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多項式の基本6|因数定理と剰余の定理

多項式の基本5|多項式の割り算】の続きです.

3次以上の多項式の因数分解を考えるとき,【多項式の基本4|3次以上の展開と因数分解の公式】で紹介したような公式が使えれば簡単ですが,公式を適用できないことも多く,その場合には[因数定理]を考えるのが定石です.

[因数定理]は決して難しいものではなく,一度分かってしまえば当たり前とすら思えるものです.

また,似た定理に[剰余の定理]があり,[因数定理]のイメージがつかめていれば,[剰余の定理]も同様に考えることができやはり当たり前に思えることでしょう.

教科書では[剰余の定理][因数定理]の順に説明されているのですが,[因数定理]の方が直観的に理解しやすいので,この記事では[因数定理][剰余の定理]の順に説明します.

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因数定理

まず,確認しておきたいのは次の[事実1]です.

[事実1] 多項式f(x)と定数aに対してf(x)x-aを因数にもつとき,すなわち

f(x)=(x-a)g(x) (g(x)は多項式)

と表せるとき,f(a)=0となる.

この[事実1]は当たり前ですね.

たとえば,f(x)=(x-1)(x^2+x+1)のとき,f(1)=0ですね.これはx-1x=1を代入すると0になることから分かります.

このように,「f(x)=(x-a)g(x)と表せていればf(a)=0となる」というのが[事実1]で書いたことです.

さて,本題の[因数定理]ですが,[因数定理]は上の[事実1]の逆です.つまり,

[因数定理] 多項式f(x)と定数aに対してf(a)=0となるとき,f(x)x-aを因数にもつ.すなわち,f(x)

f(x)=(x-a)g(x) (g(x)は多項式)

と表せる.

直観的には

aを代入して0になるんやから,f(x)x-aを因数にもつはず!つまり,f(x)=(x-a)g(x)と表せるはず!」

ということです.

「多項式f(x)f(x)=(x-a)g(x)と表せるなら,f(a)=0が成り立つ」は当たり前である.一方,この逆の「多項式f(x)f(a)=0を満たすなら,f(x)=(x-a)g(x)と表せる」が[因数定理]である.

因数定理の例1

3次以上の多項式を因数分解するときは,最初に【多項式の基本4|3次以上の展開と因数分解の公式】で説明した公式を考えます.それでも,公式を使って因数分解できない時には,因数定理を使うのが定石です.

x^3-6x^2+11x-6を因数分解します.この3次式にx=1を代入すると,

1^3-6\cdot1^2+11\cdot1-6=1-6+11-6=0

となるので,[因数定理]よりx^3-6x^2+11x-6x-1を因数にもつことが分かります.

x^3+4x^2-5x-1で割ると,

\begin{matrix} &&x^2&-5x&-6&\\ \cline{2-6} x-1&\!\!\!\big)&x^3&-6x^2&11x&-6\\ &&x^3&-x^2&&\\ \cline{2-6} &&&-5x^2&11x&-6\\ &&&-5x^2&5x&\\ \cline{2-6} &&&&6x&-6\\ &&&&6x&-6\\ \cline{2-6} &&&&&0 \end{matrix}

なので,商はx^2-5x-6,余りは0となります(既にx-1を因数にもつことが分かっているので,余りが0なのは当たり前です).すなわち,

x^3-6x^2+11x-6=(x^2-5x-6)(x-1)

が成り立ちます.

【参考記事:多項式の基本5|多項式の割り算

さらに,2次式x^2-5x-6

x^2-5x-6=(x-3)(x-2)

と因数分解できます.したがって,

x^3-6x^2+11x-6=(x-3)(x-2)(x-1)

が得られます.

因数定理の例2

3x^3-7x^2-7x+3を因数分解します.この3次式にx=-1を代入すると,

3\cdot(-1)^3-7\cdot(-1)^2-7\cdot(-1)+3=-3-7+7+3=0

となるので,[因数定理]より3x^3-7x^2-7x+3x+1を因数にもつことが分かります.3x^3-7x^2-7x+3x+1で割ると,

\begin{matrix} &&3x^2&-10x&3&\\ \cline{2-6} x+1&\!\!\!\big)&3x^3&-7x^2&-7x&3\\ &&3x^3&3x^2&&\\ \cline{2-6} &&&-10x^2&-7x&3\\ &&&-10x^2&-10x&\\ \cline{2-6} &&&&3x&3\\ &&&&3x&3\\ \cline{2-6} &&&&&0 \end{matrix}

なので,

3x^3-7x^2-7x+3=(3x^2-10x+3)(x+1)

です.さらに,2次式x^2-5x-6は次のように因数分解できます.

3x^2-10x+3=(3x-1)(x-3)

したがって,

3x^3-7x^2-7x+3=(3x-1)(x-3)(x+1)

が分かります.

3次以上の多項式f(x)を因数分解する際,

  1. 因数分解公式【多項式の基本4|3次以上の展開と因数分解の公式
  2. 因数定理

の順に考える.

因数定理を使う際にはf(a)=0となる数aを具体的に見つけることで,f(x)x-aを因数にもつことが分かる.

因数定理の証明

[因数定理]の証明はとても簡単で,多項式の割り算が分かっていればすぐに導出できます.

[因数定理(再掲)] 多項式f(x)と定数aに対してf(a)=0となるとき,f(x)x-aを因数にもつ.

