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剛体の運動の基本3|力のつりあいとその例

  
   

剛体の運動の基本2|力の合成の4つのパターン】の続きです.

大きさを考えない「質点」にはたらく力のつりあいは,単に力の和が0であることをいいました.

そして,「力のつりあい」に関して大切なことは,「力がつりあっているときには静止している物体は静止し続け,運動している物体は等速直線運動を続ける」ということでした.

【参考記事:力の基本2|力のつりあいとその例

しかし,大きさを考える「剛体」の運動では回転を考える必要もあり,単に力の和が0であっても静止している物体が静止し続けるとは限りません.

ですから,剛体にはたらく力がつりあいでは,力のモーメントのつりあいも考える必要があります.

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剛体にはたらく力のつりあい

[剛体にはたらく力のつりあい]は,次のようになります.

[剛体にはたらく力のつりあい] 剛体にはたらく力\ve{F}_1,\dots,\ve{F}_nがつりあっているとは,次の1,2をみたすことをいう.

  1. \ve{F}_1+\dots+\ve{F}_n=\ve{0}
  2. 任意の点の周りの力のモーメントの和が0

条件1は良いでしょう.つりあいと言う場合に,加わる力のベクトルの和が0であることは自然ですね.

質点にはたらく力のつりあいは「並進運動しない条件」である条件1だけでしたが,剛体の力のつりあいは「回転しない条件」である2が加わります.

条件2が加わることで,「並進運動しない上に回転もしない」ということになります.したがって,

[事実] 剛体にはたらく力がつりあっているとする.このとき,剛体が静止していれば静止し続け,運動していれば回転せずに等速直線運動をする.

逆に,剛体が静止していれば静止し続け,運動していれば回転せずに等速直線運動をしているとする.このとき,剛体にはたらく力はつりあっている

質点にはたらく力のつりあいが分かっていれば,その類推で理解できますね.

剛体にはたらく力のつりあいの例

[剛体にはたらく力のつりあい]を理解するのはそれほど難しいことではありません.

以下で1つ具体例を考えます.

床は荒く,壁は滑らかであるとし,質量mの棒を床との角度が\thetaとなるように壁に立てかけると,棒は静止したとします.重力加速度を\ve{g}とします.

このとき,重力が棒の重心にかかるので,棒にはたらく力は以下のようになります(重心については次の記事).

Rendered by QuickLaTeX.com

壁からの垂直抗力\ve{F}_1,床からの摩擦力\ve{F}_2,床からの垂直抗力\ve{F}_3を求めます.

ただし,\ve{F}_1\ve{F}_2\ve{F}_3の大きさをF_1F_2F_3とします.

条件1

まず,[剛体にはたらく力のつりあい]の条件1を考えます.

棒は静止しているので,剛体である棒にはたらく力はつりあっています.よって,鉛直方向の力のつりあいから,

mg=F_3

です.また,水平方向の力のつりあいから,

F_1=F_2

です.

条件2

次に,[剛体にはたらく力のつりあい]の条件2を考えます.条件2から,棒の接地している点(力\ve{F}_2\ve{F}_3の作用点)を回転軸として,力のモーメントはつりあっています.

まず,\ve{F}_2\ve{F}_3の作用点と回転軸は同じなので,\ve{F}_2\ve{F}_3の力のモーメントは0です.

次に,棒の長さをlとします.

重力m\ve{g}は正の方向(反時計回り)の力のモーメントで,回転軸とm\ve{g}の作用線との距離は\f{l}{2}\cos\thetaですから,力のモーメントの大きさはmg\times\f{l}{2}\cos\thetaです.

また,壁からの垂直抗力\ve{F}_1は正の方向(反時計回り)の力のモーメントで,回転軸と\ve{F}_1の作用線との距離はl\sin\thetaですから,力のモーメントの大きさはmg\times l\sin\thetaです.

よって,力のモーメントのつりあいの式は

mg\times\f{l}{2}\cos\theta=F_1\times l\sin\theta

です.これを整理すると,mg=2F_1\tan\thetaとなります.

まとめ

以上から,3つの式

\begin{cases} mg=F_3\\ F_1=F_2\\ mg=2F_1\tan\theta \end{cases}

が得られました.これを解いて,F_1=F_2=\f{mg}{2\tan\theta}F_3=mgとなります.よって,

  • \ve{F}_1は水平壁と逆向きに大きさ\f{mg}{2\tan\theta}
  • \ve{F}_2は水平壁向きに大きさ\f{mg}{2\tan\theta}
  • \ve{F}_3は鉛直上向きに大きさmg

となります.

なお,結果を見れば分かるように,棒の長さlは全く関係がないことが分かります.ですから,質量mと立てかける角度\thetaが同じなら,長い棒であろうが短い棒であろうが\ve{F}_1\ve{F}_2\ve{F}_3は同じであることが分かりますね.

剛体の運動の基本4|重心とその例】に続きます.

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