中学校で学ぶように2次関数$y=ax^2$($a\neq0$)の$xy$平面上のグラフは原点$(0,0)$を頂点とする放物線となるのでした.
では,この$y=ax^2$に1次の項と定数項を加えた2次関数
は$xy$平面上のどのようなグラフを持つでしょうか?
結論から言えば,この$(*)$の$xy$平面上のグラフも放物線になります.
しかし,頂点が原点とは限らず,頂点を求める方法として平方完成というものがあります.
この記事では,
- 平方完成のポイントと具体例
- 2次関数のグラフと最大値・最小値
を順に説明します.
「多項式」の一連の記事
平方完成のポイントと具体例
まずは平方完成を解説します.
ポイントとなる因数分解公式
まずは前々回の記事で説明した次の2乗の因数分解公式を思い出しておきましょう.
$x^2+2ax+a^2=(x+a)^2$で$a$を$-a$に置き換えれば$x^2-2ax+a^2=(x-a)^2$が得られるので,これらは本質的に同じ公式です.
これらの公式で重要なことは,1次の係数$\pm2a$の$\frac{1}{2}$倍$\bra{\pm2a\times\frac{1}{2}}^2$が定数項$a^2$に等しくなっているという点です:
このことを用いて2次式を変形するのが平方完成です.
平方完成の仕組み
平方完成とは次のような式変形のことを言います.
2次式$ax^2+bx+c$ ($a\neq0$)を
の形の式に変形することを平方完成という.
たとえば,次のように平方完成ができます.
実は,一般に2次式$x^2+bx+c$ ($a\neq0$)の平方完成は次の手順を踏むことでできます.
- $b$の$\frac{1}{2}$倍の$2$乗$\bra{b\times\frac{1}{2}}^2=\frac{b^2}{4}$を足し引きする:$x^2+bx+\frac{b^2}{4}-\frac{b^2}{4}+c$
- $x^2+bx+\frac{b^2}{4}$を$(\quad)$でひとまとめにする:$\bra{x^2+bx+\frac{b^2}{4}}-\frac{b^2}{4}+c$
- $(\quad)$の部分に2乗の因数分解公式を用いる:$\bra{x+\frac{b}{2}}-\frac{b^2}{4}+c$
一般的に書くと難しく感じるかもしれませんが,以下で具体的にやってみましょう.実際にやってみれば,それほど難しいものではないことが分かって頂けると思います
例1
2次式$x^2+2x$を平方完成せよ.
$x^2+2x$の1次の係数$2$の$\frac{1}{2}$倍の$2$乗は$\bra{2\times\frac{1}{2}}^2=1$なので,この$1$を足し引きして
とします.このとき$x^2+2x+1$に2乗の因数分解公式が使えて
となります.
例2
2次式$x^2+6x+1$を平方完成せよ.
$x^2+6x+1$の1次の係数$6$の$\frac{1}{2}$倍の$2$乗は$\bra{6\times\frac{1}{2}}^2=9$なので,この$9$を足し引きして
とします.このとき$x^2+6x+9$に2乗の因数分解公式が使えて
となります.
例3
2次式$3x^2-6x+1$を平方完成せよ.
2次の係数が$3$なので,一旦2次の係数$3$で1次と2次をくくると平方完成ができます.
$3x^2-6x+1$の2次の係数$3$で1次と2次をくくって
です.$(\quad)$の中の1次の係数$-2$の$\frac{1}{2}$倍の$2$乗は$\bra{-2\times\frac{1}{2}}^2=1$なので,この$1$を$(\quad)$の中で足し引きして
とします.このとき$x^2-2x+1$に2乗の因数分解公式が使えて
となります.
例4
2次式$2x^2-2x+1$を平方完成せよ.
この問題も2次の係数が$2$なので,一旦この$2$で1次と2次をくくります.
$2x^2-2x+1$の2次の係数$2$で1次と2次をくくって
です.$(\quad)$の中の1次の係数$-1$の$\frac{1}{2}$倍の$2$乗は$\bra{-1\times\frac{1}{2}}^2=\frac{1}{4}$なので,この$\frac{1}{4}$を$(\quad)$の中で足し引きして
とします.このとき$x^2-x+\frac{1}{4}$に2乗の因数分解公式が使えて
となります.
分数が出てきてもやることは同じですね.
2次関数のグラフと最大値・最小値
平方完成を用いると,2次関数$y=ax^2+bx+c$ ($a\neq0$)の最大値または最小値を求められます.
2次関数のグラフ(放物線)
2次関数のグラフについては次を当たり前にしておきましょう.
2次関数$y=a(x-p)^2+q$の$xy$平面上のグラフは,$y=ax^2$のグラフを並行移動して頂点を$(p,q)$とした放物線となる.
これは2次関数$y=ax^2$が$xy$平面上の原点$(0,0)$を頂点とする放物線を描くことから以下のように説明できます.
$X=x-p$, $Y=y-q$とおくと$y=a(x-p)^2+q$は$Y=aX^2$となる.よって,点$(X,Y)$は$xy$平面上の放物線$y=ax^2$の点である.
$x=X+p$, $y=Y+q$なので,$Y=aX^2$のグラフを
- $X$軸方向にちょうど$+p$
- $Y$軸方向にちょうど$+q$
平行移動したグラフが$y=a(x-p)^2+q$のグラフなので,点$(p,q)$を頂点とする放物線である.
[1] $a>0$のとき
[2] $a<0$のとき
この定理から2次関数$y=ax^2+bx+c$のグラフは右辺を平方完成をすれば描くことができますね.
なお,この証明ではグラフの平行移動を考えていますが,グラフの平行移動については以下の記事で詳しく説明しています.
2次式の最大値と最小値
2次関数のグラフを描くことができるということは,2次関数の最小値・最大値もグラフから読み取ることができるということになります.
以下の2次関数のグラフを描き,[ ]の中のものを求めよ.
- $y=x^2-2x+2$ [最小値]
- $y=-\dfrac{1}{2}x^2-x$ [最大値]
(1) 平方完成により
となるので,$y=x^2-2x+2$のグラフは
- 頂点$(1,1)$
- 下に凸
の放物線となる.
よって,$x=1$のときに最小値$y=1$をとる.
(2) 平方完成により
となるので,$y=-\dfrac{1}{2}x^2-x$のグラフは
- 頂点$\bra{-1,\dfrac{1}{2}}$
- 下に凸
の放物線となる.
よって,$x=-1$のときに最大値$y=\dfrac{1}{2}$をとる.
このように,2次関数の最大値・最小値を考える際には,平方完成からグラフを描いて考えると分かりやすいですね.
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