[証明]

f(x)x-aで割った商をg(x)とし,余りをcとする(1次式で割った余りは定数となるから,cは定数である).このとき,

f(x)=(x-a)g(x)+c

だから,

0=f(a)=(a-a)g(a)+c=c

となって,c=0を得る.よって,f(x)=(x-a)g(x)が成り立つ.すなわち,f(x)x-aを因数にもつ.

[証明終]

剰余の定理

次に,[剰余の定理]の説明に移ります.

[因数定理]は,以下の当たり前な[事実1]の逆なのでした.

[事実1(再掲)] 多項式f(x)と定数aに対してf(x)x-aを因数にもつとき,すなわち

f(x)=(x-a)g(x) (g(x)は多項式)

と表せるとき,f(a)=0となる.

この[事実1]と同様に,以下の[事実2]も当たり前です.

[事実2] 多項式f(x)と定数a,cに対してf(x)x-aで割った余りがcであるとき,すなわち

f(x)=(x-a)g(x)+c (g(x)は多項式)

と表せるとき,f(a)=cとなる.

[事実1]と[事実2]の違いは,余りが0なのかcなのかという点ですね.

そして,[因数定理]が[事実1]の逆であったように,[剰余の定理]は[事実2]の逆です.つまり,

[剰余の定理] 多項式f(x)と定数a, cに対してf(a)=cとなるとき,f(x)x-aで割った余りはcである.すなわち,f(x)

f(x)=(x-a)g(x)+c (g(x)は多項式)

と表せる.

[事実1]と[因数定理]の関係と,[事実2]と[剰余の定理]の関係が同じであることが納得できるでしょうか?

さて,1次式で割ったときの余りを求める問題では「剰余の定理」は非常に強力な武器になります.

これらの例の余りを実際に多項式の割り算をして求めるのとでは天と地ほどのスピードの差が出ます.具体例を使って説明します.

「多項式f(x)f(x)=(x-a)g(x)+cと表せるなら,c=f(a)が成り立つ」は当たり前である.一方,この逆の「多項式f(x)f(a)=cを満たすなら,f(x)=(x-a)g(x)+cと表せる」が[剰余の定理]である.

剰余の定理の例1

x^3-6x^2+4x+3x-5で割った余りは,[剰余の定理]より,

5^3-6\cdot5^2+4\cdot5+3=125-150+20+3=-2

である.

[剰余の定理]を使わなくても,具体的にx^3-6x^2-4x+3x-5で割って

x^3-6x^2+4x+3=(x-5)(x^2-x-1)-2

となることから,余りが-2であることは分かりますが,余りを求めるだけなら代入してすぐに求まる[剰余の定理]がいかに強力か分かりますね.

剰余の定理の例2

3x^4-4x^2-2x+7x-2で割った余りは,[剰余の定理]より,

3\cdot2^4-4\cdot2^2-2\cdot2+7=48-16-4+7=35

である.

多項式を1次式で割ったときの余りを求める際には[剰余の定理]が非常に強力である.

剰余の定理の証明

[剰余の定理][因数定理]を用いれば,簡単に証明できます.

[剰余の定理(再掲)] 多項式f(x)と定数a, cに対してf(a)=cとなるとき,f(x)x-aで割った余りはcである.

[証明]

F(x)=f(x)-f(a)とする.

F(a)=f(a)-f(a)=0だから,[因数定理]よりF(x)x-aを因数にもつ.よって,F(x)=(x-a)g(x)が成り立つ.左辺はf(x)-f(a)だから,f(a)を移項して

f(x)-f(a)=(x-a)g(x)

となるから,f(a)を移項してf(x)=(x-a)g(x)+f(a)を得る.

すなわち,f(x)x-aで割った余りはf(a)である.

[証明終]

要は,[剰余の定理]はf(x)-f(a)に[因数定理]を適用した場合に相当するというわけですね.

因数定理と剰余の定理の関係

この記事では,先に[因数定理]を証明し,[因数定理]を用いて[剰余の定理]を証明しましたが,[剰余の定理]を先に証明し,[剰余の定理]を用いて[因数定理]を証明することもできます.

つまり,[因数定理]と[剰余の定理]は同値なことを言っていることになります.

[剰余の定理(再掲)] 多項式f(x)と定数a, cに対してf(a)=cとなるとき,f(x)x-aで割った余りはcである.

[証明]

f(x)x-aで割った商をg(x)とし,余りをbとする.このとき,

f(x)=(x-a)g(x)+b

だから,

c=f(a)=(a-a)g(a)+b=b

となって,c=f(a)を得る.よって,f(x)=(x-a)g(x)+f(a)が成り立つ.すなわち,f(x)x-aで割った余りはf(a)である.

[証明終]

次に,[剰余の定理]を用いて[因数定理]を証明します.

[因数定理(再掲)] 多項式f(x)と定数aに対してf(a)=0となるとき,f(x)x-aを因数にもつ.

[証明]

[剰余の定理]から,f(x)x-aで割った余りはf(a)なので,f(a)=0のときはf(x)x-aで割った余りは0となる.

すなわち,f(a)=0のときはf(x)x-aを因数にもつ.

[証明終]

要は,[因数定理]は[剰余の定理]の余りが0の場合に相当するというわけですね.

このことが分かっていれば,[剰余の定理][因数定理]が密接に関わっていることが納得できますね.

[剰余の定理]f(x)-f(a)に[因数定理]を適用した場合に相当する.一方,[因数定理][剰余の定理]の余りが0の場合に相当する.

すなわち,[因数定理][剰余の定理]は同じことを述べている.

多項式の基本7|解と係数の関係】に続きます.

 

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