2次方程式の判別式Dの考え方|実数解の個数と虚数解の存在

多項式
多項式

次の問題はどのようにすれば解けるでしょうか?

次の2次方程式は実数解を何個もつか.

  • $x^2-2x-3=0$
  • $x^2-3x+3=0$

1つ目の2次方程式$x^2-2x-3=0$は

    \begin{align*}x^2-2x-3=0 &\iff(x-3)(x+1)=0 \\&\iff x=3,-1\end{align*}

因数分解から具体的に解けて実数解を2個もつことが分かります.一方,$x^2-3x+3=0$の左辺は平方完成により

    \begin{align*}x^2-3x+3 =\bra{x-\frac{3}{2}}^2+\frac{3}{4} >0\end{align*}

となるので,$x^2-3x+3=0$は実数解を持ち得ないことが分かります.

実は,具体的に解いたり平方完成しなくても,2次方程式の実数解の個数は判別式というものを用いることで求めることができます.

また,2次方程式が実数解をもたない場合には虚数解というものを考えることができます.

この記事では,

  • 2次方程式の判別式
  • 虚数解

について説明します.

2次方程式の判別式

まずは2次方程式の実数解の個数が分かる判別式について説明します.

2次方程式の解の公式と実数解の個数

まずは2次方程式の解の公式を思い出しましょう.

$a$, $b$, $c$を実数とする.2次方程式$ax^2+bx+c=0$の解は

    \begin{align*}x=\frac{-b\pm\sqrt{b^2-4ac}}{2a}\end{align*}

と表せる.

実数解の個数を考える上で重要な部分は,この2次方程式の解の公式の$\pm\sqrt{b^2-4ac}$です.

一般に

  • $A\geqq0$のとき$\sqrt{A}$は0以上の実数
  • $A<0$のとき$\sqrt{A}$は実数でない

となることから,

  1. $b^2-4ac>0$であれば実数解は$\dfrac{-b+\sqrt{b^2-4ac}}{2a}$, $\dfrac{-b-\sqrt{b^2-4ac}}{2a}$の2個
  2. $b^2-4ac=0$であれば実数解は$\dfrac{-b}{2a}$の1個
  3. $b^2-4ac<0$であれば$\sqrt{b^2-4ac}$は実数ではなく実数解は0個

となりますね.

つまり,2次方程式の解の公式の$\sqrt{\quad}$の中身$b^2-4ac$の正負から,実数解の個数が求められるわけですね.

判別式の定義

$a$, $b$, $c$を実数とする.2次方程式$ax^2+bx+c=0\dots(*)$に対して,

    \begin{align*}D=b^2-4ac\end{align*}

を2次方程式$(*)$の判別式(discriminant)という.

歴史的には$D=b^2-4ac$を「2次式$ax^2+bx+c$の判別式」と言っても間違いではないようです.

さて,先ほど説明したことをまとめると次のようになりますね.

$a$, $b$, $c$を実数とする.2次方程式$ax^2+bx+c=0\dots(*)$の判別式$D$に対して,次が成り立つ.

  • $D>0\iff$方程式$(*)$は実数解をちょうど2個もつ
  • $D=0\iff$方程式$(*)$は実数解をちょうど1個もつ
  • $D<0\iff$方程式$(*)$は実数解をもたない

具体例1($x^2-2x+2=0$)

$x$の2次方程式$x^2-2x+2=0$の実数解の個数を求めよ.

$x^2-2x+2=0$の判別式$D$は

    \begin{align*}D=(-2)^2-4\cdot1\cdot2=4-8=-4<0\end{align*}

なので,実数解の個数は0個である.

具体例2($x^2-3x+2=0$)

$x$の2次方程式$x^2-3x+2=0$の実数解の個数を求めよ.

$x^2-3x+2=0$の判別式$D$は

    \begin{align*}D=(-3)^2-4\cdot1\cdot2=9-8=1>0\end{align*}

なので,実数解の個数は2個である.

具体例3($-2x^2-x+1=0$)

$x$の2次方程式$-2x^2-x+1=0$の実数解の個数を求めよ.

