数字パズルの本に出てきそうな問題ですが,次の問題はどのように考えますか?
次の$\fbox{$X$}$に当てはまる数字を答えよ.
- $1,\ 5,\ 9,\ 13,\ 17,\ \fbox{$X$},\ \dots$
- $1,\ 4,\ 9,\ 16,\ 25,\ \fbox{$X$},\ \dots$
- $1,\ 5,\ 17,\ 53,\ 161,\ \fbox{$X$},\ \dots$
実はこれらを数列の問題だと考えると,全て階差数列の考え方で解ける問題になっています.
階差数列の公式が一見複雑な形をしているように見えるため苦手意識をもってしまう人は少なくありませんが,実は階差数列の考え方はとても単純で,階差数列の公式も直感的に理解できます.
この記事では
- 階差数列の考え方と定義
- 階差数列の公式
を順に説明します.
「数列」の一連の記事
階差数列の考え方と定義
階差数列の考え方を説明するために,まずは冒頭の問題を考えてみましょう.
階差数列の考え方
次の$\fbox{$X$}$に当てはまる数字を答えよ.
- $1,\ 5,\ 9,\ 13,\ 17,\ \fbox{$X$},\ \dots$
- $1,\ 4,\ 9,\ 16,\ 25,\ \fbox{$X$},\ \dots$
- $1,\ 5,\ 17,\ 53,\ 161,\ \fbox{$X$},\ \dots$
3つの数列において,次の項に移るとき
- $4,\ 4,\ 4,\ 4,\ \fbox{$X$}-17,\ \dots$
- $3,\ 5,\ 7,\ 9,\ \fbox{$X$}-25,\ \dots$
- $4,\ 12,\ 36,\ 108,\ \fbox{$X$}-161,\ \dots$
と増加しています.これらはそれぞれ
- 4が続く数列
- 初項3,公差2の等差数列
- 初項4,公比3の等比数列
となっています.よって,
- $\fbox{$X$}-17=4$より$\fbox{$X$}=21$
- $\fbox{$X$}-25=11$より$\fbox{$X$}=36$
- $\fbox{$X$}-161=324$より$\fbox{$X$}=485$
と分かります.
どの問題も各項の差を考えることで解くことができますが,これはまさに階差数列の考え方そのものです.
階差数列の定義
さて,いまの考え方をふまえて階差数列の定義をみてみましょう.
数列$\{a_n\}$に対して,$b_n=a_{n+1}-a_{n}$で定義される数列$\{b_n\}$を数列$\{a_n\}$の階差数列という.
数列$\{a_n\}$の階差数列$\{b_n\}$を並べて書けば
というわけですね.
先ほどの問題で言えば,
- $1,\ 5,\ 9,\ 13,\ 17,\ \dots$
- $1,\ 4,\ 9,\ 16,\ 25,\ \dots$
- $1,\ 5,\ 17,\ 53,\ 161,\ \dots$
がもとの数列$\{a_n\}$に相当し,差をとってできた
- $4,\ 4,\ 4,\ 4,\ \dots$
- $3,\ 5,\ 7,\ 9,\ \dots$
- $4,\ 12,\ 36,\ 108,\ \dots$
がそれぞれの階差数列ですね.
大切なことは最初に何らかの数列$\{a_n\}$があって,その数列$\{a_n\}$に対して階差数列$\{b_n\}$が定まるということです.
したがって,階差数列だけが存在することはありえないので,「階差数列」と言われれば「どの数列の階差数列なのか」ということはいつでも気にするようにしてください.
階差数列の公式
上の問題のように,元の数列$\{a_n\}$はよく分からなくても,階差数列$\{b_n\}$をとるとよく知られた数列になることがあります.
このような数列$\{a_n\}$の場合,階差数列$\{b_n\}$を経由することで一般項$a_n$を求めることができます.つまり,
- 階差数列$\{b_n\}$の一般項を求める
- 元の数列$\{a_n\}$の一般項を求める
という手順を踏むことで,一般項$a_n$を求めることができます.
階差数列の公式
数列$\{a_n\}$とその階差数列$\{b_n\}$には,定義から
という関係があるので,$a_n$を以降すると$a_{n+1}=a_n+b_n$となりますね.つまり,
- $a_2$は$a_1$に$b_1$を足したもの
- $a_3$は$a_2$に$b_2$を足したもの
- $a_4$は$a_3$に$b_3$を足したもの
- ……
となっており,$a_{n+1}$は$a_n$に$b_n$を足したものと考えることができます.
$a_{n+1}$から$a_n$を引いたものが$b_n$だったわけですから,$a_n$に$b_n$を加えると$b_{n+1}$になるのは当たり前ですね.
まず$a_2=a_1+b_1$です.
いま得た$a_2=a_1+b_1$の両辺に$b_2$を加えて,$a_3=a_2+b_2$と併せて$a_3=a_1+(b_1+b_2)$となります.
さらに両辺に$b_3$を加えると,$a_4=a_3+b_3$なので,$a_4=a_1+(b_1+b_2+b_3)$です.
これを繰り返すと,$a_n=a_1+(b_1+b_2+\dots+b_{n-1})$となります.
$b_1+\dots+b_{n-1}$の部分は$\sum$を用いて表すと,次のようになりますね.
数列$\{a_n\}$に対して,$\{a_n\}$の階差数列を$\{b_n\}$とすると,$n\ge2$のとき
が成り立つ.
このように,
- $a_1$と$a_2$の差が$b_1$だから,$a_1$に$b_1$を足せば差が埋まり
- $a_2$と$a_3$の差が$b_2$だから,$a_2$に$b_2$を足せば差が埋まり
- $a_3$と$a_4$の差が$b_3$だから,$a_3$に$b_3$を足せば差が埋まり
- ……
と差をどんどん埋めていけば,この[階差数列の公式]は自然な公式であることが分かりますね.
階差数列の公式の別の考え方
本質的にはいまの考え方と同じですが,次のように考えても導出できます.
任意の自然数$k$に対して$b_k=a_{k+1}-a_k$が成り立つので,$k=1,2,\dots,n$を代入したものを辺々足し合わせれば,
となります.左辺はプラスマイナスで大量に打ち消しあって$a_n-a_1$だけが残りますね.
よって,$a_1$を移項すれば,やはり同じ公式
が得られます.
階差数列の公式の注意点
階差数列の公式$a_n=a_1+\sum\limits_{k=1}^{n-1}b_k$は$n\geqq2$の場合にしか意味をなさないことに注意しましょう.
これは$n=1$なら右辺の$\sum\limits_{k=1}^{n-1}$が$\sum\limits_{k=1}^{0}$となってしまい,「$n=1$から$n=0$までの和」と逆行してしまい定義されないためです.
このため,$n=1$では公式は考えないわけですね.
よって,$a_1$は別に考える必要がありますが,$a_1$は最初から与えられていたり簡単に求まることがほとんどなので,多くの場合で心配する必要はありません.
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