三角比4|角度が90°以上の三角比はこう考える!

この一連の最初の記事では,直角三角形の1つの鋭角を$\theta$として三角比$\sin{\theta}$, $\cos{\theta}$, $\tan{\theta}$を考えました.

$\theta$は鋭角のため,$0^\circ<\theta<90^\circ$の場合にしか三角比を考えることができません.

そのため,この定義では$\theta$が例えば$\sin{45^\circ}$や$\cos{60^\circ}$の場合には三角比を考えられますが,$\sin{120^\circ}$や$\cos{135^\circ}$などの場合に三角比を考えることができません.

そこで$0^{\circ}<\theta<90^{\circ}$以外の場合にも$\sin{\theta}$, $\cos{\theta}$, $\tan{\theta}$を考えようというのが,今回の記事の目標です.

「そんなもん定義して何になんの?」と思うかもしれませんが,例えば後の記事で扱う【正弦定理】と【余弦定理】では角度$\theta$が$90^\circ$以上の場合に$\sin{\theta}$, $\cos{\theta}$, $\tan{\theta}$が定義されていると便利なのです.

この記事では,$0^\circ\leqq \theta\leqq 180^\circ$を満たす$\theta$に対して$\sin{\theta}$, $\cos{\theta}$, $\tan{\theta}$を考え,いくつかの基本的な三角比の性質を説明します.

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三角比の基本的な考え方

本題に入る前に,まずは以下の事実を当たり前にしておきましょう.

$\ang{B}=90^\circ$の直角三角形$\tri{ABC}$を考える.このとき,$r=\mrm{AC}$, $\theta=\ang{A}$とすると,

  • $\mrm{AB}=r\cos{\theta}$
  • $\mrm{BC}=r\sin{\theta}$

が成り立つ.

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これは前々回の記事でも説明しました.

とくに斜辺の長さが1,すなわち,$r=1$の場合を考えると,下図のようになります.

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この直角三角形を$xy$平面上に,点Aが原点,線分ABが$x$軸上,点Cの$y$座標が正となるようにおくと,以下のようになりますね.

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よって,点Cについて

  • $x$座標が$\cos{\theta}$
  • $y$座標が$\sin{\theta}$

となることが分かります.

斜辺の長さが1,一つの鋭角が$\theta$の直角三角形を適切に$xy$平面上におけば,1つの頂点の$x$座標が$\cos{\theta}$, $y$座標が$\sin{\theta}$となる.

$0^\circ\leqq\theta\leqq180^{\circ}$の場合の$\sin{\theta}$, $\cos{\theta}$, $\tan{\theta}$

$0^{\circ}\leqq\theta\leqq180^{\circ}$の場合の$\sin{\theta}$, $\cos{\theta}$, $\tan{\theta}$を定義するための考え方の準備が整いました.

$\sin{\theta}$, $\cos{\theta}$, $\tan{\theta}$の定義

角度$\theta$が$0^{\circ}\leqq\theta\leqq180^{\circ}$の場合の三角比の定義は以下の通りです.

原点Oの$xy$平面において,点Pは$y$座標が$0$以上の単位円上の点,点Aを$(1,0)$とする.$\theta=\ang{AOP}$とするとき,

  • Pの$x$座標を$\cos{\theta}$
  • Pの$y$座標を$\sin{\theta}$

と定義する.

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また,$\cos{\theta}\neq0$のとき,$\tan{\theta}=\dfrac{\sin{\theta}}{\cos{\theta}}$と定義する.

以上の考察から,このように定義すれば$0^{\circ}<\theta<90^\circ$の場合の三角比と矛盾することなく,より広い範囲の$\theta$に対しても$\sin{\theta}$, $\cos{\theta}$, $\tan{\theta}$が定義できるわけですね.

また,直角三角形で定義した三角比では$\tan{\theta}$も辺の比で定義して,関係式$\tan{\theta}=\dfrac{\sin{\theta}}{\cos{\theta}}$を導きましたが,ここではこの関係式によって$\tan{\theta}$を定義します.

