【SPONSORED LINK】

複素数4|複素数の指数計算は[ド・モアブルの定理]が鉄板

極形式は「原点からの距離」と「偏角」を用いて複素数を表す方法で,前回の記事では複素数の極形式の定義と極形式の例を考えました.

極形式の良いところは積や商の計算が簡単にできる点で,特に複素数の指数計算については[ド・モアブルの定理]と呼ばれる非常に便利な定理があります.

[ド・モアブルの定理]を用いれば,$(1-i)^5$のような指数計算も慣れれば数秒で求めることができます.

この記事では,極形式の計算に関する基本的な性質を説明し,ド・モアブルの定理を例を用いて説明します.

【SPONSORED LINK】

極形式の計算

まずは,極形式について簡単に復習し,

  • 極形式の積
  • 極形式の逆数
  • 極形式の商

について説明します.

極形式の復習

複素数の極形式について,詳しくは前回の記事を参照してください.

定義は以下のとおりです.

複素数$z$について,絶対値を$r$,偏角を$\theta$とすると,

\begin{align*} z=r(\cos{\theta}+i\sin{\theta}) \end{align*}

と表せる.この複素数の表し方を極形式(polar form)という.

これを図で表せば,下図のようになりますね.

Rendered by QuickLaTeX.com

極形式の積

極形式の積について,以下が成り立ちます.

[極形式の積] $r\geqq0$, $s\geqq0$とし,$\theta$, $\phi$を実数とする.このとき,極形式で表された2つの複素数

\begin{align*} &z=r(\cos{\theta}+i\sin{\theta}), \\&w=s(\cos{\phi}+i\sin{\phi}) \end{align*}

に対して,

\begin{align*} zw=rs\{\cos{(\theta+\phi)}+i\sin{(\theta+\phi)}\} \end{align*}

が成り立つ.

たとえば,2つの複素数を

\begin{align*} &z=\frac{3}{2}\bra{\cos{\frac{\pi}{6}}+i\sin{\frac{\pi}{6}}}, \\&w=2\brb{\cos\bra{\frac{\pi}{4}}+i\sin\bra{\frac{\pi}{4}}} \end{align*}

とすると,積$zw$は

\begin{align*} zw &=\frac{3}{2}\cdot2\brb{\cos{\bra{\frac{\pi}{6}+\frac{\pi}{4}}}+i\sin{\bra{\frac{\pi}{6}+\frac{\pi}{4}}}} \\&=3\bra{\cos{\frac{5\pi}{12}}+i\sin{\frac{5\pi}{12}}}, \end{align*}

となります.

Rendered by QuickLaTeX.com

このように,

  • 絶対値$r$, $s$の複素数をかければ,絶対値$rs$の複素数になり
  • 偏角$\theta$, $\phi$の複素数をかければ,偏角$\theta+\phi$の複素数になる

というわけですね.

極形式の逆数

極形式の逆数について,以下が成り立ちます.

[極形式の逆数] $s\geqq0$とし,$\phi$を実数とする.このとき,極形式で表された複素数

\begin{align*} w=s(\cos{\phi}+i\sin{\phi}) \end{align*}

に対して,

\begin{align*} \frac{1}{w}=\frac{1}{s}\{\cos{(-\phi)}+i\sin{(-\phi)}\} \end{align*}

が成り立つ.なお,全く同じことであるが,

\begin{align*} w^{-1}=s^{-1}\{\cos{(-\phi)}+i\sin{(-\phi)}\} \end{align*}

という表記もよく用いる.

たとえば,複素数を

\begin{align*} z=\frac{3}{2}\bra{\cos{\frac{\pi}{6}}+i\sin{\frac{\pi}{6}}}, \end{align*}

とすると,逆数$z^{-1}$は

\begin{align*} z^{-1}=\frac{2}{3}\bra{\cos\bra{-\frac{\pi}{6}}+i\sin\bra{-\frac{\pi}{6}}}, \end{align*}

となります.

Rendered by QuickLaTeX.com

すなわち,複素数を逆数にすると

  • 絶対値が逆数
  • 偏角が$(-1)$倍

になるというわけですね.

極形式の商

この[複素数の逆数]の公式と[極形式の積]の公式を併せると,以下の[極形式の商]の公式が成り立つことが分かります.

[極形式の商] $r\geqq0$, $s\geqq0$とし,$\theta$, $\phi$を実数とする.このとき,極形式で表された2つの複素数

\begin{align*} &z=r(\cos{\theta}+i\sin{\theta}), \\&w=s(\cos{\phi}+i\sin{\phi}) \end{align*}

に対して,

\begin{align*} \frac{z}{w}=\frac{r}{s}\{\cos{(\theta-\phi)}+i\sin{(\theta-\phi)}\} \end{align*}

が成り立つ.

