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式の計算の基本3|平方完成と2次方程式の解の公式

式の計算の基本2|たすきがけ因数分解の公式】の続きです.

前回の記事では2次式の因数分解を説明しましたが,そこで扱ったのはいわゆる「因数分解の公式」が使える2次式であり,因数分解が難しい場合は扱いませんでした.

しかし,ときには因数分解の公式の適用が難しい場合でも因数分解しなければならない場面に遭遇することもあります.

そのような,因数分解が難しい2次方程式を解く際には,「2次方程式の解の公式」を用いることになります.

この記事では,最初に「平方完成」を解説し,平方完成を用いて「2次方程式の解の公式」を導出します.最後に,因数分解の公式が使えないような「2次式の因数分解」について説明します.

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平方完成

いきなりですが,たとえば次の等式が成り立ちます.

x^2+2x=(x+1)^2-1
x^2+4x+1=(x+2)^2-3
3x^2-6x+1=3(x-1)^2-2
2x^2-2x+1=2\left(x-\dfrac{1}{2}\right)^2+\dfrac{1}{2}

これらの等式のように,左辺のax^2+bx+c (a\neq0)の形の2次式を右辺のa(x+p)^2+qの形の式に変形することを「平方完成」といいます.

この「平方完成」は高校数学をやる限り常についてまわるので,必ずできるようにならなければなりません.

まずは平方完成のプロセスを説明し,そのあとに具体例を使って実際に平方完成をしてみます.

平方完成の仕組み

2次式ax^2+bx+c (a\neq0)を平方完成します.なお,a\neq0とあるのは,a=0なら2次の項が消えて1次式になってしまうためです.平方完成はあくまで2次式の変形です.

説明と言っても,ax^2+bx+cを変形していくだけですから,変形に納得できるように確かめてください.注意点などは最後にまとめてします.

ax^2+bx+c
=a\left(x^2+\dfrac{b}{a}x\right)+c\ \ \dots(1)
=a\left(x^2+\dfrac{b}{a}x+\dfrac{b^2}{4a^2}-\dfrac{b^2}{4a^2}\right)+c\ \ \dots(2)
=a\left(x^2+\dfrac{b}{a}x+\dfrac{b^2}{4a^2}\right)-\dfrac{b^2}{4a}+c\ \ \dots(3)
=a\left(x+\dfrac{b}{2a}\right)^2-\dfrac{b^2}{4a}+c\ \ \dots(4)

最後の式がa(x+p)^2+qの形になっていますね.具体的にはp=\dfrac{b}{2a}q=-\dfrac{b^2}{4a}+cです.

  1. 一つ目の等号(1)は2次の項と1次の項をaでくくりました.
  2. 一つ目の等号(2)はカッコの中で無理矢理\dfrac{b^2}{4a^2}を足して引きました.足して引けば,結果として0で変わらないので,等号が成り立っています.
  3. -\dfrac{b^2}{4a^2}をカッコから外に出しました.このとき,カッコの前の係数aがかけられるので,\dfrac{b^2}{4a}と約分されて分母のa^2aになります.
  4. カッコの中身で因数分解の公式x^2+2px+p^2=(x+p)^2を使いました.具体的にはp=\dfrac{b}{2a}です.

2で無理矢理\dfrac{b^2}{4a^2}を作り出しましたが,その理由は4で2乗にするためです.機械的には,この\dfrac{b^2}{4a^2}はカッコの中の1次の係数\dfrac{b}{a}\dfrac{1}{2}倍して2乗すれば出てきます.

といってもあまりピンと来ない人が多いと思います.以下では,実際に平方完成をしてみます.

なお,以下で挙げる例程度なら,暗算でも数秒でできるようになります.逆に,それくらいでないと試験ではなかなか使えません.

とはいえ,まずは確実に平方完成ができるようになることです,

【参考記事:試験時間が足りなくなる理由とその対処法

平方完成の例1

x^2+2xを平方完成すると

x^2+2x
=x^2+2x+1-1
=(x^2+2x+1)-1
=(x+1)^2-1

となります.

一つ目の等号で1を足して引いたのは,x^2+2x+1(x+1)^2と2乗にできるからですね.