ここで注意しなければならないのは,数学では「$0$で割る」のはダメだということです.

この$0$で割ってはいけないルールにより,$\tan{\theta}=\dfrac{\sin{\theta}}{\cos{\theta}}$の分母$\cos{\theta}$は$0$であってはいけません.

よって,$\tan{\theta}$が定義できるのは$\cos{\theta}\neq0$となる$\theta\neq90^\circ$の場合になります.

$xy$平面上の$x$軸の正方向と線分OPのなす角が$\theta$ ($0^\circ\leqq\theta\leqq180^\circ$)で,単位円上の$y$座標が0以上の点Pを考え,この点Pの$x$座標を$\cos{\theta}$, $y$座標を$\sin{\theta}$と定義する.また,$\tan{\theta}=\dfrac{\sin{\theta}}{\cos{\theta}}$と定義する.

$\tan$の図形的意味

$\tan{\theta}$を$\cos{\theta}$と$\sin{\theta}$を使って式で定義しましたが,$\tan{\theta}$の図形的な意味を説明しておきます.

$xy$平面において,点Oを原点,点Pを単位円周上の点とすると,$\mrm{O}(0,0)$, $\mrm{P}(\cos{\theta},\sin{\theta})$ ($\theta$は実数)と表せるので,直線OPの傾きは

\begin{align*} \dfrac{\sin\theta-0}{\cos\theta-0} =\dfrac{\sin\theta}{\cos\theta} =\tan\theta \end{align*}

と分かります.すなわち,直線OPは$x$軸方向に$1$増加すると$y$軸方向に$\tan\theta$増加します.

[1] $0^\circ\leqq\theta<90^\circ$のとき

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[2] $90^\circ<\theta\leqq180^\circ$のとき

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よって,$xy$平面上の直線$x=1$と直線OPの交点の$y$座標が$\tan\theta$となります.

$\theta\neq90^\circ$のとき,原点Oと点P$(\cos{\theta},\sin{\theta})$を通る曲線の傾きは$\tan{\theta}$だから,この直線は$x$軸方向に$1$進めば,$y$軸方向に$\tan{\theta}$進む.よって,直線OPと単位円の点$(1,0)$での接線との交点の$y$座標が$\tan{\theta}$である.

三角比の性質

$0^\circ\leqq\theta\leqq180^\circ$の場合の$\theta$に対する$\sin{\theta}$, $\cos{\theta}$, $\tan{\theta}$について,いくつか考察しましょう.

$\tan\theta$と直線の傾き

さきほど「$\tan{\theta}=\dfrac{\sin\theta-0}{\cos\theta-0}$より,$\tan{\theta}$は直線OPの傾きを表す」ということを説明しました.

これを用いると,以下のことが言えます.

$xy$平面上の直線$\ell$を考える.下図のように直線$\ell$と$x$軸の正方向とのなす角が$\theta$のとき,直線$\ell$の傾きは$\tan{\theta}$である.

[1] $0^\circ\leqq\theta<90^\circ$のとき

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[2] $90^\circ<\theta\leqq180^\circ$のとき

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点Pを$(\cos{\theta},\sin{\theta})$とすると,直線OPと直線$\ell$は同位角が等しいので平行です.

[1] $0^\circ\leqq\theta<90^\circ$のとき

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[2] $90^\circ<\theta\leqq180^\circ$のとき

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いま,直線OPの傾きは

\begin{align*} \frac{\sin{\theta}-0}{\cos{\theta}-0}=\frac{\sin{\theta}}{\cos{\theta}}=\tan{\theta} \end{align*}

なので,直線$\ell$の傾きも$\tan{\theta}$となります.

$x$軸正方向とのなす角が$\theta$と分かれば,直線の傾きは$\tan{\theta}$である.

