直角三角形を用いた三角比の定義では,$0^\circ<\theta<90^\circ$なる$\theta$に対してしか$\sin{\theta}$, $\cos{\theta}$, $\tan{\theta}$を考えることはできないのでした.
そこで,前回の記事では単位円を使って$0^\circ\leqq\theta\leqq180^\circ$なる$\theta$に対しても,$\sin{\theta}$, $\cos{\theta}$, $\tan{\theta}$の場合に考えられるようになりました.
さて,前々回の記事では$(90^\circ-\theta)$型の変換公式について説明しましたが,この記事では
- $\sin{(180^\circ-\theta)}=\sin{\theta}$
- $\cos{(180^\circ-\theta)}=-\cos{\theta}$
- $\tan{(180^\circ-\theta)}=-\tan{\theta}$
が成り立つという$(180^\circ-\theta)$型の三角比の変換公式を考えます.
また,この$(180^\circ-\theta)$型の三角比の変換公式を使うことで,三角形の面積を$\sin$で表すことができます.
一連の記事はこちら
【三角比1|三角比を考え方から理解する!有名角の三角比も!】
【三角比2|sinθ, cosθ, tanθの超重要な4つの関係式】
【三角比3|実は当たり前!?3つの(90°-θ)型の変換公式】
【三角比4|角度が90°以上の三角比はこう考える!】
【三角比5|(180°-θ)型の変換公式はめっちゃ簡単!】←今の記事
【三角比6|【正弦定理】の使い方を具体例から考えよう】
【三角比7|【余弦定理】は「三平方の定理」の進化版!】
目次
3つの$(180^\circ-\theta)$型の変換公式
冒頭でも書いたように
- $\sin{(180^{\circ}-\theta)}$
- $\cos{(180^{\circ}-\theta)}$
- $\tan{(180^{\circ}-\theta)}$
は,次のように三角比$\sin{\theta}$, $\cos{\theta}$, $\tan{\theta}$で表すことができます.
$0\leqq\theta\leqq180^\circ$なる実数$\theta$について,
- $\sin{(180^{\circ}-\theta)}=\sin{\theta}$
- $\cos{(180^{\circ}-\theta)}=-\cos{\theta}$
- $\tan{(180^{\circ}-\theta)}=-\tan{\theta}$
の3つの関係式が成り立つ.
$xy$平面上の単位円上の点Pは$y$座標が$0$以上であるとします.さらに,原点をO,点$(1,0)$をAとし,$\theta=\ang{AOP}$としましょう.
[1] $0^\circ\leqq\theta\leqq90^\circ$のとき
[2] $90^\circ\leqq\theta\leqq180^\circ$のとき
このとき,$\tan{\theta}=\dfrac{\sin{\theta}}{\cos{\theta}}$でしたね.
また,$xy$平面上の単位円上の点Qは$y$座標が$0$以上であり,$180^\circ-\theta=\ang{AOQ}$としましょう.
$\sin$と$\cos$の公式
このとき,下図のようになります.
[1] $0^\circ\leqq\theta\leqq90^\circ$のとき
[2] $90^\circ\leqq\theta\leqq180^\circ$のとき
$0^\circ\leqq\theta\leqq90^\circ$のときも$90^\circ\leqq\theta\leqq180^\circ$のときも,点Pと点Qは$y$軸対称ですね.
よって,Pの$x$座標とQの$x$座標は正負が逆になっているだけなので,
が成り立ち,Pの$y$座標とQの$y$座標は等しいので,
が成り立ちます.
このように,単位円の$y$座標が0以上の部分で$y$軸対称な2点を考えれば,簡単に$(180^\circ-\theta)$型の変換公式が得られますね.
単位円上の点の$x$座標が$\cos$で,$y$座標が$\sin$であることから,図を描くことにより簡単に$(180^\circ-\theta)$型の変換公式が得られる.
$\tan$の公式
$\tan$の定義$\tan{\theta}=\dfrac{\sin{\theta}}{\cos{\theta}}$と,上で確かめた$\sin$, $\cos$の$(180^\circ-\theta)$型の公式より
とすぐに公式が得られますが,図形的にも確かめておきましょう.
[1] $0^\circ\leqq\theta<90^\circ$のとき
[2] $90^\circ<\theta\leqq180^\circ$のとき
$0^\circ\leqq\theta<90^\circ$のときも$90^\circ<\theta\leqq180^\circ$のときも点Pと点Qは$y$軸対称なので,直線OPと直線$x=1$との交点と直線OQと直線$x=1$との交点は$x$軸対称です.