機械的には,この1は1次の係数2\dfrac{1}{2}倍して2乗して得られますね:\left(2\times\dfrac{1}{2}\right)^2=1

平方完成の例2

x^2+4x+1を平方完成すると

x^2+4x+1
=(x^2+4x)+1
=(x^2+4x+4-4)+1
=(x^2+4x+4)-4+1
=(x+2)^2-3

となります.

ふたつ目の等号でカッコの中で4を足して引いたのは,x^2+4x+4(x+2)^2と2乗にできるからですね.

機械的には,この4はカッコの1次の係数4\dfrac{1}{2}倍して2乗して得られますね:\left(4\times\dfrac{1}{2}\right)^2=4

平方完成の例3

3x^2-6x+1を平方完成すると

3x^2-6x+1
=3(x^2-2x)+1
=3(x^2-2x+1-1)+1
=3(x^2-2x+1)-3+1
=3(x-1)^2-2

となります.

ふたつ目の等号でカッコの中で1を足して引いたのは…….もういいですね.自分で1が出せるかどうか確認してください.

平方完成の例4

2x^2-2x+1を平方完成すると

2x^2-2x+1
=2(x^2-x)+1
=2\left(x^2-x+\dfrac{1}{4}-\dfrac{1}{4}\right)+1
=2\left(x^2-x+\dfrac{1}{4}\right)-\dfrac{1}{2}+1
=2\left(x-\dfrac{1}{2}\right)^2+\dfrac{1}{2}

となります.「足して引く数」が分数になっても間違えずにできるようになってください.

平方完成は基本的なツールである.確実に使えるようになりたい.

2次方程式の解の公式

いきなりですが,2次方程式ax^2+bx+c=0の解が次のようになることが分かっています.

[2次方程式の解の公式] xの2次方程式のax^2+bx+c=0の解は

x=\dfrac{-b\pm\sqrt{b^2-4ac}}{2a}

である.

これを「2次方程式の解の公式」といいます.

以下では,これを早速導出していきますが,そのためには平方完成を用います.

「2次式の平方完成」の節で平方完成したものを用いて,

ax^2+bx+c
=a\left(x+\dfrac{b}{2a}\right)^2-\dfrac{b^2}{4a}+c
=a\left(x+\dfrac{b}{2a}\right)^2-\dfrac{b^2-4ac}{4a}

が分かります.よって,2次方程式ax^2+bx+c=0

a\left(x+\dfrac{b}{2a}\right)^2=\dfrac{b^2-4ac}{4a}

となります.さらに,両辺aで割って,

\left(x+\dfrac{b}{2a}\right)^2=\dfrac{b^2-4ac}{4a^2}

となります.ここで,左辺のカッコの中身をX=x+\frac{b}{2a}とおくと,

X^2=\dfrac{b^2-4ac}{4a^2}

となりますが,これはXの2次方程式で,

X=\pm\dfrac{\sqrt{b^2-4ac}}{2a}

が得られます.もともと,X=x+\frac{b}{2a}だったので,

x+\dfrac{b}{2a}=\pm\dfrac{\sqrt{b^2-4ac}}{2a}

ですから,\dfrac{b}{2a}を移項して通分すれば,

x=\dfrac{-b\pm\sqrt{b^2-4ac}}{2a}

となり,「2次方程式の解の公式」が得られました.

さて,この「2次方程式の解の公式」は覚えてください!「2次方程式の解の公式」は数Iで習うことになっていますが,それ以降は「2次方程式の解の公式」は知っているものとして話が進んでいきます.

ですから,「2次方程式の解の公式」は覚えて,すらすら呪文のように言えるようにしてください.

なお,今私が試してみたところ4秒足らずで言えました.ここまで速く言える必要はありませんが,少なくとも詰まらずに言えるようにはなってください.

2次方程式の解の公式の例1

2次方程式2x^2+x-3=0は,a=2b=1c=-3なので,解の公式より,

x=\dfrac{-b\pm\sqrt{b^2-4ac}}{2a}
=\dfrac{-1\pm\sqrt{1^2-4\times2\times(-3)}}{2\times2}
=\dfrac{-1\pm\sqrt{25}}{4}
=\dfrac{-1\pm5}{4}

ですから,解は\dfrac{-1+5}{4}つまり1\dfrac{-1-5}{4}つまり-\dfrac{3}{2}です.

なお,解の公式を用いてもいいですが,実は2x^2+x-3

2x^2+x-3=0
\iff(2x+3)(x-1)=0
\iff x=1,-\dfrac{3}{2}

と因数分解から解くこともできます.