三角比の関係

前々回の記事では,$0^\circ<\theta<90^\circ$の場合の三角比の関係式

  1. $\tan{\theta}=\dfrac{\sin{\theta}}{\cos{\theta}}$
  2. $\cos^{2}{\theta}+\sin^{2}{\theta}=1$
  3. $1+\tan^{2}{\theta}=\dfrac{1}{\cos^{2}{\theta}}$
  4. $1+\dfrac{1}{\tan^{2}{\theta}}=\dfrac{1}{\sin^{2}{\theta}}$

が成り立つことを説明しましたが,これら4つの関係式は$0^\circ\leqq\theta\leqq180^\circ$の場合の$\sin{\theta}$, $\cos{\theta}$, $\tan{\theta}$に対しても成り立ちます.

$0^\circ\leqq\theta\leqq180^\circ$を満たす実数$\theta$について,

  1. $\tan{\theta}=\dfrac{\sin{\theta}}{\cos{\theta}}$
  2. $\cos^{2}{\theta}+\sin^{2}{\theta}=1$
  3. $1+\tan^{2}{\theta}=\dfrac{1}{\cos^{2}{\theta}}$
  4. $1+\dfrac{1}{\tan^{2}{\theta}}=\dfrac{1}{\sin^{2}{\theta}}$

の4つの関係式が成り立つ.

ただし,3つ目の公式は$\cos{\theta}\neq0$のときに,4つ目の公式は$\sin{\theta}\neq0$かつ$\tan{\theta}\neq0$のときに成り立つ.

証明は前々回の記事とほぼ同様です.

$\tan{\theta}$の定義から,$\tan{\theta}=\dfrac{\sin{\theta}}{\cos{\theta}}$が成り立つ.

また,$xy$平面上の点$(\cos{\theta},\sin{\theta})$は単位円$x^2+y^2=1$上の点として定義したから,$\cos^{2}{\theta}+\sin^{2}{\theta}=1$が成り立つ.

$\cos{\theta}\neq0$のとき,$\cos^{2}{\theta}+\sin^{2}{\theta}=1$の両辺を$\cos^{2}{\theta}$で割れば,

\begin{align*} 1+\tan^{2}{\theta}=\dfrac{1}{\cos^{2}{\theta}} \end{align*}

$\sin{\theta}\neq0$かつ$\cos{\theta}\neq0$のとき,$\cos^{2}{\theta}+\sin^{2}{\theta}=1$の両辺を$\sin^{2}{\theta}$で割れば,

\begin{align*} \dfrac{1}{\tan^{2}{\theta}}+1=\dfrac{1}{\sin^{2}{\theta}} \end{align*}

が得られる.

$0^\circ<\theta<90^\circ$の場合の三角比$\sin{\theta}$, $\cos{\theta}$, $\tan{\theta}$はいつでも正なので,割るときに$0$になるかどうかは気にしなくても良かったのですが,$\theta$が$0^\circ\leqq\theta\leqq180^\circ$の場合には$0$になることがあります.

そのため,3つ目と4つ目の関係式が成り立つのは分母が$0$にならないときに限りますね.

$\sin{(180^\circ-\theta)}$, $\cos{(180^\circ-\theta)}$, $\tan{(180^\circ-\theta)}$の変換公式

前回の記事

  • $\sin{(90^\circ-\theta)}=\cos{\theta}$
  • $\cos{(90^\circ-\theta)}=\sin{\theta}$
  • $\tan{(90^\circ-\theta)}=\dfrac{1}{\tan{\theta}}$

が成り立つという$(90^\circ-\theta)$型の変換公式を説明しました.

次の記事では

  • $\sin{(180^\circ-\theta)}=\sin{\theta}$
  • $\cos{(180^\circ-\theta)}=-\cos{\theta}$
  • $\tan{(180^\circ-\theta)}=-\tan{\theta}$

が成り立つという$(180^\circ-\theta)$型の変換公式を説明します.

図を描けば一瞬で求められるので,考え方から理解してください.

最後までありがとうございました!

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