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電池と電気分解6|陽極と陰極の反応4パターンを理解する

前の記事【電池と電気分解5|電気分解の基本と,電池と電気分解の違い】の続きです.

電気分解において,陽極では電子\mathrm{e^-}を導線へ放出して酸化反応が,陰極では電子\mathrm{e^-}を導線から受け取って還元反応が起こります.

そのときの陽極,陰極の反応がどうなるのかというのは,おおまかに陰極,陽極にそれぞれ2つずつ,合わせて4つのパターンがあります.

このパターンを身に付けて電気分解の反応を書けるようにして下さい.

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陽極反応の2つのパターン

まずは,陽極の反応からみます.

前の記事【電池と電気分解5|電気分解の基本と,電池と電気分解の違い】にも書いたように,「電気分解で電池の正極とつながる方の極」を陽極というのでした.

電池の正極は電子\mathrm{e^-}を受け取るので,その電子\mathrm{e^-}は陽極からきていることになります.すなわち,陽極は電子\mathrm{e^-}を放出しているので,陽極では酸化反応が起こります.

さて,陽極での反応は,陽極の棒が何でできているかで反応が変わります.

陽極が

  1. \mathrm{Au},白金\mathrm{Pt},炭素\mathrm{C}でないとき
  2. \mathrm{Au},白金\mathrm{Pt},炭素\mathrm{C}のとき

をしっかりの区別して理解してください.

陽極は電子\mathrm{e^-}を放出する=酸化反応が起こる.陽極が何でできているかで反応が変わることを知っておく.

陽極が金Au,白金Pt,炭素Cでないとき

陽極が金\mathrm{Au},白金\mathrm{Pt},炭素\mathrm{C}でなければ,電極が酸化されて陽イオンとなって溶け出します.

陽極で酸化反応が起こるのは先ほど書いた通りですが,陽極が金\mathrm{Au},白金\mathrm{Pt},炭素\mathrm{C}でないときは,陽極自体が酸化されるわけですね.

たとえば,陽極に銅\mathrm{Cu}を用いると,

\mathrm{Cu \to Cu^{2+} + 2e^-}

の反応が起こります.他にも,陽極に亜鉛\mathrm{Zn}を用いると,

\mathrm{Zn \to Zn^{2+} + 2e^-}

の反応が起こります.

なお,これら「金\mathrm{Au},白金\mathrm{Pt},炭素\mathrm{C}」の覚え方としては,「高級なもの」と考えれば覚えやすいと思います.

「金」も「白金(プラチナ)」も高級品ですね.ただし,炭素\mathrm{C}はダイヤモンド\mathrm{C}からの連想です.

陽極が金\mathrm{Au},白金\mathrm{Pt},炭素\mathrm{C}でなければ,電極自体が酸化反応を起こして,電極が陽極となって溶け出す.

陽極が金Au,白金Pt,炭素Cのとき

陽極が金\mathrm{Au},白金\mathrm{Pt},炭素\mathrm{C}ならば,溶液に含まれているイオンが酸化されます.

やはり陽極で酸化反応が起こるのは先ほど書いた通りですが,陽極が金\mathrm{Au},白金\mathrm{Pt},炭素\mathrm{C}のときは,溶液に含まれているイオンが酸化されるわけですね.

気持ちとしては,金\mathrm{Au},白金\mathrm{Pt},炭素\mathrm{C}は反応性が低く,なかなか陽イオンになりません.そのため,溶液中のイオンが酸化されるわけですね.

さて,溶液中のイオンは,「ハロゲン化物イオン」が含まれているかどうか,がキーになることが多いです.

溶液にハロゲン化物イオンが含まれているとき

ハロゲン化物イオンはとても酸化されやすいので,溶液中にハロゲン化物イオンが含まれている場合にはハロゲン化物イオンが酸化されます.

たとえば,溶液中に塩化物イオン\mathrm{Cl^-}が含まれていれば,

\mathrm{2Cl^- \to Cl_2 + 2e^-}

の反応が起こりますし,ヨウ化物イオン\mathrm{I^-}が含まれていれば,

\mathrm{2I^- \to I_2 + 2e^-}

の反応が起こります.

ハロゲン化物イオンは酸化されやすい.

溶液に酸化されにくいイオンしか含まれていないとき

ハロゲン化物イオンのような酸化されやすいイオンが含まれていないときは,酸素\mathrm{O_2}が発生します.

酸化されにくいイオンは,たとえば硝酸イオン\mathrm{{NO_3}^-},硫酸イオン\mathrm{{SO_4}^{2-}},リン酸イオン\mathrm{{PO_4}^{3-}}などのことです.

