力の基本2|力がつりあっているとどうなる?力のつりあいの例

前回の記事では,高校物理の力学で頻出の基本の6種類の力

  1. 重力
  2. 垂直抗力
  3. 摩擦力
  4. 張力
  5. 弾性力
  6. 浮力

をまとめました.

これらのうち,「垂直抗力」と「張力」にはパッと求められるような公式がなく,

  • 力のつりあい
  • 運動方程式

を用いて求めることが多いです.

これらはいずれも力学の基本中の基本となる考え方なので,確実にフォローしてください.

今回の記事では「力のつりあい」について解説し,次の記事で「運動方程式」について解説します.

力のつりあい

「力のつりあい」は力学において非常に基本的で,「力のつりあい」を知らずしては何もできないと言っても過言ではないでしょう.

さて,力は「大きさ」と「向き」を持つことから,ベクトルとして表すことができるのでした.

「力のつりあい」の前に,「力の合成」を知っておかなければならないので,まずは「力の合成」の説明をします.

力の合成

力がベクトルで表せることから,「力の合成」を「ベクトルの和」として定義できます.

2個の力を表したベクトルを$\ve{a}$, $\ve{b}$とする.このとき,$\ve{a}+\ve{b}$で表される力を考えることができ,この力を$\ve{a}$, $\ve{b}$の合力という.

一般に,$n$個の力を表したベクトルを$\ve{a}_1,\dots,\ve{a}_n$とする.このとき,$\ve{a}_1+\dots+\ve{a}_n$で表される力を考えることができ,この力を$\ve{a}_1,\dots,\ve{a}_n$の合力という.

たとえば,地球上の物体には全て重力がはたらきます.

落下する小球に左から風が吹いている場合には,重力と併せて下図のように右下向きに力が合成されます.

%e5%8a%9b%e3%81%ae%e5%9f%ba%e6%9c%ac8

このように,ベクトルの和を用いて合力を考えることができます.

力のつりあい

さて,「力の合成」の説明が終わったので,「力のつりあい」の説明に移ります.

1つの物体にはたらいている力の合力の大きさが0になるとき,力がつりあっているという.

たとえば,1つの物体を左右から同じ力で押すとき,この物体にはたらいている力はつりあっています.

他に,単に床の上で物体が静止しているのも,重力と床からの垂直抗力がつりあっています.

力のつりあいについては,以下の事実がよく用いられます.

[力のつりあい] 力がつりあっているとき,静止している物体は静止し続け,運動している物体は等速直線運動をする.

逆に,物体が静止し続けたり,等速直線運動をしているとき,物体にかかる力はつりあっている.

静止し続けることは速度0の等速直線運動をしているといえるので,「静止」を「等速直線運動」に含めて

[力のつりあい] 力がつりあっているとき,運動している物体は等速直線運動をする.

逆に,物体が等速直線運動を続けるとき,物体にかかる力はつりあっている.

といえますね.

たとえば,物体を荒い(摩擦力のはたらく)床の上に置き,少し押しても物体が動かないのは,押す力と摩擦力がつりあっているからですね.

他にも,ツルツルの氷の上に物体を滑らせてもほぼ等速直線運動をするのは,物体にはたらく力がほぼつり合っているからですね.

物体にはたらく合力が0であることと,物体が等速直線運動をすることは同じこと(同値)である.

例題

それでは,以下で例題を考えます.

下図のように,床の上に物体を置き,静止させる.滑車はBに固定されており,AとCはなめらかに動く滑車を通して糸でつながっている.

重力加速度を$g[\mrm{m/s^2}]$とし,A,B,Cの質量をそれぞれ$m[\mrm{kg}]$, $m'[\mrm{kg}]$, $M[\mrm{kg}]$とする.

このとき,A, B, Cおよび床にはたらいている全ての力に関して,「力の名前(張力など)」と「力の大きさ」を明示して書き込め.

この問題,単純に見えて意外と難しいですよ.コツとしては

  1. まず重力などの必ずはたらく力を考える.
  2. 物体と物体が接しているところに,垂直抗力,摩擦力がはたらかないか疑う.

です.

解答

それでは解答です.ただし,単位は全て$[\mrm{N}]$です.(物体がくっついていると矢印が書きにくいので,離して描きました)

picture_2

次に,解答の流れです.

