この記事では次の問題を考えましょう.
平面上の同一直線上にない3点$\mrm{O,A,B}$を考える.このとき,0以上の実数$k,\ell$を$k+\ell=1$を満たして動かすとき
なる点$\mrm{X}$が描く図形を図示せよ.
$k,\ell$は$k+\ell=1$, $k\ge0$, $\ell\ge0$を満たして動く実数なので,例えば$(k,\ell)=(0,1),(\frac{1}{2},\frac{1}{2}),(\frac{1}{3},\frac{2}{3})$のようにいろんな値をとるわけですね.
このように,$k,\ell$を動かしたときに点$\mrm{X}$が描く図形を求めるのがこの問題というわけですね.
この記事では
- 係数の和が1の2つのベクトルの和
- 知っておきたい発展形
を順に解説します.
「ベクトル」の一連の記事
係数の和が1の2つのベクトルの和
冒頭の問題の$\Ve{OX}=k\Ve{OA}+\ell\Ve{OB}$がどのようなベクトルであるかを考えるには,ベクトルの内分の公式がポイントになります.
内分の公式
まずはベクトルの内分の公式を思い出しておきましょう.
この公式の等式は分数を分けると,
となっており,このときの$\Ve{OA}$と$\Ve{OB}$の係数の和は
となっていますね.つまり,$\Ve{OA}$と$\Ve{OB}$の係数の逆比
が線分$\mrm{AB}$を点$\mrm{X}$が内分する比となっているわけですね.
具体例な$(k,\ell)$で考える
ここで冒頭の問題を考えてみましょう.
(再掲)平面上の同一直線上にない3点$\mrm{O,A,B}$を考える.このとき,0以上の実数$k,\ell$を$k+\ell=1$を満たして動かすとき
なる点$\mrm{X}$が描く図形を図示せよ.
具体的に$k,\ell$をとって,点$\mrm{X}$がどのような図形を描くか考えてみましょう.
具体例1
$(k,\ell)=(\frac{1}{2},\frac{1}{2})$のときは
となり,これは内分の公式で$m=n=1$としたものに他なりません.
よって,点$\mrm{X}$は線分$\mrm{AB}$を$1:1$に内分する点(中点)であることが分かります.
具体例2
$(k,\ell)=(\frac{2}{3},\frac{1}{3})$のときは
となり,これは内分の公式で$m=1$, $n=2$としたものに他なりません.
よって,点$\mrm{X}$は線分$\mrm{AB}$を$1:2$に内分する点であることが分かります.
解答
以上のことから,冒頭の問題で点$\mrm{X}$は線分$\mrm{AB}$上を動きそうなことが分かりますね.
(再掲)平面上の同一直線上にない3点$\mrm{O,A,B}$を考える.このとき,0以上の実数$k,\ell$を$k+\ell=1$を満たして動かすとき
なる点$\mrm{X}$が描く図形を図示せよ.
線分$\mrm{AB}$を$\ell:k$に内分する点を$\mrm{P}$とすると,ベクトルの内分の公式より
である.よって,$\mrm{X}=\mrm{P}$だから点$\mrm{X}$が描く図形は線分$\mrm{AB}$(端点を含む)である.
よって,点$\mrm{X}$が描く図形は以下の通りである.
$(k,\ell)=(1,0)$のときは点$\mrm{X}$が線分$\mrm{AB}$を$0:1$に内分し,$(k,\ell)=(0,1)$のときは点$\mrm{X}$が線分$\mrm{AB}$を$1:0$に内分すると考えています.
知っておきたい発展形
以上の内容をもとに,よく出題される発展形も紹介しておきます.
$k,\ell$の和が1でないパターン
平面上の同一直線上にない3点$\mrm{O,A,B}$を考える.このとき,0以上の実数$k,\ell$を$k+\ell=2$を満たして動かすとき
なる点$\mrm{X}$が描く図形を図示せよ.
この問題では係数の和が2なので上の考え方が直接は使えませんが,両辺を2で割って$\dfrac{k}{2}+\dfrac{\ell}{2}=1$となることを用いれば,上の考え方が使えるようになります.
0以上の実数$k,\ell$が$k+\ell=2$を満たして動くとき,$\dfrac{k}{2},\dfrac{\ell}{2}$も0以上で$\dfrac{k}{2}+\dfrac{\ell}{2}=1$を満たす.また,
である.よって,$\Ve{OA’}=2\Ve{OA}$, $\Ve{OB’}=2\Ve{OB}$とおけば
が成り立つ.よって,点$\mrm{X}$が描く図形は以下の通りである.
$\Ve{OX}=k\Ve{OA}+\ell\Ve{OB}$の係数の和が1となるように無理矢理変形して考えれば良いわけですね.
$k,\ell$が実数全体を動くパターン
平面上の同一直線上にない3点$\mrm{O,A,B}$を考える.このとき,実数$k,\ell$を$k+\ell=1$を満たして動かすとき
なる点$\mrm{X}$が描く図形を図示せよ.
この問題では係数$k,\ell$が実数全体を動くので,$k,\ell$は負の値にもなりますね.
[パターン1] $k\ge0$かつ$\ell\ge0$のとき,点$\mrm{X}$は線分$\mrm{AB}$を描く(端点を含む).
[パターン2] $\ell<0$のときは$\ell=-\ell’$とおくと$\ell’>0$で,線分$\mrm{AB}$を$\ell’:k$に外分する点を$\mrm{P}$とすると,ベクトルの外分の公式より
である.よって,$\mrm{X}=\mrm{P}$だから,点$\mrm{X}$が描く図形は点$\mrm{A}$を端点とする点$\mrm{B}$の反対側の半直線である.
[パターン3] $k<0$のときは点$\mrm{X}$が描く図形は点$\mrm{B}$を端点とする点$\mrm{A}$の反対側の半直線である.
[パターン1]〜[パターン3]を併せて,点$\mrm{X}$が描く図形は直線$\mrm{AB}$である.
$k<0$または$\ell<0$のとき,点$\mrm{X}$は線分$\mrm{AB}$を外分するので,実数全体を動くとき点$\mrm{X}$は直線$\mrm{AB}$全体を動くわけですね.
コメント