数列$\{a_n\}$に対して,初項から順に
と無限に足していったときの極限を$\sum\limits_{k=1}^{\infty}a_k$と表し,これを無限級数というのでした:
さて,数列$\{a_n\}$が等比数列のとき,$\{a_n\}$の無限級数$\sum\limits_{k=1}^{\infty}a_k$を無限等比級数といいます.
[無限等比級数]は無限級数の中でも
- 収束,発散が簡単に判別でき,
- 収束する場合は簡単に計算ができる
という非常に性質の分かりやすい無限級数です.
一連の記事はこちら
【極限の基本1|lim(リミット)の意味は?極限の考え方】
【極限の基本2|「関数の極限」と「数列の極限」の2つの違い】
【無限級数1|[無限級数]の考え方を具体例から理解する】
【無限級数2|無限級数の発散条件と収束しない3つの例】
【無限級数3|無限等比級数の収束・発散は初項と公比に注目!】←今の記事
目次
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無限等比級数とは
無限等比級数を導入しましょう.
無限等比級数の例
冒頭でも簡単に書きましたが,[無限等比級数]は以下のように定義されます.
数列$\{a_n\}$が等比数列のとき,$\{a_n\}$の無限級数$\dsum_{k=1}^{\infty}a_k$を無限等比級数という.
なお,等比数列について詳しくは,以下の記事を参照してください.
等比数列の記事はこちら
【数列の基本1|数列の基礎は[等差数列]と[等比数列]から!】
【数列の基本2|[等差数列の和の公式]と[等比数列の和の公式]】
【漸化式の基本2|漸化式の基本の[等差数列]と[等比数列]】
たとえば
- $\dsum_{k=1}^{\infty}2^{k-1}$ $\bra{=1+2+4+8+\dots+2^{n-1}+\dots}$
- $\dsum_{k=1}^{\infty}\dfrac{1}{2^k}$ $\bra{=\dfrac{1}{2}+\dfrac{1}{4}+\dfrac{1}{8}+\dots+\dfrac{1}{2^k}+\dots}$
- $\dsum_{k=1}^{\infty}\bra{-\dfrac{1}{3}}^k$ $\bra{=-\dfrac{1}{3}+\dfrac{1}{9}-\dfrac{1}{27}+\dots+\bra{-\dfrac{1}{3}}^k+\dots}$
はいずれも無限等比級数です.
一般に,無限等比級数は
の形で表すことができますね.
なぜ無限等比級数が大事なのか
数列$\{a_n\}$がよく分からない数列であれば,この無限級数$\sum\limits_{k=1}^{\infty}a_k$もよく分からないことになりそうです.
逆に言えば,数列$\{a_n\}$が性質の良い数列であれば,この無限級数$\sum\limits_{k=1}^{\infty}a_k$も考えやすいものになるでしょう.
一般に,無限級数$\sum\limits_{k=1}^{\infty}a_k$の収束や発散の判定は難しいことが多く,
- $\dsum_{k=1}^{\infty} \dfrac{1}{k^2}$
- $\dsum_{k=1}^{\infty} \dfrac{1}{k}$
といった単純そうに見える無限級数でさえ,収束や発散の判定は面倒です.
これに対して,無限級数の中でも[無限等比級数]は非常に分かりやすく,
- 収束と発散
- 収束する場合には極限値
が簡単に分かります.これが無限級数の中でも特に[無限等比級数]が大切な理由です.
無限級数の中でも,等比数列の和の極限である[無限等比級数]は収束・発散の判定が簡単で扱いやすい.
無限等比級数の収束・発散条件
それでは,無限等比級数の収束・発散条件をみていきましょう.
以下では,初項$a$,公比$r$の等比数列$\{a_n\}$に対し,無限等比級数$\sum\limits_{k=1}^{\infty}a_k$を考えます.
初項について
最初に確認するのは初項$a$です.
もし$a=0$なら公比$r$が何であっても,$\{a_n\}$の一般項は$a_n=0$なので無限等比級数も
となり,収束することが分かりますね.
公比について
$a\neq0$のときには,次に公比$r$を確認します.
無限級数$\sum\limits_{k=1}^{\infty}a_k$はそもそも
で定義されていたので,部分和$\sum\limits_{k=1}^{n}a_k$を計算し,$n\to\infty$での極限を考えればよいですね.