$-2x^2-x+1=0$の判別式$D$は

    \begin{align*}D=(-1)^2-4\cdot(-2)\cdot1=1+8=9>0\end{align*}

なので,実数解の個数は2個である.

具体例4(x^2-2\sqrt{3}x+1=0$)

$x$の2次方程式$3x^2-2\sqrt{3}x+1=0$の実数解の個数を求めよ.

$3x^2-2\sqrt{3}x+1=0$の判別式$D$は

    \begin{align*}D=(-2\sqrt{3})^2-4\cdot3\cdot1=12-12=0\end{align*}

なので,実数解の個数は1個です.

2次方程式の虚数解

さて,2次方程式の実数解の個数を判別式で判定できるようになりましたが,実数解を持たない場合に「解を持たない」と言ってしまってよいのでしょうか?

少なくとも,$b^2-4ac<0$の場合にも形式的には

    \begin{align*}x=\frac{-b\pm\sqrt{b^2-4ac}}{2a}\end{align*}

と表せるので,$\sqrt{A}$が$A<0$の場合にもうまくいくように考えたいところです.

虚数の定義

そこで次のような数を定めましょう.

2乗して$-1$になる数を虚数単位といい$i$で表す.

この定義から$i^2=-1$ですね.実数は2乗すると必ず0以上の実数となるので,この虚数単位$i$は実数ではない「何か」ということになります.

さて,$i$を単なる文字のように考えると,たとえば

    \begin{align*}(2i)^2=2^2i^2=4\cdot(-1)=-4\end{align*}

ということになります.

一般に,虚数単位$i$は$i^2=-1$を満たす文字のように扱うことができ,$a+bi$($a$, $b$は実数,$b\neq0$)で表される数を虚数と呼びます.

虚数について詳しくは数学IIIで学ぶことになりますが,以下の記事は数学IIIが不要な人にも参考になる内容なので,参照してみてください.

虚数・虚数単位って一体なに?複素数の考え方と基礎知識
実数は2乗すると0以上の実数となりますが,2乗して−1となる数を「虚数単位」といいます.虚数単位を用いると,実数解を持たない2次方程式の解を表せるなど,多くのメリットがあります.

2次方程式の虚数解

虚数単位を定めると$A<0$の場合の$\sqrt{A}$も虚数単位を用いて表すことができるので,実数解を持たない2次方程式の解を虚数として表すことができます.

具体例1($x^2+1=0$)

$x$の2次方程式$x^2+1=0$を解け.

2次方程式の解の公式より,$x^2+1=0$の解は

    \begin{align*}x=&\frac{-0\pm\sqrt{0^2-4\cdot1\cdot1}}{2\cdot1} \\=&\frac{\pm\sqrt{-4}}{2} =\frac{\pm2i}{2} =\pm i\end{align*}

となります.

$i^2=-1$, $(-i)^2=-1$なので,パッと$x=\pm i$と答えることもできますね.

2次方程式の虚数解の具体例2($x^2+3=0$)

$x$の次の2次方程式$x^2+3=0$を解け.

2次方程式の解の公式より,$x^2+3=0$の解は

    \begin{align*}x=&\frac{-0\pm\sqrt{0^2-4\cdot1\cdot3}}{2\cdot1} \\=&\frac{\pm\sqrt{-12}}{2} =\frac{\pm2\sqrt{3}i}{2} =\pm\sqrt{3}i\end{align*}

となります.

$(\sqrt{3}i)^2=-3$, $(-\sqrt{3}i)^2=-3$なので,パッと$x=\pm\sqrt{3}i$と答えることもできますね.

2次方程式の虚数解の具体例3($x^2+2x+2=0$)

$x$の次の2次方程式$x^2+2x+2=0$を解け.

2次方程式の解の公式より,$x^2+2x+2=0$の解は

    \begin{align*}x=&\frac{-2\pm\sqrt{2^2-4\cdot1\cdot2}}{2\cdot1} \\=&\frac{-2\pm\sqrt{-4}}{2} =\frac{-2\pm2i}{2} =-1\pm i\end{align*}

となります.

平方完成により

    \begin{align*}x^2+2x+2=0 &\iff(x+1)^2=-1 \\&\iff x+1=\pm i \\&\iff x=-1\pm i\end{align*}

と求めても構いません.

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