高校化学ではこの3つを把握しておけば十分でしょう.

なお,硝酸イオン\mathrm{{NO_3}^-},硫酸イオン\mathrm{{SO_4}^{2-}},リン酸イオン\mathrm{{PO_4}^{3-}}が酸化されにくい理由は,それぞれに含まれる窒素\mathrm{N},硫黄\mathrm{S},リン\mathrm{P}の酸化数が高く,それ以上酸化できないことにあります.

それ以上酸化できないような元素は「最高酸化数に達している」などと言いますが,そこまでは知っていなくても問題ないでしょう.

さて,酸素\mathrm{O_2}がどのような反応式で発生するかということですが,半反応式は溶液が

  1. 強塩基でない場合
  2. 強塩基の場合

で次のように異なることに注意します.

強塩基でないのとき:\mathrm{2H_2O \to O_2 + 4H^{+} + 4e^{-}}

強塩基のとき:\mathrm{4OH^{-} \to O_2 + 2H_2O + 4e^{-}}

どちらの反応でも酸素\mathrm{O_2}が発生していますね.

強塩基の場合は,水酸化物イオン\mathrm{OH^-}が溶液中に多量に存在し,水酸化物イオン\mathrm{OH^-}は酸化されやすいので,\mathrm{OH^{-}}から酸素\mathrm{O_2}が発生していることに注意してください.

一方,強塩基でない場合は,\mathrm{OH^{-}}が溶液中に少ないので,水\mathrm{H_2O}から直接酸素\mathrm{O_2}が発生していますね.

溶液に酸化されやすいイオンが含まれていないときは,酸素\mathrm{O_2}が発生する.このときの反応式は,溶液が強塩基のときと強塩基でないときで異なる.

陰極反応の2つのパターン

次に,陰極の反応をみます.

前の記事【電池と電気分解5|電気分解の基本と,電池と電気分解の違い】にも書いたように,「電気分解で電池の負極とつながる方の極」を陰極というのでした.

電池の負極は電子\mathrm{e^-}を放出するので,その電子\mathrm{e^-}は陰極に流れていくことになります.すなわち,陰極は電子\mathrm{e^-}を受け取っているので,陰極では還元反応が起こります.

実は,陰極の反応は微妙なところがあるのですが,高校化学ではそのような微妙な場合が出題されることはほとんどないので,この記事ではその微妙なところは無視して書きます.

なお,陽極の反応とは異なり,陰極の電極が溶け出すことはありません.

さて,陽極での反応は,「溶液にイオン化傾向の小さい陽イオンが含まれているかどうか」で反応が変わります.

溶液に

  1. イオン化傾向の小さい金属イオンが含まれているとき
  2. イオン化傾向の小さい金属イオンが含まれていないとき

をしっかりの区別して理解してください.

陰極は電子\mathrm{e^-}を受け取る=還元反応が起こる.「溶液にイオン化傾向の小さい金属イオンが含まれているかどうか」で反応が変わることを知っておく.

溶液にイオン化傾向の小さい金属の陽イオンが含まれているとき

イオン化傾向とは「陽イオンへのなりやすさ」のことでした.つまり,「イオン化傾向の小さい金属の陽イオン」=「陽イオンになりにくい金属の陽イオン」となります.

「陽イオンになりにくい金属の陽イオン」は簡単に還元されて,普通の金属に戻ろうとします.

ここでの「陽イオンになりにくい金属」としては,基本的には「イオン化傾向が\mathrm{Zn}より小さい金属」のことですが,問題に登場するのは

  1. \mathrm{Cu}
  2. \mathrm{Ag}

がほとんどです.

イオン化傾向の大きい順に金属を並べた「イオン化列」は次のようになることを思い出しておきましょう.

\mathrm{K>Ca>Na>Mg>Al>Zn>Fe>Ni>Sn>Pb(>H)>\underline{Cu}>Hg>\underline{Ag}>Pt>Au}

確かに,銅\mathrm{Cu}や銀\mathrm{Ag}はイオン化傾向が小さい方であることが分かりますね.

【参考:電池と電気分解2|イオン化傾向と電池の仕組み

さて,先ほど書いたように,「イオン化傾向の小さい金属の陽イオン」が溶液中に存在すれば,容易に還元されて単体の金属に戻ります.

たとえば,溶液中に銅イオン\mathrm{Cu^{2+}}が含まれていれば,

\mathrm{Cu^{2+} + 2e^{-} \to Cu}

の反応が起こり,溶液中に銀イオン\mathrm{Ag^+}が含まれていれば,

\mathrm{Ag^{+} + e^{-} \to Ag}

の反応が起こります.このとき,銅イオン\mathrm{Cu^{2+}},銀イオン\mathrm{Ag^+}から単体の銅\mathrm{Cu},銀\mathrm{Ag}ができています.