$\sum\limits_{k=1}^{n}a_k$は等比数列$\{a_n\}$の初項から第$n$項までの和なので,
- $r=1$
- $r\neq1$
の場合分けが必要ですね.
【数列の基本2|[等差数列の和の公式]と[等比数列の和の公式]】
等比数列の和は公比が1の場合と,公比が1でない場合で和の形が変わります.等比数列の和は当たり前に求めたいところです.
$r=1$の場合
$r=1$の場合には$\sum\limits_{k=1}^{n}a_k=an$なので,$\sum\limits_{k=1}^{\infty}a_k$は発散しますね.より詳しく書けば,
となります.
確かに$r=1$なら一般項は$a_n=a$と一定なので,$a>0$なら和は$\infty$に発散し,$a<0$なら和は$-\infty$に発散するのは当たり前ですね.
$r\neq1$の場合
$r\neq1$の場合には$S_n=\dfrac{a(1-r^{n})}{1-r}$で,この右辺の中にある$n$は分子の$r^n$だけです.$r^n$の$n\to\infty$での極限は
- $-1<r<1$のとき,$\lim\limits_{n\to\infty}r^{n}=0$であり,
- $r\leqq-1$のとき,$r^{n}$は振動し,
- $1<r$のとき,$\lim\limits_{n\to\infty}r^{n}=\infty$
なので,無限等比級数$\sum\limits_{k=1}^{\infty}a_k$について
- $-1<r<1$のとき,$\sum\limits_{k=1}^{\infty}a_k=\dfrac{a}{1-r}$であり,
- $r\leqq-1$のとき,$\sum\limits_{k=1}^{n}a_k$は振動し,
- $1<r$のとき,$\sum\limits_{k=1}^{\infty}a_k=\begin{cases}\infty&(a>0)\\-\infty&(a<0)\end{cases}$
と分かります.
以上をまとめると以下のようになりますね.
[無限等比級数の収束・発散条件] 初項$a$,公比$r$の数列$\{a_n\}$に対して,
- $a=0$
- $-1<r<1$
のとき,無限等比級数$\dsum_{k=1}^{\infty}a_n$は収束し
となる.
また,この場合以外の$a$, $r$では無限等比級数$\dsum_{k=1}^{\infty}a_k$は以下のように発散する.
- $r\leqq-1$のとき,$\dsum_{k=1}^{n}a_k$は振動
- $1<r$のとき,$\dsum_{k=1}^{\infty}a_k=\begin{cases}\infty&(a>0)\\-\infty&(a<0)\end{cases}$
「$a=0$のときの極限は0ではないのか?」と疑問に思う人もいるかもしれませんが,これは心配ありません.
というのは,$a=0$の場合には$\dfrac{a}{1-r}=0$となるので,$a=0$の場合にも確かに極限は0となっているので,極限が$\dfrac{a}{1-r}$であるとして問題ありませんね.
なお,数列が収束しない場合には全て発散というので,「振動」も発散の1つですから注意してください.
[無限等比級数]は初項$a$を最初に確認し,$a=0$であれば収束する.$a\neq0$であれば次に公比$r$を確認し,$-1<r<1$であれば収束する.
一連の記事はこちら
【極限の基本1|lim(リミット)の意味は?極限の考え方】
【極限の基本2|「関数の極限」と「数列の極限」の2つの違い】
【無限級数1|[無限級数]の考え方を具体例から理解する】
【無限級数2|無限級数の発散条件と収束しない3つの例】
【無限級数3|無限等比級数の収束・発散は初項と公比に注目!】←今の記事
$1=0.999\dots$は本当?
$1$と無限小数$0.999\dots$が等しい,と言われると信じられますか?
小学校で学んだ無限小数ですが,実は無限小数をきちんと理解できるようになるのは,この一連の記事で説明してきた無限級数を学んでからなのです.
以下の記事では,$1=0.999\dots$がどうして成り立つのかを説明しています.
【ワンステップ数学4|1と0.999……は本当に等しいのか】
「$1=0.999\dots$が成り立つ」と言われて納得できるでしょうか?そもそも小学校以来何気なく扱ってきた「無限小数」とは一体何でしょうか?実はこれらは無限級数の知識を用いて説明することができます.