たとえば,2つの複素数を

\begin{align*} &z=\frac{3}{2}\bra{\cos{\frac{\pi}{6}}+i\sin{\frac{\pi}{6}}}, \\&w=2\brb{\cos\bra{\frac{\pi}{4}}+i\sin\bra{\frac{\pi}{4}}} \end{align*}

とすると,商$\dfrac{z}{w}$は

\begin{align*} \frac{z}{w} &=\frac{3}{2}\cdot\frac{1}{2}\brb{\cos{\bra{\frac{\pi}{4}-\frac{\pi}{6}}}+i\sin{\bra{\frac{\pi}{4}-\frac{\pi}{6}}}} \\&=\frac{3}{4}\brb{\cos\bra{-\frac{\pi}{12}}+i\sin\bra{-\frac{\pi}{12}}} \end{align*}

となります.

Rendered by QuickLaTeX.com

つまり,

  • 絶対値$r$の複素数を,絶対値$s$の複素数で割れば,絶対値$\dfrac{r}{s}$の複素数になり
  • 偏角$\theta$の複素数を,偏角$\phi$の複素数で割れば,偏角$\theta-\phi$の複素数になる

というわけですね.

公式の証明

計算すれば簡単に証明できます.

極形式の積

[極形式の積]の公式は

\begin{align*} zw =&r(\cos{\theta}+i\sin{\theta})\cdot s(\cos{\phi}+i\sin{\phi}) \\=&rs\{(\cos{\theta}\cos{\phi}-\sin{\theta}\sin{\phi})+i(\sin{\theta}\cos{\phi}+\cos{\theta}\sin{\phi})\} \\=&rs\{\cos{(\theta+\phi)}+i\sin{(\theta+\phi)}\} \end{align*}

と成り立つことが分かります.

最後の等号では三角関数の加法定理を使いました.

極形式の逆数

[極形式の逆数]の公式は

\begin{align*} \frac{1}{w} =&\frac{\overline{w}}{w\overline{w}} \\=&\frac{s(\cos{\phi}-i\sin{\phi})}{|w|^2} \\=&\frac{s(\cos{(-\phi)}+i\sin{(-\phi)})}{s^2} \\=&\frac{1}{s}\{\cos{(-\phi)}+i\sin{(-\phi)}\} \end{align*}

となって成り立ちます.なお,$|w|^2=w\overline{w}$であって,$|w|^2\neq w^2$であったことに注意してください.

極形式の商

[極形式の積]の公式と[極形式の逆数]の公式を併せて,[極形式の商]の公式は

\begin{align*} \frac{z}{w} =&z\cdot\frac{1}{w} \\=&r\cdot\frac{1}{s}\{\cos{(\theta+(-\phi))}+i\sin{(\theta+(-\phi))}\} \\=&\frac{r}{s}\{\cos{(\theta-\phi)}+i\sin{(\theta-\phi)}\} \end{align*}

と成り立つことが分かります.

複素数の積は「絶対値で積をとり,偏角で和」をとる.また,複素数の商は「絶対値で商をとり,偏角で差」をとる.

ド・モアブルの定理

さて,今みた複素数の極形式を用いた積と商が分かっていれば,[ド・モアブルの定理]は当たり前です.

ド・モアブルの定理のイメージ

[極形式の積]の公式で,同じ2つの複素数$z=r(\cos{\theta}+i\sin{\theta})$と$z=r(\cos{\theta}+i\sin{\theta})$の積を考えれば,

\begin{align*} z^2 =&r\cdot r(\cos{(\theta+\theta)}+i\sin{(\theta+\theta)}) \\=&r^2(\cos{(2\theta)}+i\sin{(2\theta)}) \end{align*}

が成り立つことが分かります.さらに,$z$と$z^2$の積を考えれば,

\begin{align*} z^3 =&r^2\cdot r(\cos{(2\theta+\theta)}+i\sin{(2\theta+\theta)}) \\=&r^3(\cos{(3\theta)}+i\sin{(3\theta)}) \end{align*}

が成り立つことが分かります.

これを続けていけば,任意の自然数$n$に対して,

\begin{align*} z^n =r^n(\cos{(n\theta)}+i\sin{(n\theta)}) \end{align*}

が成り立ちそうですね.たとえば,$z=\frac{6}{5}(\cos{\frac{\pi}{5}}+i\sin{\frac{\pi}{5}})$の場合には,

Rendered by QuickLaTeX.com

となります.

  • 絶対値が$\times\frac{6}{5}$ずつ
  • 偏角が$+\frac{\pi}{5}$ずつ

変化しているのがみてとれますね.

また,$z^{-1}=r^{-1}(\cos{(-\theta)}+i\sin{(-\theta)})$なので,これを$n$回積をとると,同様に

\begin{align*} z^{-n}=r^{-n}\{\cos{(-n\theta)}+i\sin{(-n\theta)}\} \end{align*}

となりそうですね.

これらをまとめたものが,以下の[ド・モアブルの定理]です.

[ド・モアブルの定理] $r\geqq0$とし,$\theta$を実数とする.このとき,極形式で表された複素数

\begin{align*} z=r(\cos{\theta}+i\sin{\theta}) \end{align*}

と任意の整数$n$に対して,

\begin{align*} z^n=r^n(\cos{(n\theta)}+i\sin{(n\theta)}) \end{align*}

が成り立つ.