このように,溶液中のイオンなどが固体となって生成されることを「析出」といいます.上の場合では「銅\mathrm{Cu}が析出した」「銀\mathrm{Ag}が析出した」などと表現します.

\mathrm{Cu}や銀\mathrm{Ag}といった「イオン化傾向の小さいイオン」=「陽イオンになりにくいイオン」が含まれているとき,そのイオンが電極に析出する.

溶液にイオン化傾向の小さい金属の陽イオンが含まれていないとき

溶液中に「イオン化傾向の大きい金属の陽イオン」=「陽イオンになりやすい金属の陽イオン」しか含まれていないときを考えます.

「イオン化傾向の大きい金属の陽イオン」としては

  1. アルカリ金属
  2. アルカリ土類金属
  3. アルミニウム\mathrm{A\ell}

あたりと思っておけば問題ないでしょう.

【参考記事:アルカリ金属の性質,製法,反応に関する7つの基本事項

「イオン化傾向の大きい金属」は陽イオンでいる方が安定なので,あまり単体の金属に戻ろうとはしません.

この場合には,水素\mathrm{H_2}発生します.

さて,水素\mathrm{H_2}がどのような反応式で発生するかということですが,半反応式は溶液が

  1. 強酸でない場合
  2. 強酸の場合

で次のように異なることに注意します.

強酸でないとき:\mathrm{2H_2O + 2e^{-} \to H_2 + 2OH^{-}}

強酸のとき:2\mathrm{H^{+} + 2e^{-} \to H_2}

どちらの反応でも水素\mathrm{H_2}が発生していますね.

強酸の場合は,水素イオン\mathrm{OH^-}が溶液中に多量に存在し,水素イオン\mathrm{OH^-}は還元されやすいので,\mathrm{H^{+}}から水素\mathrm{H_2}が発生していることに注意してください.

一方,強酸でない場合は,\mathrm{H^{+}}が溶液中に少ないので,水\mathrm{H_2O}から直接水素\mathrm{H_2}が発生していますね.

溶液に酸化されやすいイオンが含まれていないときは,水素\mathrm{H_2}が発生する.このときの反応式は,溶液が強塩基のときと強塩基でないときで異なる.

まとめ

以上をまとめると次のようになります.

  • 陽極の反応
    • 電極が金\mathrm{Au},白金\mathrm{Pt},炭素\mathrm{C}以外のとき,電極が陽イオンになって溶ける.
    • 電極が金\mathrm{Au},白金\mathrm{Pt},炭素\mathrm{C}のとき,
      • 溶液中にハロゲンが含まれていれば,酸化されてハロゲンが生じる.
      • 溶液中にハロゲンが含まれていなければ,酸素\mathrm{O_2}が生じる.
  • 陰極の反応
    • 溶液中にイオン化傾向の小さい金属のイオン(\mathrm{Cu^{2+}}\mathrm{Ag^+}など)が含まれているとき,これらは還元されて析出する(\mathrm{Cu}\mathrm{Ag}などが生じる).
    • 溶液中にイオン化傾向の小さい金属のイオン(\mathrm{Cu^{2+}}\mathrm{Ag^+}など)が含まれていないとき,水素\mathrm{H_2}が生じる.

陽極はまず電極が何かを確認することから始まりますね.

電極が溶けない場合には,溶液中の酸化されやすいイオンが酸化されるか,なければ酸素\mathrm{O_2}が生じます.

一方,陰極は電極が解けることはなく,溶液中の還元されやすいイオンが還元されるか,なければ水素\mathrm{H_2}が生じます.

そのため,陰極の反応の

  • 電極が金\mathrm{Au},白金\mathrm{Pt},炭素\mathrm{C}のとき,
    • 溶液中にハロゲンが含まれていれば,酸化されてハロゲンが生じる.
    • 溶液中にハロゲンが含まれていなければ,酸素\mathrm{O_2}が生じる.

と,

  • 陰極の反応
    • 溶液中にイオン化傾向の小さい金属のイオン(\mathrm{Cu^{2+}}\mathrm{Ag^+}など)が含まれているとき,これらは還元されて析出する(\mathrm{Cu}\mathrm{Ag}などが生じる).
    • 溶液中にイオン化傾向の小さい金属のイオン(\mathrm{Cu^{2+}}\mathrm{Ag^+}など)が含まれていないとき,水素\mathrm{H_2}が生じる.

が対応していると理解すると分かりやすいかも知れませんね.

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