よって,「直線OPと直線$x=1$との交点の$y$座標」と「直線OQと直線$x=1$との交点の$y$座標」は正負が逆になっているだけなので,
が成り立ちますね.
$\sin{(180^\circ-\theta)}$, $\cos{(180^\circ-\theta)}$, $\tan{(180^\circ-\theta)}$は,単位円で$y$軸対称な2点を考えることでそれぞれ$\sin{\theta}$, $\cos{\theta}$, $\tan{\theta}$となる.
有名角の$\sin{\theta}$, $\cos{\theta}$, $\tan{\theta}$
$0^\circ<\theta<90^\circ$の場合の有名角$\theta=30^\circ,45^\circ,60^\circ$については,以前の記事で以下のように求めましたね.
$\theta$ | $\sin{\theta}$ | $\cos{\theta}$ | $\tan{\theta}$ |
---|---|---|---|
$30^\circ$ | $\dfrac{1}{2}$ | $\dfrac{\sqrt{3}}{2}$ | $\dfrac{1}{\sqrt{3}}$ |
$45^\circ$ | $\dfrac{\sqrt{2}}{2}$ | $\dfrac{\sqrt{2}}{2}$ | $1$ |
$60^\circ$ | $\dfrac{\sqrt{3}}{2}$ | $\dfrac{1}{2}$ | $\sqrt{3}$ |
また,前回の記事で説明した$\sin{\theta}$, $\cos{\theta}$, $\tan{\theta}$の定義から$\theta=0^\circ,90^\circ$の場合は下表のようになります.
$\theta$ | $\sin{\theta}$ | $\cos{\theta}$ | $\tan{\theta}$ |
---|---|---|---|
$0^\circ$ | $0$ | $1$ | $0$ |
$90^\circ$ | $1$ | $0$ | 定義されない |
$90^\circ<\theta\leqq180^\circ$の場合は,この記事で考えた公式から$0^\circ<\theta<90^\circ$の場合をもとにして考えることができます.
以上をまとめると,下表のようになりますね.
$\theta$ | $\sin{\theta}$ | $\cos{\theta}$ | $\tan{\theta}$ |
---|---|---|---|
$0^\circ$ | $0$ | $1$ | $0$ |
$30^\circ$ | $\dfrac{1}{2}$ | $\dfrac{\sqrt{3}}{2}$ | $\dfrac{1}{\sqrt{3}}$ |
$45^\circ$ | $\dfrac{\sqrt{2}}{2}$ | $\dfrac{\sqrt{2}}{2}$ | $1$ |
$60^\circ$ | $\dfrac{\sqrt{3}}{2}$ | $\dfrac{1}{2}$ | $\sqrt{3}$ |
$90^\circ$ | $1$ | $0$ | 定義されない |
$120^\circ$ | $\dfrac{\sqrt{3}}{2}$ | $-\dfrac{1}{2}$ | $-\sqrt{3}$ |
$135^\circ$ | $\dfrac{\sqrt{2}}{2}$ | $-\dfrac{\sqrt{2}}{2}$ | $-1$ |
$150^\circ$ | $\dfrac{1}{2}$ | $-\dfrac{\sqrt{3}}{2}$ | $\dfrac{1}{\sqrt{3}}$ |
$180^\circ$ | $0$ | $-1$ | $0$ |
$\theta=90^\circ$に関して対称に考えれば,有名角$90^\circ$以上の有名角の値も分かる.また,$\cos{\theta}$, $\tan{\theta}$は$\theta=90^\circ$を境界として正から負に変化する.
三角形の面積の$\sin$公式
さて,三角形の面積は$\sin$を使って表すことができます.
$\tri{ABC}$について,$\theta=\ang{A}$, $b=\mrm{CA}$, $c=\mrm{AB}$とすると,$\tri{ABC}$の面積は
である.
頂点Cから直線ABに下ろした垂線の足をHとすると,
なので,$\mrm{CH}=b\sin{\theta}$であることを示せばよいですね.
[1] $0^\circ<\theta<90^\circ$のとき
点Hは直線AB上の点Aに関してB側にあるので,下図のようになります.
よって,
が成り立ちます.
[2] $\theta=90^\circ$のとき
$\mrm{A}=\mrm{H}$となるので,下図のようになります.
よって,
が成り立ちます.
[3] $0^\circ<\theta<90^\circ$のとき
点Hは直線AB上の点Aに関してB側と反対側にあるので,下図のようになります.
よって,$(180^\circ-\theta)$型の変換公式より
が成り立ちます.
三角形の面積は「2辺の長さ」と「その間の角の大きさ」が分かっていれば,求めることができる.
次の記事では,三角形の重要定理である【正弦定理】を説明します.