  1. A,B,Cにそれぞれ下向きに大きさ$mg$, $m’g$, $Mg$の重力がはたらく.
  2. Cにはたらく力は「重力」,「張力」であり,Cは静止しているから,Cにはたらく力はつりあっている.したがって,Cに下向きに大きさ$Mg$の張力がはたらく.
  3. 糸の片方にはたらく張力の大きさと反対側にはたらく張力の大きさは等しいから,滑車に下向きに大きさ$Mg$の張力がはたらく.
  4. 続いて,滑車に左向きに大きさ$Mg$の張力がはたらき,糸の反対側のAに右向きに大きさ$Mg$の張力がはたらく.
  5. Aにはたらく水平方向の力は「摩擦力」,「張力」である.Aは静止しているので,Aに左向きに大きさ$Mg$の摩擦力(張力とのつりあい)がはたらく.
  6. Aにはたらく鉛直方向の力は「重力」,「垂直抗力」である.Aは静止しているので,Aに上向きに大きさ$mg$の垂直抗力(重力とのつりあい)がはたらく.
  7. 「垂直抗力」,「摩擦力」で2物体にはたらく力の大きさは等しいから,BにAから鉛直上向きに大きさ$mg$の垂直抗力右向きに大きさ$Mg$の摩擦力がはたらく.
  8. Bと滑車にはたらく鉛直方向の力は「重力」,「張力」,「Aからの垂直抗力」,「床からの垂直抗力」である.Bは静止しているので,Bに床から鉛直上向きに大きさ$mg+m’g+Mg$の垂直抗力を受ける.
  9. Bにと滑車はたらく鉛直方向の力は「張力」,「Aからの摩擦力」,「床からの摩擦力」である.Bは静止しており,張力とAからの摩擦力で既につりあっているので,床から摩擦力ははたらかない.
  10. 「垂直抗力」で2物体にはたらく力の大きさは等しいから,床はBから鉛直下向きに大きさ$mg+m’g+Mg$の垂直抗力を受ける.

図を見てみると,意外と多くの力がはたらいていることが分かりますね.

なお,糸の張力に関しては,以下の記事を参照してください.

ポイント

滑車にはたらいている力を見落とす間違いが多いです.

滑車はBに固定されているので,Bにそのまま力が伝わります.

なお,摩擦力に静止摩擦係数や動摩擦係数は必要ありません.静止摩擦係数は「動くギリギリ」にのみ使え,動摩擦係数は動いている場合にのみ使えるものです.

この例題ではそういった条件はないので,単に他の力とつりあうように求めることになります.

例えば,BからAにはたらく摩擦力は,Aがつり合うようにはたらくので,大きさ$Mg$の摩擦力が張力と反対向きにはたらきます.

また,「AとBの間にはたらく摩擦力」と「滑車にはたらく張力」がつりあっているので,Bと床の間にはたらく摩擦力はありません.

このように,摩擦力は物体が動かないように他の力と相殺するようにはたらくので,既に他で釣り合っていれば摩擦力は一切はたらきません.

垂直抗力も全く同じで,他の力と相殺するようにはたらきます.

上でもコツとして書きましたが,物体と物体が接していると力がはたらくことが多いことに注意すると,見落としが減るはずです.

物理は力学を理解することが第一歩です.そして,力学を理解するには力がどのように働いているかを理解することが重要です.

力がどのようにはたらくか,確実に矢印で描けるようにして下さい.

最後までありがとうございました!

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コメント

  1. 佐藤 春美 より:

    今、筋肉の力学を勉強しています。もし、腕が一本の重量のない棒だと考えて、肩関節を支点に手で重りMを握って持ち上げます。

    腕に力を入れず、腕が床面に垂直に垂らした状態を0度として、床面と水平な状態を90度とします。

    90度の状態で腕を静止させた場合、滑車の張力の計算では滑車の両端の力は同じだから、筋肉はMgの張力を作ればつりあいますよね。

    そうしたら、腕の角度が45度の場合の張力はどうなるのでしょうか?
    やはり、Mgの力で良いのですか?

    実は、このように重りを持ちあげると、運動で傷めた前腕の筋肉が痛みます。
    90度の状態より、45度の方が痛いので、どういう張力がかかっているのかを調べています。

    筋肉は、理論上の糸と違って、伸縮があります。
    また、重りの持ち方で、腕の複数の筋肉にかかる張力が違ってくるので、簡単に説明はできないでしょうが、45度の方が張力が強くなっているということはないですか?

    私の理論の何が足りなくて、何が間違えているのでしょう?

    もし、私のいいたいことが理解することができて、アドバイスしてくだされるのであれば、教えていただきたいと思っております。

    ぶしつけにすみません。

    • 山本 拓人 より:

      ご質問をありがとうございます.
      まず,筋肉の力学は全くの守備範囲外ですので,「意見の提案」という認識で読んでください.

      「肩関節を支点に腕を真横に上げる」という動きは,三角筋が収縮することによって実現します.
      仰るように腕を一本の長さ$L$の棒,持っている重りの質量を$M$とし,棒の上から$\dfrac{1}{6}$の位置で三角筋が力$F$を真横に発揮するとすれば,力は下図のようにはたらきます.

      Rendered by QuickLaTeX.com

      ただし,$g$は重力加速度です.
      ですので,腕を上げるという動き自体は「張力」の話ではなく,「力のモーメント」の話かと思います.

      腕を上げるという動きが三角筋により実現される以上,前腕が痛む原因は重りを持つことが原因となっていると思われます(実際,重りを持たずに腕を上げるだけなら,ほぼ前腕は痛まないと思いますので).
      腕を下げているときと腕を上げているときで重りが手のどこに力がかかっているかが変わります.
      例えば,ダンベルを持つとき,手を下げていれば指の付け根から第2関節の間で支えられますが,手を上げていれば第2関節と第1関節の間で支えることになります.
      このように,支える部位が変わることで前腕のどこの筋肉が必要かが変わるはずで,これが腕の角度で前腕の筋肉への負荷が変わる理由かと思います.

      以上,お答えにはなりませんが,参考になれば幸いです.

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