[極形式の積]の公式と[極形式の商]の公式は2つの複素数$z$, $w$に関する計算でした.

このとき,$z$と$w$は好きな複素数でしたから,同じ複素数としても良いわけで,同じ複素数を何回もかけると,

  • 絶対値は$z\times z\times\dots\times z=z^n$
  • 偏角は$\theta+\theta+\dots+\theta=n\theta$

となり,同様に$z^{-1}$を何回もかけると,

  • 絶対値は$z^{-1}\times z^{-1}\times\dots\times z^{-1}=z^{-n}$
  • 偏角は$-\theta-\theta-\dots-\theta=-n\theta$

となるわけですね.

このように,[ド・モアブルの定理]は$n$が負の場合であっても成り立つ点が優れています.

ド・モアブルの定理の証明

先ほどのイメージがほとんど証明のようなものですが,「ずっと続けていくと」というのを数学的に厳密に示そうとすると数学的帰納法が必要になります.

[1] $n=1$のとき

\begin{align*} z^n =&z \\=&r(\cos{\theta}+i\sin{\theta}) \\=&r^n(\cos{(n\theta)}+i\sin{(n\theta)}) \end{align*}

が成り立ちます.

[2] $n=k$のとき,$z^n=r^n(\cos{(n\theta)}+i\sin{(n\theta)})$が成り立つとすると,極形式の積の公式より

\begin{align*} z^{k+1} =&zz^k \\=&r(\cos{\theta}+i\sin{\theta})\cdot r^k(\cos{(k\theta)}+i\sin{(k\theta)}) \\=&rr^{k}\{\cos{(\theta+k\theta)}+i\sin{(\theta+k\theta)}\} \\=&r^{k+1}\{\cos{(k+1)\theta}+i\sin{(k+1)\theta)}\} \end{align*}

が成り立ちます.

よって,[1], [2]より,任意の自然数$n$に対して,$z^n=r^n(\cos{(n\theta)}+i\sin{(n\theta)})$が成り立ちます.

さて,次は$n$が0以下の場合を示しましょう.

[3] $n=0$のとき,

\begin{align*} z^n =&1 \\=&r^0(\cos{0\theta}+i\sin{0\theta}) \\=&r^n(\cos{(n\theta)}+i\sin{(n\theta)}) \end{align*}

が成り立ちます.

[4] $n<0$のとき,$n=-m$とすると$m>0$なので,[1], [2]で示した自然数の場合に[ド・モアブルの定理]が成り立つことを用いると,

\begin{align*} z^n =&z^{-m} \\=&(z^{-1})^{m} \\=&\{r^{-1}(\cos{(-\theta)}+i\sin{(-\theta)})\}^{m} \\=&r^{-m}\{\cos{(-m\theta)}+i\sin{(-m\theta)}\} \\=&r^{n}\{\cos{(n\theta)}+i\sin{(n\theta)}\} \end{align*}

が成り立ちます.

以上で,任意の自然数$n$に対して,$z^n=r^n(\cos{(n\theta)}+i\sin{(n\theta)})$が成り立つことが分かりました.

[ド・モアブルの定理]は同じ複素数に[極形式の積]を何度も適用しただけの公式である.

ド・モアブルの定理の例

最後に,[ド・モアブルの定理]を用いて$(1-i)^5$を計算しておきましょう.

[ド・モアブルの定理]を適用するには,底の部分(今の場合には$1-i$)を極形式に変形するのが第一歩です.

\begin{align*} |1-i|=\sqrt{1^2+(-1)^2}=\sqrt{2} \end{align*}

なので,

\begin{align*} 1-i =&\sqrt{2}\bra{\frac{1}{\sqrt{2}}-\frac{1}{\sqrt{2}}i} \\=&\sqrt{2}\bra{\cos\bra{-\frac{\pi}{4}}+i\sin\bra{-\frac{\pi}{4}}} \end{align*}

となります.よって,[ド・モアブルの定理]より

\begin{align*} (1-i)^5 =&\sqrt{2}^5\bra{\cos\bra{-\frac{5\pi}{4}}+i\sin\bra{-\frac{5\pi}{4}}} \\=&4\sqrt{2}\bra{-\frac{1}{\sqrt{2}}+\frac{1}{\sqrt{2}}i} \\=&4(-1+i) \end{align*}

となります.図で表すと,以下のようになります.

Rendered by QuickLaTeX.com

$z^n$に[ド・モアブルの定理]を適用するには,$z$を極形式に変形することが第一歩である.

最後までありがとうございました!

参考になった方は是非シェアをお願いします!

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする

以下の関連記事もいかがですか?

SPONSORED LINK
関連記事

記事一覧はこちらからどうぞ!

記事

一覧へ

Twitterを

フォロー

TouTube

を見る

オススメ

参考書

大学数学の

姉妹ブログ