この因数分解に気付かなくても,解の公式を使えば2次方程式は解けてしまいます.

2次方程式の解の公式の例2

2次方程式x^2+2x-2=0は,a=1b=2c=-2なので,解の公式より,

x=\dfrac{-b\pm\sqrt{b^2-4ac}}{2a}
=\dfrac{-2\pm\sqrt{2^2-4\times1\times(-2)}}{2\times1}
=\dfrac{-2\pm2\sqrt{3}}{2}
=-1\pm\sqrt{3}

ですから,解は-1+\sqrt{3}-1-\sqrt{3}です.

なお,解の公式を用いてもいいですが,平方完成に慣れていれば,

x^2+2x-2=0
\iff (x+1)^2=3
\iff x+1=\pm\sqrt{3}
\iff x=-1\pm\sqrt{3}

と計算できます.

「2次方程式の解の公式」が平方完成から導ける以上,平方完成から2次方程式が解けるのも当たり前ですね.この程度の2次方程式なら,私は平方完成を使って暗算で解きます.

2次方程式の解の公式の例3

2次方程式2x^2+x-2=0は,a=2b=1c=-2なので,解の公式より,

x=\dfrac{-b\pm\sqrt{b^2-4ac}}{2a}
=\dfrac{-1\pm\sqrt{1^2-4\times2\times(-2)}}{2\times1}
=\dfrac{-1\pm\sqrt{17}}{2}

ですから,解は\dfrac{-1+\sqrt{17}}{2}\dfrac{-1-\sqrt{17}}{2}です.これくらいになると,因数分解による解法も平方完成による解法も面倒ですから解の公式を使うのが最も速いでしょう.

2次方程式の解の公式は万能であるが,因数分解の方が計算ミスは少なくなるので,因数分解できるときには因数分解でできるようにする.

因数分解と解の公式

式の計算の基本1|「展開」と「因数分解」の4つの基本公式】と【式の計算の基本2|たすきがけ因数分解の公式】で2次式の因数分解の公式について書きましたが,因数分解の公式を適用するのに向かない2次式も存在します.

たとえば,上の例2と例3で扱ったx^2+2x-22x^2+x-2がそうです.

しかし,公式は使えなくても,次のことを用いれば因数分解することができます.

[因数分解] 方程式ax^2+bx+c=0が解\alpha\betaをもてば,ax^2+bx+c

(x-\alpha)(x-\beta)

と因数分解できる.

この事実は「因数定理」から直ちに導かれます.

なお,「因数定理」に苦手意識を持つ人は少なくありません.

しかし,「因数定理」の言っていることは難しいことではなく,ちゃんと理解できれば「あーー,当たり前やん」と納得できる内容です.逃げがちな人は是非以下の記事で納得してください.

【参考記事:式の計算の基本6|因数定理と剰余の定理

さて,少し話が逸れましたが,x^2+2x-22x^2+x-2を因数分解します.x^2+2x-2=02x^2+x-2=0の解は上で求めましたから,それと因数定理を用いて

x^2+2x-2
=\left\{x-\left(-1+\sqrt{3}\right)\right\}\left\{x-\left(-1-\sqrt{3}\right)\right\}
=\left(x+1-\sqrt{3}\right)\left(x+1+\sqrt{3}\right)
2x^2+x-2
=\left(x-\dfrac{-1+\sqrt{17}}{2}\right)\left(x-\dfrac{-1-\sqrt{17}}{2}\right)
=\left(x+\dfrac{1-\sqrt{17}}{2}\right)\left(x+\dfrac{1+\sqrt{17}}{2}\right)

と因数分解できます.

このように「解の公式でax^2+bx+c=0の解\alpha\betaを求める」→「因数定理からax^2+bx+c=(x-\alpha)(x-\beta)と因数分解」とすれば,任意の2次式が因数分解できます.

しかし,あくまでこの方法を使うべきなのは「因数分解の公式」で因数分解できない場合です.というのも,この方法は計算ミスを起こしやすいからです.

やはり計算ミスの危険が少ない「因数分解の公式」もしっかり身につけておくべきで,どちらの方法にも対応できるようにしておいて下さい.

因数分解が難しい2次式は「2次方程式の解の公式」から解を求めることで因数分解できます.

式の計算の基本4|3次以上の展開と因数分解の公式】に続きます.

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