC} &=\frac{1}{2}\sqrt{\mrm{AB}^2\cdot\mrm{AC}^2-(\Ve{AB}\cdot\Ve{AC})^2} \\&=\frac{1}{2}\sqrt{2^2\cdot3^2-(-2)^2} =\frac{1}{2}\sqrt{32} =2\sqrt{2}\end{align*}

である.

$xy$平面上での公式

$xy$平面で上で示した三角形の面積公式を考えると,とても簡単な形になります.

公式と証明

$xy$平面上の三角形$\mrm{ABC}$を考える.$\Ve{AB}\pmat{b_1\\b_2}$, $\Ve{AC}\pmat{c_1\\c_2}$とおくと,三角形$\mrm{OAB}$の面積$S$は

    \begin{align*}S=\frac{1}{2}|b_1c_2-b_2c_1|\end{align*}

である.

$\ve{b}=\Ve{AB}$, $\ve{c}=\Ve{AC}$の長さ内積

  • $|\ve{b}|^2={b_1}^2+{b_2}^2$
  • $|\ve{c}|^2={c_1}^2+{c_2}^2$
  • $\ve{b}\cdot\ve{c}=b_1c_1+b_2c_2$

なので,

    \begin{align*}&|\ve{b}|^2|\ve{c}|^2-(\ve{b}\cdot\ve{c})^2 \\&=({b_1}^2{c_1}^2+{b_1}^2{c_2}^2+{b_2}^2{c_1}^2+{b_2}^2{c_2}^2)-({b_1}^2{c_1}^2+2+b_1c_1b_2c_2+{b_2}^2{c_2}^2) \\&={b_1}^2{c_2}^2-2b_1c_1b_2c_2+{b_2}^2{c_1}^2 \\&=(b_1c_2-b_2c_1)^2\end{align*}

である.よって,三角形の面積公式より

    \begin{align*}S&=\frac{1}{2}\sqrt{|\ve{b}|^2|\ve{c}|^2-(\ve{b}\cdot\ve{c})^2} \\&=\frac{1}{2}\sqrt{(b_1c_2-b_2c_1)^2}=\frac{1}{2}|b_1c_2-b_2c_1|\end{align*}

を得る.

この公式から$xy$平面上の三角形$\mrm{ABC}$の面積は2辺のベクトル$\Ve{AB}$, $\Ve{BC}$が成分で表せられれば求まるということは意識しておきましょう.

具体例(3頂点の座標が分かっている場合)

$xy$平面上の3点$\mrm{A}(1,2)$, $\mrm{B}(3,-1)$, $\mrm{C}(-3,0)$を頂点とする三角形$\mrm{ABC}$の面積を求めよ.

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各頂点の座標より

    \begin{align*}&\Ve{AB}=\pmat{3-1\\-1-2}=\pmat{2\\-3}, \\&\Ve{AC}=\pmat{-3-1\\0-2}=\pmat{-4\\-2}\end{align*}

だから,$xy$平面での三角形の面積公式より

    \begin{align*}\tri{ABC}=&\frac{1}{2}|2\cdot(-2)-(-3)\cdot(-4)|=8\end{align*}

である.

この問題のように,$xy$平面上の三角形$\mrm{OAB}$の3頂点の座標が分かっていれば,2辺のベクトル$\Ve{OA}$, $\Ve{OB}$の成分が分かり面積が求まるということは意識しておきましょう.

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