図形と方程式の分野では,線分の
- 内分点
- 外分点
を考えました.
ベクトルでも,内分点,外分点に関するベクトルが登場し,図形においてこのベクトルはとても活躍します.
公式の考え方は図形と方程式の分野で学んだ[内分点の公式],[外分点の公式]とほとんど変わらず,そのため公式の形もほとんど同じです.
ただし,ベクトルにおいてはここで[位置ベクトル]という概念が登場します.
この記事では
- 位置ベクトルの考え方
- 内分点・外分点の位置ベクトル
- 三角形の重心の位置ベクトル
について説明します.
「ベクトル」の一連の記事
位置ベクトル
$xy$平面上の原点$(0,0)$をOとし,$xy$平面上の点$\mrm{X}(a,b)$を考えると,原点Oから点Xへ向かうベクトルは$\ve{x}=\pmat{a\\b}$となります.
つまり,$xy$平面上の点Xを指定すれば,原点Oから点Xへ向かうベクトルを考えることができます.
しかし,ベクトルは$xy$平面のような座標上で考えるとは限らず,そのため「原点」がそもそも存在しないこともあります.
そのようなときには,「原点に相当する点O」を決めて,点Oを始点とするベクトルを考えると便利なことがよくあり,このベクトルを位置ベクトルといいます.
点Oと点Xを考える.このとき,$\ve{x}=\Ve{OX}$で定まるベクトルを「点Oに関する点Xの位置ベクトル」という.ただし,点Oをとくに定めないときは,単に「点Xの位置ベクトル」という.
また,点Xの位置ベクトルが$\ve{x}$のとき,$\mrm{X}(\ve{x})$と表す.
$\mrm{X}(\ve{x})$と表すのは,座標を$\mrm{X}(a,b)$と表すのと同じ感覚です.
この位置ベクトルは,座標が入っていないような図形において活躍します.
内分・外分とベクトル
図形と方程式の[内分点の公式],[外分点の公式]を説明したのち,それぞれに対応するベクトルの公式を説明します.
内分点と外分点
$xy$平面上の内分点と外分点は以下のように計算できるのでした.
$xy$平面上の2点$\mrm{A}(a_1,a_2)$, $\mrm{B}(b_1,b_2)$に対し,線分ABを$m:n$に内分する点をP,$m:n$に外分する点をQとすると,それぞれの座標は
となる.
【図形と方程式1|座標の超基本「内分点」と「外分点」の計算】
図形と方程式においては,内分と外分は基本的で当たり前のように出てきます.この記事では,内分点と外分点の考え方から公式まで説明しています.
内分点・外分点の位置ベクトル
座標が入っていない場合でも,位置ベクトルを用いることで内分・外分の位置を表すことができます.
平面上の2点$\mrm{A}(\ve{a})$, $\mrm{B}(\ve{b})$に対して,線分ABを$m:n$に内分する点を$\mrm{P}(\ve{p})$,$m:n$に外分する点を$\mrm{Q}(\ve{q})$とすると,
となる.
この公式は位置ベクトルの始点がどこであっても成り立ちます.
$xy$平面上に
- 位置ベクトルの始点Oは原点$(0,0)$
- Aは点$(a_1,a_2)$
- Bは点$(b_1,b_2)$
となるようにおきます.
このとき,$\ve{a}=\pmat{a_1\\a_2}$, $\ve{b}=\pmat{b_1\\b_2}$なので,先ほどみた内分点,外分点の座標の公式と併せて
となります.
このように,証明を考えると$xy$平面上の内分点,外分点の公式と同じ形をしているのが当たり前に見えてきますね?
重心のベクトル
今の内分点の位置ベクトルの公式を使えば,三角形の重心の位置ベクトルは三角形の3頂点の位置ベクトルから求めることができます.
平面上の三角形ABCに対して,頂点A, B, Cの位置ベクトルをそれぞれ$\ve{a}$, $\ve{b}$, $\ve{c}$とする.このとき,三角形ABCの重心Gの位置ベクトル$\ve{g}$は
となる.
直線CGと辺ABの交点をDとすると,三角形の重心の性質から
- $\mrm{AD}=\mrm{DB}$
- $\mrm{CG}:\mrm{GD}=2:1$
が成り立つ.よって,[内分点の位置ベクトル]の公式より
を得る.
このように,「位置ベクトル」は$xy$平面での「座標」のように扱うことができて便利ですね.
次の記事では,使えるととても便利な[ベクトル方程式]を説明します.
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