物体の運動を考えるとき,物体にはたらく力がつり合っているかどうかは,物体の運動を考える際に重要です.
前回の記事で説明したように,物体にはたらく力がつり合っていれば物体は等速直線運動を続けますし,逆に等速直線運動を続ける物体にはたらく力はつり合っています.
一方で,力がつり合っていない場合には,「運動方程式」を考えることによって,物体の運動を考えることができます.
「運動方程式」とは,質量$m$の物体に力$\ve{F}$を加えたときに物体が得る加速度を$\ve{a}$としたときに,成り立つ方程式
のことをいいます.
「運動方程式」は力学の基本中の基本なので,必ず理解してください.
一連の記事はこちら
【力の基本1|力学で基本的な6種類の力の総まとめ】
【力の基本2|力がつりあっているとどうなる?力のつりあいの例】
【力の基本3|「運動方程式」は力がつり合わないときに考える!】←今の記事
【摩擦力の基本|摩擦力の3パターンを理解する】
【張力の基本|滑車があっても怖くない】
【弾性力の基本|フックの法則は怖くない】
【浮力の基本|浮力を正しく理解する】
運動方程式
まず,「運動方程式」の前提として,次の[事実]を確認しておきましょう.
一定の向きに同じ大きさの力がはたらいている物体は,その力の向きに等加速度運動をする.逆に,等加速度運動をしている物体には,その向きに一定の向きに同じ大きさの力がはたらいている.
例えば,物体を同じ力でずっと押し続けると,物体はどんどん加速していきますね.
さらに,当然のことながら,前に力を加えているのにも関わらず横に移動したりはせず,前に加速していきます.
他にも,真空中を自由落下する物体には常に「重力」がはたらいているので,この物体は鉛直下向きに等加速度運動をします.
すなわち,この物体はどんどん加速しながら落下していきます.
物体を落下させたときの,加速度を重力加速度といいます.重力加速度は物体の落下が起源ではありますが,様々な場面に現れるので,しっかり基本からフォローしてください.
この[事実]のように,力がはたらく向きに物体は等加速度運動をするわけですが,
- 力の大きさ
- 加速度の大きさ
の関係については何も述べていません.
これについて述べたものが,次の「運動方程式」です.
[運動方程式] 質量$m$の物体に大きさ$F$の力がはたらき,物体は大きさ$a$の加速度を得たとする.このとき,
が成り立つ.
- 上の[事実]では,力$F$の向きと加速度$a$の向きの関係
- [運動方程式]では,力$F$の大きさと加速度$a$の大きさの関係
について述べたものになっています.
ベクトルは「大きさ」と「向き」を表すので,これら2つを併せると次のように述べることができます.
[運動方程式]’ 質量$m$の物体に力$\ve{F}$がはたらき,物体は加速度$\ve{a}$を得たとする.このとき,
が成り立つ.
なお,運動方程式といえば,向きも含めて考えた[運動方程式]’の方を指すことが多いですが,ベクトルが分かりにくければ
- [事実]から,$F$の向きと$a$の向きの関係
- [運動方程式]から,$F$の大きさと$a$の大きさの関係
を別々に考えても問題ありません
物体にはたらく力と加速度の方向は等しく,物体のはたらく力$\ve{F}$とそのときの加速度$\ve{a}$の関係式を運動方程式という.
力がつりあっているときの運動
前回の記事では,「力のつりあい」に関して次のように説明しました.
[力のつりあい] 力がつりあっているとき,運動している物体は等速直線運動をする.
逆に,物体が等速直線運動を続けるとき,物体にかかる力はつりあっている.
実は,この[力のつりあい]は運動方程式を使って説明できます.
「力がつり合っている」というのは,「物体にはたらく合力の大きさが0である」ということなので,運動方程式$\ve{F}=m\ve{a}$において$\ve{F}=\ve{0}$です.
よって,$\ve{o}=m\ve{a}$となって,$\ve{a}=\ve{o}$が従い,加速度$\ve{a}$の大きさは0となることが分かり,物体は等速直線運動をすることが分かりました.
一方,「物体が等速直線運動を続ける」というのは,「物体の加速度の大きさが0である」ということなので,運動方程式とき,運動方程式$\ve{F}=m\ve{a}$において$\ve{a}=\ve{0}$です.
よって,$\ve{F}=m\ve{0}$となって,$\ve{F}=\ve{o}$が従い,力$\ve{F}$の大きさは0となることが分かり,物体は等速直線運動をすることが分かりました.
以上から,力のつりあいの等式は運動方程式の$\ve{F}=\ve{0}$ ($\ve{a}=\ve{0}$)の場合に相当することが分かりますね.
具体例については,例えば以下の記事を参照してください.
「運動方程式」の関連記事